犬は他の動物のサイズをどのように把握しているのか?

サイエンス・リサーチ
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犬は他の犬のサイズをどのように把握しているのでしょうか。

どうやら犬たちは視覚情報に加え、音の変化などの情報を組み合わせて、相手の大きさを把握しているようなのです。

サセックス大学のTaylor博士らは、これまで霊長類でのみ確認されていた聴覚と視覚によるサイズ評価を、犬においても確認しました。実験の詳細はオンラインジャーナルPLOS ONEに掲載されています(2011年)。

相手の大きさをどう認識するのか?

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image by Aurimas / Flickr

動物にとって相手の大きさに関する情報は、攻撃力や危険度を測るうえでとても重要なものです。しかし、「大きく見える」というような視覚情報だけで相手の本当の大きさをを把握するのは、実は難しいことなのです。たとえば危機的状況にある動物は、逆毛を立てたり伸び上がったりして自分を大きく見せようとするものですし、逆に怯えた時は筋肉が収縮して小さく見えるものだからです。

そこで役に立つのが、音の情報(聴覚情報)です。動物の中には視覚情報だけでなく、聴覚情報をも利用してサイズを推測するものがあります。声を聞いただけの相手のイメージが的外れではないのは、形態的特徴(声道など)と音響的特徴(発声)が密接に結びついているからです。動物についても同じことがいえるようで、動物の音響的特徴がその動物の身体のサイズを推測する良い手がかりになることが、これまでの研究からわかっています。

視覚情報と聴覚情報とを組み合わせて相手の大きさを判断するとされていたのは、霊長類のみでした。この能力が犬にもあるのかを確認したのが、サセックス大学心理学部のTaylor博士とそのチームです。チームは犬の協力を得ていくつかの実験を行い、犬も視覚情報と音響的手がかりを組み合わせて相手のサイズを認識することを示しました。

犬も視覚と聴覚で相手の大きさを把握する

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image by Figure: Subject sitting in the designated testing area, © 2011 Taylor et al.

実験に協力したのはボランティアのペット犬40匹。犬たちは実験室で、スピーカーから流れてくる犬の鳴き声を聞かされました[音響的手がかり]。スピーカーの横には、サイズの異なる2つの剥製の犬が置かれていました[視覚的手がかり]。

犬たちの反応はビデオで記録され、のちに統計的に分析されました。

音響的手掛かり(=スピーカーから流れる鳴き声)は、犬種、年齢、性別の異なる10匹の犬によるもの。そして視覚的手がかりとしての剥製は、一つは60cmのジャーマン・シェパード、もう一つは30cmのジャック・ラッセル・テリアでした。

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image by Experimental set-up © 2011 Taylor et al.

犬と飼い主はリードで繋がっていましたが、飼い主も実験担当者も犬の視界から隠れ、犬に微妙なヒントを与える可能性を減らす工夫がなされていました。

スピーカーから流れる音響的手がかりには、コンピュータにより、サイズの異なる2匹の犬が発した2つの唸り声になるよう調整が加えられました。音響データのフォルマント周波数を調整することで、1匹の犬の唸り声を元に2パターンの音声を作ったのです。フォルマント周波数は声道の形状と関連することがわかっており、これを操作することにより、たとえばチワワの鳴き声をマスティフの声帯から発せられる音に近づけることができるというわけです。

また、録音された音声は、他の変数(性別、品種、年齢)が一定になるよう調整されました。

上記の実験設定の中で研究者らは、音響的手がかりを流した時に、犬がどちらの剥製を見たか、そしてどのくらい長く見たかを記録しました。

結果、犬の多くは、大型犬のものとして調整された唸り声が聞こえたときはジャーマン・シェパードを、小型犬に調整された唸り声が聞こえてきたときはJRTをより多く見ることがわかりました。また、見る長さについても、正しい組み合わせを平均して3.9秒長く見つめていました。どうやら犬は音と見た目の関連性がわかっており、正しく組み合わせることができるようなのです

これらの結果により研究者らは、犬も音に基づくサイズ関連情報を視覚情報と組み合わせることができると結論づけました。犬も相手の姿だけでなく、その吠え声や鳴き声から「デカい奴が来るな」とか「隣のあのコはおチビだな」なんて判断しているのかもしれません。


私たちが「これは小さな犬の鳴き声だ」とか「大型犬が吠えているな」と推測するのと同様に、犬たちも声の情報だけでその大きさを推測することができるようです。研究者らは、犬が音響的手がかりからより多くの情報を得ている可能性があることも示唆していますから、もしかしたら犬たちは、ほえ声から性別や犬種などを判断できちゃうのかもしれません。

犬は私たちが思う以上に、世の中をしっかり”見て”いるんですね。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Taylor, A. M., Reby, D., & McComb, K. (2011). Cross modal perception of body size in domestic dogs (Canis familiaris). PLoS One, 6(2), e17069.
[2] How dogs make sense of size | PHYS.ORG

Featured image creditJ/ Flickr

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