母犬には母性本能があって、自然に幼い子犬を保護し外敵から守るというのはよく聞く話。出産時に母親の役割が重要なのは、人間を含む他の哺乳類と同じです。
それでは父犬はどうでしょう?オス犬に母犬にあるような養育欲求をもち、自然に「父になる」のでしょうか?
犬に”父性本能”はあるのか?
母犬は幼い子どもを保護し、毛づくろいをしたり排泄から促したり、お乳を与えたりします。これらの母性行動は誰から教わる訳でもなく自然にあらわれるため、母性本能(繁殖に関わる行動を引き起こす本能)に基づく行動などと言われることがあります。
オス犬には”父性本能”はあるのでしょうか?残念ながらこれに対する科学的な回答は見つけられませんでした。多くのブリーダーや観察者は、オス犬は未熟な赤ちゃん犬に興味はなく、自分の子どもであるとの関連付けもできないと記述しているところから推察するに、オス犬には生まれたばかりの赤ちゃん犬を養育したいという欲求はないようなのです[2][3]。
しかし、野生のイヌ科動物についてはこの限りではなく、母犬と子犬を守るような行動をしたり、グルーミングや連れ戻し行動をすることもあるそうです。Beaverによれば、飼い犬の中にもこうした”父性行動”をする個体もあるのだそう。一方で、赤ちゃんを攻撃したり殺す個体もいるとのことで、犬によっても様々のようです。
犬は出産に立ち会わせないほうが良い
人間だと立ち会い出産は市民権を得ていますが、犬の出産にはオス犬は引き離しておくのが普通です。
オス犬は出生に立ち会う合理的理由がありません。彼らは、母犬の出産を手伝うことはできませんし、母犬もそれを求めていません。出産に静かに集中したいプレママにとっても、子犬のケアに注力したいママ犬にとっても、オス犬の存在はストレスにしかなりません。またオス犬は、メス犬が遊んでくれないことにストレスを感じることでしょう。
父犬に限らず、犬、猫、またはインコその他全ての動物を、母犬から隔離しましょう。しかし、母犬を助けてあげられる飼い主さんは、近くで静かに見守って、異常が見られたらすぐに獣医師に相談する準備をしておきましょう。
そして父犬になる
出産時や出産直後は全く存在感のないお父さん犬ですが、彼らの存在が子犬育てに必要ない訳ではありません。
移行期に入り、子犬が自力で立ち上がり歩き回るようになると、父犬も子どもに興味をもつようになります。一方で、母犬は自力で動けるようになる子犬に、かつてのような関心を示さなくなります[1]。
父犬と子犬を引き合わせるのは、誕生から1ヶ月経った頃が良いと言われます[4]。子犬が自力で立ち上がり、離乳し始めるころです(完全な離乳は7~8週齢ごろ)。
子犬に引き合わせるときは、父犬が穏やかで子犬を傷つける恐れがないか見守るため、しっかり監督しなければなりません。稀に子犬を攻撃するオス犬もいますが、一般的には子犬とのふれあいを喜び危険から守ろうとする行動がみられます。
父犬は子犬たちに遊びを通じて、社会の厳しさや、犬として生きていく上で学ぶべき規範を教えるロールモデルとなります。彼らは、他の犬と遊ぶ時の加減や、集団でのヒエラルキーについて教えるのです。4週齢〜7週齢になると、子犬は父犬に非常に強い信頼の年を持つようになり、父犬が子犬をしつけるような行動がみられるようになるという報告もあります。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] エーベルハルト トルムラー (2001) 犬の行動学, 中公文庫
[2] Pugnetti, G. (1980). Simon & Schuster’s Guide to Dogs. Simon and Schuster.
[3] Natural Dog Wishes You A Pawsome Father’s Day! | Natural Dog Company
[4] How Long to Separate Father Dog From Mother & Pups? | Cuteness
[5] When to Allow the Male Dog to See His Puppies? | Dog Care – Daily Puppy
Featured image creditGrigorita Ko/ shutterstock