猫は独立独歩の自由人(猫)。たとえ相手が飼い主でも、犬のようにすり寄ったりせず、クールに接し、影響を受けることなどあり得ない!…という印象は、ちょっと間違っているのかもしれません。
猫も、子供が親から影響を受けるように、飼い主から大きく影響を受けていることが、新しく発表された研究により示されました。猫の飼い主の性格は、猫の行動や福祉に関係しているのだそうです。
本研究はPLOS Oneに掲載されています。
人格は扶養家族に対するケアの性質に、おおいに影響を与える可能性があります。この関係性はよく親と子において研究されていますが、飼育者と動物についてはあまり調査されていません。
ペットの飼い主は通常、代理親の役割を引き受けます。となると、飼い主も親子関係と同じように、ペットの行動や健康に影響を与える可能性があると考えらます。
リンカーン大学とノッティンガムトレント大学の研究者は、飼い主の性格と猫のライフスタイルとの関係を調査しました。3331人の飼い主が、自分の性格(ビッグファイブ:開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症傾向で評価)、猫の健康、種類、管理、行動様式などについて、オンラインでの回答を寄せました。
結果、猫と飼い主との関係においても、親子関係にみられるような傾向がみられることがわかりました。
・親・飼い主の神経症傾向が高い場合
- 神経症傾向のスコアが高い人は、感情的に不安定になる傾向(気分変動、対処能力の低下、身体的および精神的健康状態の低下)がある。
- 親の神経症傾向が高い場合、子育てスタイルはより不安定で権威主義的、子育て環境が不安定になる可能性がある。子供には、内気、不安、攻撃性などからの行動上の問題がみられる健康がある。
- 飼い主の神経症傾向が高い場合、猫は太り過ぎや病気持ちである傾向があり、不安で攻撃性、あるいはストレスに関連する行動上の問題がみられることもある。
・親・飼い主の神経症傾向が低く、他の性格特性が高い場合
- 開放性、誠実性、外向性、協調性が高く、神経症傾向が低いことは、より良い子育てスタイルと関連し、また良い子供に育つという結果とも関連している。
- 開放性、誠実性、外向性、協調性が高く、神経症傾向が低い猫親は、自分の猫に対して良い評価を与える傾向が見られた。すなわち、攻撃や恐怖、よそよそしさという項目には低く(=当てはまらない)、感じの良さという項目では高く(=当てはまる)と回答。さらに自分の猫に満足していると回答した。また猫が普通体重である(=太り過ぎ痩せすぎではない)と回答した率も高かった。
論文の筆頭著者であるLauren Finka博士はこの結果について、この研究では飼い主の性格と猫の行動などについての相関関係が確認できただけで因果関係があることは示していないことを注意点として述べています。たとえば今回の結果に「神経症スコアの高い飼い主の猫には病気が多い」というものがありますが、これは飼い主が心配性でよく気配りをするタイプで、動物病院に頻繁に連れて行くことで病気が顕在化しやすいから、この結果になったということも考えられます。
とはいえ、飼い主の人格と猫の行動に、人間の親子にみられるような関係があることは、猫親としては見逃せません。Finka博士は自分の性格や行動がペットに与える影響を過小評価すべきではないということも付け加えています。
「この研究の結果は、私たちがペットとの生活において下す選択や普段の行動が、ペットのウェルビーイングに影響しうることを強調するものです。私たちは、自分が相手に与える影響を過小評価することがよくありますが、責任ある飼い主として、ペットに与える影響について自覚することは重要だと考えます」
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Finka, L. R., Ward, J., Farnworth, M. J., & Mills, D. S. (2019). Owner personality and the wellbeing of their cats share parallels with the parent-child relationship. PloS one, 14(2), e0211862.
Featured image creditChen Yi Wen/ unsplash