病気や事故、災害など、愛犬が危険な状態に陥る恐れは日常生活に潜んでいます。
愛犬が緊急事態に直面したとき、最も大切なのは、落ち着いて、飼い主さんができる対処を確実に行うことです。
パニック状態で動物病院に連絡しても、情報が伝わりにくい場合があります。そして、そんな飼い主さんを見た愛犬が、いつもと違う状況を察知して「噛む」などの困った行動に出ることがあります。
今日は、愛犬が健康上の危機的状態に陥ったときに、覚えておいていただきたい事項をまとめています。ぜひ、ご一読ください。
持病があるコは特に注意:てんかんや心臓病による発作
持病のある犬の場合、急な発作を起こす恐れがあります。
まずは、事前にかかりつけの獣医師に相談しておくことが大切だということを心に留めておいてください。そして発作があったときに、冷静に対処できるよう、心の準備をしておきましょう。
てんかん発作 痙攣など
てんかん発作や心臓に持病を持つコなどは、痙攣(けいれん)を起こすことがあります。
犬がてんかん発作による痙攣を起こすと、その様子に驚き動揺してしまうでしょう。そして声をかけたり、体やあたまをゆすってしまいたい衝動にかられるかもしれませんが、これは絶対にNG。かえって刺激を与えてしまうことになりますので、無理に痙攣を押さえつけようとするのは絶対にやめましょう。
発作が起きた場合は、周りの物を片付けるなどして、さらに怪我をしないように気をつけてあげましょう。そして、発作の様子を観察し、どういう様子であるか、どのくらいで治まるのか(時間)を記録 し、この情報を獣医師に伝えましょう。
心臓病を患っているコの場合
心臓病の持病を持つコは、何か興奮することがあった時に、突然倒れてしまうようなこともあります。心臓病は進行する病気です。普段から落ち着いた行動ができるようにトレーニングしておくこと、そして獣医師と相談したうえで薬の服用などの治療を行うことをおすすめします。
室内でも起こりうる:火傷や骨折などの怪我
普段、何気なく過ごしている生活空間にも、思わぬ危険が潜んでいます。それは室内での火傷や骨折です。
まず、犬にとって危険だと思う物は、普段から片付けるように心がけることが最も大切です。場合によっては、犬の生活空間を限定することや、サークルやケージを使うなど、安全に過ごせるよう配慮してあげましょう。
火傷をしてしまった!
万が一、火傷をしてしまったら、まずは患部を冷やすことが肝要。保冷剤や氷など、すばやく患部を冷やせる物をビニール袋に入れて、火傷した部分に当てながら動物病院に連れて行くようにしましょう。こまめな治療を怠ると感染症の併発や化膿をすることもありますし、軽度であっても範囲が広ければ命にかかわることがあります。大丈夫かな?と思ったら、必ず病院で診察を受けましょうね。
骨折のおそれがある!
骨折もしばしば起こります。小型犬は、ソファーなどのちょっとした段差から飛び降りるだけで骨折してしまうこともあるので要注意です。特に成長期にある若い小型犬は、骨が十分に育っていないため普段から目配りすることを忘れずに。
犬の歩き方がおかしいとき、とくに特定の脚をかばっているようで、なるべく地面につかないようにして歩いているときは、骨折や脱臼などの骨や関節に異常があるおそれがあります。もし、骨折してしまったら、添え木を当てて、動物病院に向かいます。添え木がなくても、ダンボールや雑誌などを代用しながら、まずは骨折した部分を固定してあげるようにしましょう。
好奇心が強いコや食いしん坊なコ:誤飲や誤食
好奇心が強い犬や、食べ物に対して特に執着心が強い犬については、誤飲や誤食にも注意が必要。このときの対処の仕方も覚えておきましょう。
例えば、ちょうどよい大きさのボールを誤って飲んでしまうことがあります。飼い主さんが食べかけだったチョコレートを、大量に食べてしまうこともあります。どちらも犬の体にとっては危険なモノ。これらに限らず、「食べてはイケナイもの」を飲み込んだときは吐かせることが基本です。
何かをのどを詰らせて苦しそうにしている時は窒息してしまうかもしれません。口を開けて手がとどくようであれば引っ張り出します。詰まったものが見えない場合には、小型犬なら逆さにして上下にさせる、大型犬でも胸に手を当てて、前方に押し出す様にして吐き出させるなどを試みましょう。
ただし、「何を飲み込んだか」がわからない状況の場合、吐かせることでかえって危険な状況に陥らせてしまうこともあります。たとえば、とがった棒や骨などを飲み込んだときは、無理に引っ張りだすことで気管や血管を傷つけることにもなりかねません。
まずは何をどのくらい飲みこんでしまったのか、犬がどのような状態にあるのかを獣医師に連絡し、何を飲み込んだかわからないときでも症状が起こるまえの犬の行動を思い出して伝え指示を仰ぐようにしましょう。
そうはいってもやっぱり心配:激しい嘔吐や下痢を繰り返す
犬は、どちらかといえばよく吐く動物です。不調を感じるとすぐに吐くことが多いといいます。
たとえ吐いても1回でおさまって、その後も元気な様子ならば、心配しすぎることもないでしょう。
激しい嘔吐や下痢を繰り返す
一方で、犬が激しく嘔吐や下痢をしている時には、消化器系の病気になっているおそれがあります。食べ過ぎや環境の変化などによるストレスによって下痢や嘔吐を起こしている場合もあります。ほかに気になる症状がないかも確認しておきましょう。
嘔吐や下痢をしている時は、その頻度や色、そしてその後の犬の様子を観察しておくことが大事です。普段と特に変わらない様子であれば、しばらく様子を見ても構いませんが、元気がない場合や明らかにぐったりしている、食欲もないというような時は、注意が必要です。早めに動物病院に連れて行くようにしましょう。
普段の様子を確認すること、万一に備えた日頃の準備が大事!
いつもと変わった緊急事態に気づく為には、普段の愛犬の様子を把握しておくことが重要です。元気なときに愛犬の呼吸数や脈拍、体温などを記録しておくのもよいでしょう。また、日常的に愛犬の体全体を触ることで、体の異変に早く気づくこともあります。体を触ったりブラッシングをする時間は、愛犬とのコミュニケーションのひとつにもなりますので、習慣にしておくことをお勧めします。
また、万が一の時に備えて、愛犬用の救急セットを作っておくことも役立ちます。ピンセットや包帯、消毒液の他、口輪やエリザベスカラー、止血剤なども準備しておくと安心です。また、災害が起きた時の為に、備蓄用のフードや食器、ペットシーツやマナーベルト、おむつなども日頃から準備しておきたいものです。ケージやキャリーバッグもすぐに出せる状態にしておきましょう。日頃から愛犬の健康管理に気をつけること、そして万が一の際のグッズを用意しておくことが、緊急時に冷静に対処することにつながるのです。
普段から心の準備とグッズの準備を。そして、緊急時には落ち着いて、自分の安全を確保しながら犬の様子を観察し、動物病院に連絡しましょう。愛犬から頼られる、素敵な飼い主さんになれるよう、準備を欠かさないようにしたいものです。
[1] 田中茂男 津曲茂久 鎌田寛 亘敏広 上地正実(2011)『犬の医学』時事通信社
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