音楽に耳を傾けているような愛犬を見ると、「ワンコも音楽が好きなのかなぁ」という疑問がわいてきます。犬たちには人間の音楽はどのように聞こえているのでしょうか。好みの音楽はあるのでしょうか。
ワンコは音に敏感
鼓膜振動を音として感じることができる範囲を可聴域といいます。ヒトの可聴域20Hz-20kHz(キロヘルツ)に対し、犬は64Hz-44kHzの可聴域[1]があり、感知できる範囲が異なります。人間には感知できない高音を聞き取ることができる犬は、人間との生活の中で機械が発する音などに不快感を覚えることもあるのです。「音そのもの」への好き嫌いは、犬たちにもありそうですね。
それでは、「音楽」に対する好き嫌いはあるのでしょうか。
好みの音楽は「種」によって異なる
心理学者のスノードン教授(Charles Snowdon)によれば、犬にも音楽の好みはあるとのこと。ただ、人間が考えるように「自分がクラシックが好きなら愛犬もそうであり、ロックを好むなら愛犬もロック好き」というものではないそうです。動物たちの好みは、人間が作った音楽ジャンルに左右されるものではなく、その種が好むピッチやトーン、テンポで構成されているか否かによって決まるそうなのです[2]。
一般的に心地よい音楽とは、自分の聞き取れる可聴域で、理解可能なトーンが使用され、心拍と似たテンポで構成されているものです。動物たちは異なる可聴域や心拍テンポを持つわけですから、好みの音楽が異なっているというのも頷けます。どうやら人間以外の動物は、人間と異なる音楽の好みを持っているようです。スノードン博士らは2009年には猿向けの音楽を作曲しましたが、猿たちが反応を見せた音楽は人間向けより3オクターブ高く、2倍の速さのテンポを持つものでした[3]。猫向け音楽も存在しており(Music for Cats)、これは猫の発声と心拍のテンポに基づいて作曲されています。
犬は人間の音楽ジャンルを区別できる
猫向けがあるなら犬向けだってあるはず!なのですが、「犬向け」「犬好み」と一括りにするのは難しいようです。おチビのチワワと大型犬のマスティフでは、心拍数は声域が異なっているため、好みも違っていそうだというのです。「種」によって異なる音楽の好みは「犬種」によっても違うようだということですね。
それでは、「人間の音楽」への反応はどうでしょう。「(成人男性と似た声域を持つような)大きい犬は小さな犬より人間の音楽に敏感に反応するかもしれない」と前出のスノードン博士のコメントで[2]、犬種によって「人間の音楽」への好みが分かれる可能性を示唆しています。
2002年に行われた調査[4]によれば、犬はニンゲン音楽のジャンル(タイプ)によって異なる振る舞いを見せるようです。人間の会話、クラシック、ヘヴィメタル、ポップの5種類の聴覚刺激を与えられた犬は、それぞれ異なる反応を見せたとのこと(クラシックを聞かされた犬は、落ち着く様子を見せた)。この結果はクラシックが鎮静効果をもたらすことを示すものではありませんが、「犬が音楽ジャンルによって異なった振る舞いを見せることは確か」と研究者は結論づけています。
可聴域、声域、トーン、ピッチで好みの音楽が決まるのなら、噛むとピュッピュッと音の鳴るおもちゃで遊ぶ彼らは、作曲をしたり演奏を楽しんだりしているのかもしれませんね。
キュッ、キュッキュっと音を鳴らしてDJ気分に浸っているのかもと考えれば、少しやかましくても我慢ができそう…でもないですか?
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Hearing range – Wikipedia
[2] What Type of Music Do Pets Like?
[3] Music Written For Monkeys Strikes A Chord : NPR
[4] Wells, D. L., Graham, L., & Hepper, P. G. (2002). The influence of auditory stimulation on the behaviour of dogs housed in a rescue shelter. Animal Welfare, 11(4), 385-393.
Featured image credit Jaromir Chalabala / Shutterstock
【は?】困惑する犬〜音の鳴るオモチャと飼い主のイタズラに困惑顔のゴールデン | the WOOF
犬の記憶が短いからか、はたまた耳の良さが災いするのか。 変な音に慣れることのないワンコ、「とにかく明るいウォルター(Walter)」は、ちょっとお間抜けなところが可愛らしいゴールデン・レトリバーの男のコです。彼の不幸(?)は、いたずら好きの飼い主を持ったことでしょうか。飼い主さんは結構真剣にウォルターにいたずらを仕掛け、可哀想な犬はいつも、いたずらに困惑させられています。 …