白い犬~同じ白も遺伝子背景はイロイロ

犬のカラダ
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犬の毛色は目で見て分かりやすい、遺伝する特徴のひとつです。しかも、その特徴はわずか10数個の遺伝子によって決定されるといわれています。

似たような毛色でも、実はその毛色を作りだしている遺伝子の働きが異なる場合があるのです。そんな毛色の遺伝背景の違いを知れば、犬を観察する目が変わってくるかもしれません。

全身白毛、もしくは白が優勢な毛色


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白い毛の犬というと、皆さんはどのような犬種を思い浮かべますか?お父さん犬として人気を博した北海道犬、ふわふわのマルチーズやビション・フリーゼ、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、大型犬ではサモエドやグレート・ピレニーズあたりでしょうか。


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完全なる純白とまではいかなくとも、白~クリーム系の毛色を持つ犬も多く存在します。ミニチュア・ダックスフンドやフレンチ・ブルドッグ、ポメラニアン、大型犬ではサルーキーやホワイト・スイス・シェパード・ドッグ、モップのような見た目が特徴的なコモンドールなどがいます。イギリス系のゴールデン・レトリーバーもかなり白っぽいですよね。(ここまでグループ①)


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頭部や体の一部など限られたところにのみ有色の毛を持つ犬種もいます。パピヨンやジャック・ラッセル・テリア、狆、ブルテリア、ボルゾイなどです。(グループ②)

白毛犬の多くはこれら2つのグループのいずれかに属していますが、それぞれの白毛を作りだしている遺伝背景が異なります。

そもそも毛色は2種類のメラニン、ユーメラニン(黒~茶褐色)とフェオメラニン(赤~黄褐色)のそれぞれがどのような割合で作られるかによって決められています。ざっくり白毛とひとくくりにしていますが、よく見てみると、純白からクリームやアイボリーのような毛色までわずかながらも違いがあります。純白の毛は人でいうところの白髪と同じでメラニン色素がまったく沈着していません。一方、クリーム系の毛色はうっすらとフェオメラニンが沈着しています。


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グループ①の犬の白毛は純白~クリーム系になる犬が該当しますが、グループ②の犬の白毛はどれも純白です。


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また、グループ②の犬はたいていの場合、ブラック(ユーメラニン)やはっきりした色調のフォーンやタン(フェオメラニン)といった被毛を体の一部に持ちますが、グループ①には被毛にユーメラニンの沈着が起こることはありません。ですが、サモエドやグレート・ピレニーズなどでは淡いイエローやオレンジの、地毛よりも少し濃い色をしたフェオメラニンのパッチが入ることがあります。

ホワイト・ドーベルマン(アルビノ)

いわゆるアルビノの動物、真っ白な被毛に赤い目をしている動物は完全に色素を欠乏している状態のため、体のどの部分にも色が付きません。このように完全なるアルビノの犬は存在していないとも、仮に生まれたとしてもすぐに死んでしまうか、お腹の中にいる間に死んでしまうとも言われています。


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犬のアルビノとして知られているのは、ホワイト・ドーベルマンです。ホワイト・ドーベルマンは人で難病指定されている眼皮膚白皮症の中のOCA4というタイプにあたると考えられています。ホワイト・ドーベルマンはアルビノといわれてはいますが、完全なる純白の毛色ではなく、わずかに色素沈着のある、ごく薄いクリーム色をしています。しかし全身の色素が薄いために鼻はピンク色(色素の沈着のない肉色)、瞳の色も薄いため羞明(光に対して過剰に眩しさを感じて眼をあけていられない不快感や、痛みを感じる)とよばれる症状がみられます。また、皮膚への色素沈着もないため、有色のドーベルマンと比べて皮膚腫瘍ができやすいことも分かっています。メラニン色素は体を紫外線から守る役割もあるためです。

同じ白毛ではありますが、ホワイト・ドーベルマンはグループ①や②とはまた別の遺伝子が影響を及ぼしていることが明らかにされています。[1]

アルビノに限らず色素が作れないということは、生物が生きていく上で健康によくない影響を及ぼす場合があることが分かっています。実はグループ②の犬たちも色素をつくれないことが原因となり先天的な疾患を抱えることがあるのです。

健康に注意が必要な白毛


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グループ②の犬たちが注意をしなければならないのが聴覚です。白い毛に青い目の猫は耳の聞こえが悪いというのは有名な話ですが、犬は猫ほど割合が高くないものの、グループ②の犬たちにおいても同じく聴覚が正常に発達していないことがあります。全身が、ほぼ真っ白のブルテリアやホワイト・ボクサー、ジャック・ラッセル・テリアなど、有色の毛が少なくなるほど聴覚に問題がでてくる可能性が高まることが報告されています。


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また、もうひとつ注意しなくてはならないのが、ダブルマールやダックスフンドのダブルダップルと呼ばれる毛色です。マールやダップルは片親からその遺伝子を受け継げば大理石様のまだら模様になり、白毛の部分が体の大半を占めることはありません。しかし両親からその遺伝子を受け継いでしまうと全身が白がちになり、有色の被毛は体の一部だけになります。同時に瞳が青くなったり、鼻がピンクと黒のまだらになったり(バタフライ・ノーズ)もします。

ダブルマールやダブルダップルでは聴覚に異常がある可能性が高まるだけでなく、眼球が正常に発達せずにコロボーマや小眼球症をあらわすなど視覚にも先天的な問題がみられることもあります。

これらの毛色の犬すべてが聴覚や視覚に問題を抱えるわけではありません。しかし、同じ白毛であってもそれが作りだされる根本の部分、遺伝的な背景が違うと健康に問題を抱えて生まれてくる場合もあるのです。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Winkler, P. A., Gornik, K. R., Ramsey, D. T., Dubielzig, R. R., Venta, P. J., Petersen-Jones, S. M., & Bartoe, J. T. (2014). A partial gene deletion of SLC45A2 causes oculocutaneous albinism in Doberman pinscher dogs. PLoS One, 9(3), e92127.

Featured image creditrebeccaashworth/ shutterstock

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