肛門をザラザラ面に擦りつける愛犬を見て、「犬も痔になるのだろうか?」と疑問に思ったことはありませんか?
胃腸の解剖学的構造が人間と犬では異なるため、犬が痔になることはないと言われてます。しかし、人間の痔に似た肛門の問題はいくつかあり、人間と同じように不快感に悩まされることはあります。
人間の痔と”犬の痔”
痔とは、肛門部とその周辺部分の疾患の総称で、症状には痛み、出血、腫れ、脱肛、かゆみなどがあります。
人間の痔の原因は、便秘や下痢、排便時のいきみ、座りっぱなしなど。肛門の周辺には、動脈や静脈の細かい血管が集まりや、筋肉や繊維などの結合組織があって、これらがクッションの役割をしていますが、いきんだりすることで肛門周辺に圧力がかかり、切れたりうっ血したりするのです(きれ痔やいぼ痔)。
二足歩行の人間の場合、肛門に繋がる直腸は垂直になっており、体重が腰部や肛門の周辺に集中します。一方、四足歩行の我らがワンコたちは、脊柱も直腸も水平で、負荷も四本の足に分散します。このため、4本足の犬たちは、肛門周辺の筋肉や血管の収縮が人間に比べると起こりにくく、圧が原因となる痔は発生しないというわけです。
しかし犬たちも、肛門の痛みや不快感などの症状に苦しむことがあります。肛門嚢の疾患、直腸脱、腫瘍などは痔とよく似た症状を引き起こします。
痔に似た症状を起こす肛門まわりの問題
・肛門嚢の疾患
犬には肛門の両側に2つの腺があり、腺は黒っぽい腐敗臭のする液体を嚢に分泌します。健康な犬や大型・超大型犬では液体は排便時に搾り出されますが、小型犬や肥満犬などは詰まりなどの問題が生じることがあり、細菌の増殖、感染、炎症の原因となります。
肛門嚢に問題があると、座る時の痛みや不快感から、お尻を擦りつけたまま歩いたり、肛門周辺を舐めたり噛んだり、排便に時間がかかるなどの症状が見られます。
・直腸脱
直腸脱は、肛門および直腸の内部が肛門の開口部から突出した状態です。排便時にいきんだときに起こることもありますし、赤くなった組織の塊が継続して突出している場合もあります。下痢や泌尿器疾患、慢性的な便秘により引き起こされる可能性があります。症状が一時的でも慢性でも、すぐに獣医師に相談しましょう。
・直腸のポリープおよび肛門嚢の腫瘍
ポリープは粘膜を保護する組織の異常な成長であり、体の様々な場所で発生します。直腸および肛門にあると、犬が痔核を患っているように見えます。直腸ポリープでは、血便や下痢があり、出血しやすくなります。肛門嚢の腫瘍では、排便困難などの症状があります。
「もしかして痔!?」と思ったら
肛門周りに血がついていたり、イボや出っ張りを見つけたりの異常があったら、すぐに獣医師に相談しましょう。組織の慢性的な突出は、緊急事態のサインです。
獣医師と相談のうえ、食事の変更を検討しましょう。排便を促すように食物繊維が多めの野菜を追加するのも良いでしょう。乳製品は避けるようにしましょう。便を柔らかくするサプリメントが進められることもあります。
新鮮な水をたくさん飲めるように工夫しましょう。散歩や運動を増やし、血の流れを良くして腸の運動を活発にし、定期的な排便を促しましょう。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Can Dogs Get Hemorrhoids? | petMD
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肛門を擦りつける犬のお世話〜お尻スリスリは心配すべき問題か?それとも笑いごとか? | the WOOF イヌメディア
お座りの姿勢で前進したり、カーペットにお尻を擦り付たりする愛犬。家の中なら良いけれど、外でするのはやめて欲しい、ちょっとお恥ずかしい行動です。 彼らはなぜ、この擦りつけ行動をするのでしょう。心配すべきはどんなときで、どのようなお世話をすべきなのでしょう。 第一に疑うべきは肛門嚢の問題です。可愛い愛犬の肛門付近には、左右2つの小さな袋状の器官(肛門嚢)があり、肛門腺からの分泌物を貯蔵しています。