皆さんこんにちは! WOOFOO天国出張所勤務の読書犬、パグのぐりです。
地上のNさんから「子どもの夏休みがまだ終わらないー!ぐり、帰ってきてよ~!」という叫びが(笑)。世のお母さんたちは、子どもが夏休みになると普段より忙しくなって(3食作ったり、子連れでどこかへ行ったり、大変だよねえ)、疲れるってきいたよ。どうぞ頑張ってください!!
ほっこりする物語
さて、こちらは相変わらず、仲間たちと楽しく暮らしております。そんな中、読むと心がほっこりする本に出合ったので紹介しますね。『どうしてこんなにも犬たちは』(小西秀司著 メディアソフト 2017年)は、副題に「犬からもらったたいせつな10の思い出」とあるように、10匹の犬と彼らを囲む人間たちの物語です。
「マリオとわたしたちの勇敢な日」の真樹男は、14歳の中学生男子。母親と二人暮らしの家には、マリオというゴールデン・レトリバーがいます。真樹男が4歳のころからずっと、そばにいてくれたマリオは今、年をとって獣医さんにお世話になっています。その病気の進行によって、医師から「安楽死」という選択肢も示された母子は悩みに悩む。そんなときにふと真樹男が、ある言葉をつぶやきます。それは昔、父親が家を出て行ったときに母親が発した言葉でした。その言葉を息子が覚えているとは思っていなかった母親はびっくりしますが、同時にこの言葉をきっかけに、マリオの最期にどう寄り添うかを二人は決めるのです。母と子の間に流れる愛情と、それを助ける犬、そして最後には2人と1匹が本当に強く強くつながる物語です。
タイトルが言い得て妙
「ノー・ワンダー」に出て来るのはボストンテリアのボニー。若い夫婦に可愛がられていたボニーは、夫の孝一の車に同乗していたときに思わぬ事故に巻き込まれます。もうだめかと思った孝一の身に起きた不思議な現象。あり得ないと思いながらも、いや、ボニーだったらきっと本当にそうしてくれたのでは、と思う出来事が起こります。
僕がこちら天国で知り合いになったワンさんの中にも、自動車事故で命を落とした子もいます。事故というのは本当に悲しい。でもある子は、「車に乗っている時、僕、実は飼い主さんに抱っこされていて。必死に”飼い主さんを助けたい!“と思っていたら、僕がクッションになったのか、飼い主さんは助かったの」と話してくれました。飼い主が元気に生きてくれること。もちろん一緒に生きていくことが僕たちにとっては一番だけれども、そうでなくても、僕たちの大事な家族がそうやって生き続けてくれることは、喜びでもある。きっとボニーも同じことを考えていたのではないかな、と思いました。
「ひなぎくと夕立」に登場するフレンチ・ブルドッグのひなぎくは、ある噺家さんの飼い犬。もう14歳になるひなぎくは老犬で、寝ている時間が長いの。今日は噺家さんと一緒にタクシーに乗っているんだ。タクシーの運転手と噺家さんの会話は、犬への愛であふれています。そして、雨が降り出したのに車の外に出て噺家さんが叫ぶ言葉。その言葉を読んで僕、涙が出そうになった。これほどまでに、犬のことを思ってくれる人の元で暮らせるひなぎくは幸せだなって。
「犬と月と小鳥のさえずり」に出てくる光太郎は中学1年。近所の河原で出会ったのはジャーマン・シェパードのカナリアと、その飼い主の男性でした。男性には家がなく、カナリアと共に河原で暮らしている。ある日光太郎は、同じ中学校の先輩たちにとりかこまれ…。そこで起きた悲劇。人の醜さとそれに翻弄される犬たちの辛さ。いろいろ考えさせられる物語です。
これ以外にも、6匹の犬たちが登場します。いずれも、「どうしてこんなに犬たちは」と思わせられるような物語ばかりです。そう、本のタイトルが言い得て妙なの。これは著者がつけたのかなあ、それとも編集者かなあ。いずれにせよ、内容を端的に表した素晴らしいタイトルです。
犬への愛がとまらない筆運び
著者の小西さんは、フレンチ・ブルドッグ専門誌「BUHI」の編集長なんだって。鼻ペチャ犬のこと、愛してくれているんだろうな~(うっとり)。本書には鼻ペチャ犬はあまり出てこないけれど、犬への愛があふれています。そして人の描写がまたいいのです。
この本、字も大きくて読みやすいよ。巻頭には、いくつかの言葉が抜き出されて、可愛い犬たちの写真とともに掲載されています。
「犬と、生きたい」。帯に書かれたこの言葉が本書の物語全ての内容を表しています。僕たち犬は、人がこう思ってくれるから、幸せな犬生を送ることができる。いろんな犬の一生の一部分を切りとって描かれた珠玉の10編。どうぞ読んでみてくださいね。
三交社
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Featured image credit pirate_renee / Flickr