子犬が恐怖を学ぶとき〜なぜ子犬は急に何かを恐れるようになるのか?

幼犬・子犬
この記事をシェアする

子犬は成長する中で、突然さまざまなものを恐れるようになる一時期を経験します。なににでも好奇心をもち果敢に挑んでいた子犬が、新しいものを拒否したり緊張をみせたりするのです。

これは、”fear periods(恐怖を感じやすい期間)”と呼ばれる、悪い経験に非常に敏感になる期間です。最初は8〜10週齢に、2回目は生後6〜14ヶ月の間に起こるといわれます。

この期間は一時的であり、犬の反応は完全に正常なものであることを知っておきましょう。

”fear periods”〜恐怖を感じやすい期間

2528 1 thewoof

image by Nadia Cruzova / Shutterstock

犬は出生から14ヶ月ほどの間に、2回の”fear periods(恐怖を感じやすい期間)”を経験します。この期間はイヌの発達段階に含まれるものではありません。訳語も定まってはいないようですが、ここでは読みやすいように”恐怖期間”という言葉を使って説明をします。

獣医師でドッグトレーナーのSummerfield氏によれば[1]、最初の期間は8〜10週齢、2回目は生後6〜14ヶ月の間にあるのだそう。極端な反応をみせることもないケースもあれば、誤った対応をしてしまったばかりに後々まで悪影響を引きずるケースもあるとのことです。

とりわけ2回目の期間においては、飼い主も「うちのコも、大きくなってきたから大丈夫だろう」と少し目を離しがちになってくるころです。生活圏を広げたり、家の中での自由を与えたりし始めているかもしれません。「世の中のさまざまなことに慣れてきて、過度な恐怖も感じないようだ。イイコに育ったなぁ」と安心しているそのころに、突然”恐怖期間”が訪れます。

子犬の”恐怖期間”(8-12週齢)

2528 3 thewoof

image by Anna Hoychuk / Shutterstock

最初の恐怖期間は、生後8〜12週の間に起こります。生後8〜12週といえば、自然の中では子犬は洞穴から這い出て周りの世界を探索し始めるころです。家を飛び出て母犬から離れた場所では、注意散漫になればいつでも簡単に殺されることを学ばなければなりません。子犬たちは生き延びるために、この時期に恐怖に敏感になっているという説明をされることもあります。

子犬はこの時期、人や他の犬、モノに対する怖い出来事に敏感になります。以前は平気だった人に対して吠えることもあれば、ちょっとの音に敏感に反応することもあります。この期間に”トラウマ体験”とも呼べる恐怖体験をさせることは、後々まで影響を与えることになりかねないため、たとえば母犬から引き離すことや去勢・避妊手術なども推奨されません。動物病院の訪問やグルーミングも、非常に注意をして行うか、楽しい体験だけに限定した方が良いでしょう。

  • 社会化のために新しいヒト・モノ・コトに触れさせるときは、必ず注意深く観察しましょう。ストレスサインがみられたら一旦ストップして様子を見るように。また、犬に無理強いさせるのはやめましょう。
  • 積極的な強化を使うようにしましょう。おもちゃやオヤツなどを上手に使い楽しく訓練をしましょう。
  • 動物病院に行く前に、模擬健康診断遊びをしましょう。身体を満遍なく触ったり、ペンを注射器とみなして予防接種の練習をします。もちろん上手にできたらオヤツをあげましょう。
  • 飼い主さんが冷静を保ちましょう。子犬はあなたの反応をみています。あなたが新しい状況に不安を感じたりビクビクしてしまえば、彼らは同じことをするかもしれません。世界が怖い場所ではないことを、子犬に教えてあげましょう。

2回目の”恐怖期間”(6-14ヶ月齢)

2528 2 thewoof

image by Alexey Savchuk / Shutterstock

2回目の”恐怖期間”は、子犬たちにはるかに大きな影響を与えるようです。以前は愛想がよく自信に満ちていた子犬が、なんでもないようなことにひどく反応するようになります。パタパタとはためく旗を怖がったり、ひげの男性に吠えかかったり、環境中のもの急激に反応が高まるのです。

特に大きな問題がなければ2~3週間たてば穏やかで陽気なわんこが戻ってきますが、このときに併せて苦痛を感じるようなことを体験すると、永続的に負の感情を抱き続けることになる恐れがあります。

Summerfield氏によれば[1]、犬の脳が鋭敏な反応をする時期であり、何か「悪いこと」が起こると非常に敏感に反応します。1回の恐怖や苦痛の経験によって、それを引き起こしたトリガーに対して強烈で永続的な感情的反応(恐怖など)を引き起こすことがあります。この反応は、野生においては非常に有効です。たとえば一度毒になるものを口にして苦い経験をしたら、もうそれには近づかないことを永続的に教えるからです。しかしペットの犬においては、「たった一度の恐怖体験で、爪切りを持ち出すとパニックになる」などの深刻な悩みにも繋がりかねないので、注意が必要です。

この時期には、犬を飛行機で輸送するなどのトラウマを引き起こすような体験は避けたほうが無難です

  • 飼い主さんが、穏やかでリラックスした態度を崩さないようにしましょう。(犬が苦しんでいないことがわかっている場合は)犬が吠えていても、穏やかな態度を変えないようにしましょう。
  • 陽気でリラックスしたトーンで話しましょう。
  • ペッティングや遊びを快適に提供します。
  • 恐れているものに無理やり近づけるなどの強制はやめましょう。無理強いしても克服はできませんし、彼らの不安が増やすだけです。落ち着いて、怖いことから離れてしまいましょう。
  • 怖いものが身近なものである場合は(たとえば帽子や旗など)、オヤツを使って「恐怖の対象と美味しいもの」を結びつけてみましょう。このとき、絶対に急ぎすぎてはなりません。恐怖の対象が視界の端っこにあるところからスタートして、何日も何週間もかけて徐々に近づくようにしましょう。恐怖の対象に徐々に慣らしていく方法は、言うのは簡単ですが非常に難しいものです。できるだけトレーナーなどの力を借りて、正しい方法を学びましょう。

幸いなことにこの”恐怖期間”は、本当に一時的なものです。人によっては全く気づかないこともあります。

「恐怖の期間にトラウマとなる経験をすると一生引きずる」というと、子犬を刺激にさらしたくなくなってしまうかもしれませんが、それは全くの誤りです。犬にとって社会化はもっとも大切なことで、とくに子犬時代の生後3〜12週間は刺激をどんどん受け入れられる時期ですから、家に閉じ込めるというのは悪手です。

積極的に様々なモノゴトに触れることを恐れないようにしましょう。繰り返しになりますが、大事なのは「そういう時期があることを知って過剰反応しないこと」と、「社会に触れる犬に無理強いをしないこと」ということです。楽しい体験をたくさんさせて、物怖じしない陽気な犬に成長させましょう!

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] The Dark Side of Socialization: Fear Periods and Single Event Learning – Dr. Jen’s Dog Blog
[2] Understanding Fear Periods in Dogs | PetHelpful

Featured image creditAnna Hoychuk/ shutterstock

the WOOF イヌメディア > すべての記事 > イヌを育てる > 幼犬・子犬 > 子犬が恐怖を学ぶとき〜なぜ子犬は急に何かを恐れるようになるのか?

暮らしに役立つイヌ情報が満載の「theWOOFニュースレター」を今すぐ無料購読しよう!

もっと見る
ページトップへ