犬と子供が一緒に過ごす光景は、この世で一番平和で幸せなものに思えますが、犬は私たちが考えるほどにハッピー気分ではない可能性があります。
犬の中には、子供が好きではないコもいます。子供と接している犬が平気なようにみえても、それがすなわち「大丈夫だ」ということではありません。犬の忍耐や寛容が限界を超えてしまうと、子供を脅かしたり攻撃したりする可能性は増大します。
愛犬が(明らかな)子供嫌いであってもなくても、犬が子供とコミュニケーションする際には、双方が安全であることに注意を払わなければなりません。
犬が子供を好まない理由
私たち人間の大人は、子供が無害であることを知っていますが、犬にそれはわかりません。急に大声を出したり、予測不可能な動きをする子供は、犬たちの観点からは”人間”に見えない可能性もあります。
犬が子供を好まない(あるいは恐れる)理由としては、以下のようなものが考えられます。
- コミュニケーションの欠如:愛犬が子犬時代に子供たちとの楽しい交流をしなかったことが原因のひとつとして挙げられます。子供の体のサイズ、匂い、彼らが生み出す騒音、そして動きは、犬にとって異質なもの。恐ろしい存在に見えるのかもしれません。
- 過去のネガティブな経験:犬は痛みを伴う、あるいは不安を感じさせるコミュニケーションの影響で、子供に対して恐怖を感じている可能性があります。子供が尻尾を引っ張ったり、被毛をひっつかんで思い切り引っ張ったり、オモチャを盗んだり、目を突いたりされた経験が、犬の心に傷を残してことが考えられます。たった一度のネガティブな経験でも、犬にとっては大きなストレスとなり、恐怖心を増大させることがあります。
- 子供の予測不可能な行動:子供たちは高いピッチで叫び、走り、乱暴に押しのけたり引きずったり、ギュッとハグしたかと思えば、耳や尻尾を引っ張ったりします。その行動は予測不可能で、仮に犬が子供に好意を抱いていたとしても、犬に大きなストレスを与えます。犬は繰り返しを好む一方、予測できないことに恐れを抱きます。犬にとっては子供の行動は過大で、ときに忍耐の限界を超えてしまうことすらあります。
- パーソナルスペースを乱される:小さな子供はまだパーソナルスペースの概念を理解していません。犬が身体や心を休めるためには、自分だけでゆったりできる時間やスペースが必要ですが、子供はときに、犬の領域を脅かします。
犬が発するストレスサインについて学ぶ
一般家庭で育つ犬が一度も子供と接することなく生涯を終えることは、滅多にないことでしょう。子供と接する犬について学ぶこと、そして犬 と子供の安全を守るための管理に取り組むことはとても重要です。
犬たちは「お子さんが嫌いです」と言葉では伝えられません。人間の大人が、犬たちの発する不安や恐怖のサインに敏感でなければなりません。以下のことを心に留めておきましょう。
- 犬が「子供嫌いか、そもそも攻撃的なのか」を評価しましょう。犬の様子を観察し、常日頃から恐怖や攻撃性をみせるのか、あるいは小さな子供の周りでのみ反応するのかをみてみましょう。
- 犬の不快感のサインは、必ずしも吠え声やうなり声ではない。まだ小さなストレスや恐怖は、非常に小さくて微妙すぎるサインとして現れるものです
- 子供が苦手な犬の中には、回避戦略を選ぶコもいます。子供が近づいてくると方向を変えるとか、隠れるようとするなどの反応として現れます
- 身体の小さなサインとして現れることもあります。ストレスサインとしては、身体のこわばり、尻尾を隠す、耳が倒れる、口の周りを頻繁に舐めるなどが一般的です
- 上記のような一般的に知られているもの以外にも、その犬に特徴的な「よく見られる行動」もあります。普段から犬の様子を観察し、「こういう状況だとこの行動がよく見られるな」「いつもとちょっとだけ違うな」ということに敏感になりましょう
- 子供に対して唸ったり吠えたりする場合は、もうすでに危険な状況に一歩足を踏み入れています。「吠えているけれど大丈夫」「慣れれば平気」という考えはとても危険です。まずは子供から距離をとること、そして専門家に相談することを検討しましょう
不快を表す犬にやってはいけないこと
・「うちのコは大丈夫」と思い込むこと:どんな犬も立派な歯を持っており、その顎は私たちが考える以上に力強いものです。すべての犬は噛むことができます。子供のことが好きでも嫌いでも、状況がどんなものであっても、犬が攻撃する可能性がゼロにはならないことを認識しましょう。「うちのコは特別だ」ということは絶対にありません。
・自然に慣れるとたかをくくること:他の犬の行動問題と同様に、犬の子供に対する恐怖やストレスが自然になくなることはありません。対策をとらずに無視し続けると、問題がさらに悪化するおそれもあります。
・子供に接するよう強制すること:恐怖を克服する方法のひとつに、その恐怖の対象に徐々に慣らしていくというものがあります。しかしこの方法は非常に難しく、犬のトレーニングについての知識と経験をもたない人が挑戦すると、多くは逆効果になります。無理に子供を近づけることはやめましょう。犬が限界を感じ、他の選択肢がないと感じたら、警告を次の段階(吠える、唸る、噛む)にエスカレートさせるかもしれません。
子供が好きでない犬に対処する
犬は自然に子供好きになることはありません。一方で、子供が自然に、犬が好むような行動を瞬時に学ぶことはありません。犬がいると興奮し、一緒に楽しく遊びたいとはしゃいでしまうのが普通でしょう。
犬と子供の安全を守り、できることなら良い関係を築けるよう双方を導くのは人間の大人の役目です。
- 散歩中に子供に会ったら:愛犬が不快感をみせていることに気づいたら、その場から立ち去ってしまうことが最も安全な策です。子供が苦手な犬ならば、お散歩は通学時間や通学路を避けてしまうのもアリです。親御さんに、犬が子供を苦手としていることを伝えるのも良いですし、どうしてもオブラートに包みたいなら「怪我をしているからまた今度ね」と伝えるのも良いでしょう。
- 子供に犬との接し方を教える:犬のスペースを侵害しないとか、食べたり寝たりしているときは邪魔をしないなどの基本的なことを教えましょう。また、犬が嫌がること(引っ張る、叩く、目を突く)や犬が喜ぶこと(抱っこの仕方、ナデナデしたら喜ぶ場所)、犬との遊び方を教えましょう。
- 報酬(オヤツ)と紐付ける:子供が見えると緊張してしまう犬には、子供が見える場所で大好きなオヤツを与える方法を試してみてください。「子供が見えたらウマウマがもらえる」と覚えるまで、頑張って継続してみてください。このとき、子供との距離を十分にとっておくこと、そして犬のネガティブな感情を変えていくのは時間がかかると認識することは非常に大切です。ネガティブなもの(ここでは子供)とポジティブなものと紐付けるには、場合によっては数週間や数ヶ月かかるものです。急激に子供との距離を縮めないよう注意しましょう。
残念ながら、「人間の子供が大好き!」「予測不能な行動がたまらなく面白いよね!」と思う犬は存在しないでしょう。ほとんどの犬は子供が苦手という認識を持っていた方が安全です。
ただし、子供と犬の距離を縮めることは不可能ではありません。犬と子供をしっかりと見守り、彼らがより良い関係を育むことができるよう力を尽くしましょう。
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