皆さんこんにちは! 天国在住、パグのぐりです。
3月に入ってから、急に雨が多くなって、気温もだんだん上がってきたみたいですね。こちら、WOOFOO天国出張所にも、「地上ではちらほら桜の花が咲き始めました」っていうメッセージが届くようになってきたよ。
遺伝性疾患と生きる
春と言えば別れと出会いの季節。この春も学校を卒業し、新しいスタートをきる方が多いのではないでしょうか。今回は、新年度からある意味、過酷な環境に身を投じる男の子が主人公の映画をご紹介します。
『ワンダー 君は太陽』(スティーブン・チョボスキー監督 ジュリア・ロバーツ他出演 アメリカ 2017年)は、オーガスト(オギー)という10歳の男の子の、小学5年生の一年間を追った物語です。
オギーは生まれつき、遺伝病であるトリーチャーコリンズ症候群を負い、20回以上の顔の整形手術を受けてきました。それでも彼の顔は他の人とは違い、特徴があります。両親は小学4年まで、オギーに家庭で教育をしてきました。つまりホームスクーリングです。海外では特に理由がなくてもこの学習形態を選択する家庭は一定数あります。
4年生までは自宅で勉強をしてきましたが、両親、とくにジュリア・ロバーツ演じる母親は彼がこれから生きていく社会のことを考え、学校へ行かせる決断をします。オギーには両親のほかに、高校に入学したばかりの姉、オリヴィア(ヴィア)、そして愛犬デイジーという家族がいます。デイジーは家での時間が長いオギーにとってはかけがえのない友だちであり、家族です。いつも静かに家族に寄り添っている姿が印象的。たぶん犬種はテリア系だと思うんだけど、はっきりはわからない(※)。
※ 編集部ライチより:デイジーを演じたのは、カナダ在住のボーダー・テリア Gidgetです。読書介助犬(Reading Education Assistance Dogs)として小学校を訪問するお仕事もしているんだって!
初めての学校での試練
さて、5年生の新学期。不安を隠せない家族とともに初登校したオギーは、校門の前で家族と別れ、学校に足を踏み入れます。そこで待っていたのは、子どもたちの容赦ない視線。自分たちと違う顔のオギーを見て、ある子は視線を外せなくなり、ある子はすぐに下を向き、そしてある子は、隣にいる友だちとひそひそ話を始めるのでした。
それは教室に入っても同じ。校長先生の計らいで、オギーは事前に3人のクラスメイトに学校内を案内してもらっていました。彼らもオギーの顔にびっくりはしたけれど、時に容赦ない質問を浴びせつつも、そのうちの一人、ジャックはオギーの最初の親友になります。
しかし、オギーが一番ワクワクして楽しみにしていたハロウィンの日(みんなが変装して顔を隠せるからね)。仮装して学校へ行ったオギーは、親友だと思っていたジャックがいじめっ子のジュリアンにとんでもないことを話しているのを聞いてしまい、どん底に突き落とされるのです。
家ではデイジーをはじめ、母親、父親、姉が、それぞれの方法でふさぎ込むオギーに接します。みんな、オギーのつらさを共有しようとしている。家族が一つであることが、この映画の最初の救いです。障がいを抱えた子どものいる家では、その養育の方針の違いなどから両親が離婚するケースも珍しくないので。
たった一人の親友を失ったオギー。でも今度は女の子のサマーが、ランチルームで同じテーブルに座ってきます。また、ジャックもオギーに避けられている理由がわからないままに、でもオギーの魅力から離れることができず、なんとか仲直りをしたいと試行錯誤するのです。
そうして、だんだんと子ども社会の中でオギーが居場所を得ていく光景から目が離せません。
家族の視点も丁寧に
オギーが主役の一人であることは間違いありませんが、この映画の魅力は、それ以外の人物の視点からも語られる物語があることです。僕が特に注目したのは、姉のヴィヴィアン(ヴィア)の視点でした。弟のオギーが生まれながらにして大変な十字架を背負っていることを理解しているヴィアは、一番の理解者ともいえるほど、オギーと仲良しです。
でも、表向きはそうであっても、ヴィアだって子ども。弟が生まれて以来、両親、特に母親がどうしても彼につきっきりになり、気持ちも時間も自分に向くことが少ないことに、ヴィアはつらい思いをしていました。
母親もそんなヴィアの気持ちに気づき、「明日、学校を休まない?」と2人だけの時間を持とうとしてくれるのです。が、そういう日に限って、小学校でトラブルが起き…
父親役のオーウェン・ウィルソンもまたいい味を出しています。病気がテーマの映画はどうしても暗く重いシーンが続くのですが、その中でこのお父さんはどこか天然というか、明るさを醸し出してくれる。家の中ではオギーにアドバイスできる唯一の男性であるという自負から、母親とは正反対のことをオギーにこっそり伝えたりしています。でもそれが彼なりのオギーの愛し方だということが、しっかりと伝わってくる。やっぱり俳優ってすごいと思わせられる役でした。
見た目がほかの人と違う人は、私たちが普段暮らしている社会にもいます。生まれつき顔にあざがあったり、遺伝性のアルビニズムであったり。日本でもたびたびそうした方たちの気持ちは新聞などで記事になることもあるけれど、どこまで自分ごととしてとらえられるかは、なかなか難しい問題だと思います。この映画では、そうした社会の反応(物語では主に小学校)と、その時のオギーの気持ち、家族の気持ちが見事に描かれていました。
誰も、そういう見た目になりたくて生まれてきた人はいません。自分の意思のおよばないところでそうなっているという現実。過酷ではあるけれど、周りの人も見た目ではなく、その人と心と心で付き合ったときに起きる化学反応もある。そういうことも実感させてくれる映画でした。子どもって、大人より容赦ないから、学校というのはむしろ一般社会よりも過酷な状況ともいえるんだけど、まっさらな子ども時代だからこそ、きっかけさえあれば素直に相手を受け入れられるという暖かさも含んでいるんだなと思いました。
犬のデイジーもだけれど、とにかく名優揃いの作品。涙あり、笑いありの映画、家族で見るのもおすすめです!
Featured image creditMeet Auggie’s most loyal companion, Daisy. from Wonder / facebook