犬もうつ病になるのか?

健康管理
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なんだか元気のない愛犬。お散歩や遊びにも身が入らない様子です。身体の調子が悪いのか、それとも心が不安定?犬も”うつ病”になるのでしょうか?

犬はうつ病になるのか?

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image by cristi180884 / Shutterstock

うつ病とは、「憂うつである」「気分が落ち込んでいる」などと表現される症状(抑うつ気分)が強く重症であるときの状態のこと[1]。現在のところ、うつ病などの心の病気と言われるものの原因はよくわかっておらず、確実に診断する生物学的な検査などは存在しません。診断は、「特徴となる症状と持続期間およびそれによる生活上の支障がどの程度あるかを中心に[2]」行われる方向にあり、本人などへの聞き取りをもとに、ICD(国際疾病分類)やDSM(米国精神医学会)などの診断基準に照らし合わせて行われます。

つまり、一般的に定義される「うつ病」であるかの診断には、本人への問診が不可欠なのです。しかし、犬に質問して答えを得ることはできません。よって、「犬もうつ病にかかるのか?」という問いへの答えは「わからない」となります。病気かどうかは、「聞けなければわからない[3]」というわけです。

『犬も鬱で死ぬ』

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image by Gordon / Flickr

とはいえ実際には、うつ病だと判断されてもおかしくない事例はいくらもあります。2017年11月のニューズウィーク日本版の記事『犬も鬱で死ぬ 捨てられたショックで心は修復不可能に』では、家族に空港に置き去りにされた犬のストーリーが紹介されています。求め続けた家族にはもう会えないと悟った犬は、餌を受け付けなくなり、極度の栄養失調に陥ってしまいました。

治療にあたった獣医師は、この犬は「深い悲しみのあまり鬱になった」と語っています。ひどく落ち込んだ状態が長く続き、身体の健康も脅かされたこの犬は、うつ病であると言っても差し支えはなさそうです。

このケースで紹介された犬のように重症でないとしても、犬も私たちが陥るような「抑うつ」や「うつ状態」になることはあります。犬に感情があるかどうかが疑われていた先の時代とは異なり、現在では多くの科学者や獣医師が、動物にも感情があり、うつ精神的な問題も発生しうると考えるよう教育されています[7]。家庭の犬も何かのきっかけで、落ち込んだり塞ぎ込んだりしますし、その心の状態を反映して行動が変化することもあります。

犬の「うつ状態」とは

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image by sommart sombutwanitkul / Shutterstock

犬のうつ病の症状は人間の症状と非常によく似ています。the American Veterinary Society of Animal Behaviorの元会長 Ciribassi氏によれば、「犬は引きこもりがちになるでしょう。元気がなくなり、食生活や睡眠習慣に変化が現れます。かつて親しんでいた活動などに参加しなくなります」と説明しています

”うつ状態の犬”に見られる行動や変化には、以下のようなものがあります。

  • 食欲の減退
  • 訓練したことを忘れる(トイレの失敗など)
  • 寝てばかりいる
  • 運動やお散歩への関心の欠如
  • 突然攻撃的になる
  • (親しんだ場所での)混乱したり迷子になる

ただし、こうした”うつ状態”による行動変化は、医学的な問題によっても引き起こされる可能性があるため、注意が必要です。関節炎を抱えたシニア犬は散歩に興味を示さなくなりますし、腎臓疾患のある犬は食べ物への興味を失います。心の病気と決めつけることなく、あらゆる可能性を検討しなければなりません。

もし愛犬が”うつ状態”であることに気づいたら、そしてそれが長く続くようならば、まずは獣医師に相談して健康状態を確認しましょう。原因となる病気が治癒すれば、症状が落ち着くこともあるのです。

犬のうつ状態の原因

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image by open-arms / Flickr

犬が”うつ状態”になる原因として、以下のものが考えられます。

  • 健康上の問題:関節の痛み、内臓の病気、皮膚にかゆみがあるとき(噛んだり舐めたり)[5]など健康に問題があるときに、犬は元気がなくなったり眠り続けることがあります
  • 大きな変化:引っ越し、家族の変化(結婚・離婚・進学・新しいペット)、スケジュールの変更(在宅から外の仕事へ)などは、犬の元気を消失させる可能性があります
  • 仲間を失う:ペット家族の喪失は、あなただけでなく犬にとっても大きな打撃です
  • 飼い主の落ち込み:犬は飼い主の感情的な状態に極めて敏感です。ニンゲン家族のうつ状態に犬が反応することがあると言われます。飼い主がうつ状態のために十分なケアがなされないことが、うつ状態を引き起こす可能性もあります
  • 天気や季節の変化:寒い時期や雨の多い日が続いたときは、犬の気分にも影響を与えるようです[4]
  • 加齢:シニア犬は、いわゆる”うつ状態”になります。ただし、そうした変化は加齢による身体機能の衰えなのか、病気あるいは認知機能の低下のせいかは見分けることは困難です
  • 犬のうつ状態に対処する

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    image by Syda Productions / Shutterstock

    愛犬がウツウツとしていて、それが何日も続くのなら、対処をしなければなりません。まずは動物病院への訪問を、スケジュールに入れましょう。

    • 動物病院へ行く:健康な犬が何かのきっかけで”うつ状態”になることは珍しいことではありませんが、長期的にこの状態が続くことはまれにしかありません[6]。何日も元気がない状態が続くのなら、動物病院で検査して、怪我や病気ではないかを確認しましょう。また、重度のうつ状態の場合には、薬の処方が役にたつかもしれません
    • 運動量を増やす:健康が確認されたなら、元気のない犬を連れて外へ出ましょう。エクササイズが人の気分を盛り上げるのと同様に、犬の気分も改善してくれます
    • 犬が好きな活動をする:愛犬が好きな活動を一緒に楽しみましょう。特定のオモチャに尻尾をブン振りするなら、そのオモチャでたくさん遊びましょう。抱っこが好きなら、たくさんハグしてあげるのも良いでしょう。愛犬が楽しそうにしているときにたっぷりと褒め、どんよりと暗くなっている時はひとりにすることです(元気がない状態に褒めないこと)
    • 他の犬と遊ばせる:他の犬との交流が、愛犬の気持ちを盛り上げてくれることがあります
    • 新しい仲間を迎える:仲間の犬を失って悲しみにくれている犬には、新しいペットの存在が大きな慰めになることもあります。ただし、家族の状況と犬の気持ちの両方を考慮して慎重に行わなければなりません
    • たっぷりの愛情を注ぐ:いつも以上に愛犬に愛情と注目を注ぐことは、犬の孤独感を軽減してくれることでしょう

    ◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
    [1] うつ病|疾患の詳細|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省
    [2] 病名から知る|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省
    [3] Depression in Dogs: Symptoms, Causes, Treatments, and More
    [4] Causes of Depression in Dogs
    [5] How to spot if your dog is depressed, and what you can do about it
    [6] Depression in Dogs: Symptoms, Causes, Treatments, and More
    [7] スタンレー・コレン『犬と人の生物学: 夢・うつ病・音楽・超能力』 (2014) 築地書館

    Featured image credit Chonlawut / Shutterstock

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