猫の舌の驚異のお掃除力〜あのザラザラがブラシの役目を果たす

サイエンス・リサーチ
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猫は起きている時間の最大50%を、被毛の手入れに費やす清潔好き。しかも彼らは驚異の舌をもっていて、舐めることで汚れをとるだけでなく、ブラシのように毛皮のもつれをほどき毛並みまで美しく整えるのです。

ジョージア工科大学のアレクシス・ノエルらのチームは、猫の舌がいかにして自身を清潔に保つかを解き明かそうと試みました。

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image by bdavid32 – Adobe Stock

研究者らは、CTスキャン、高感度フィルムなどを使用し、イエネコ、ボブキャット、クーガー、ユキヒョウ、トラ、ライオンの6種のネコ科動物の舌を調査したのです。

猫の舌は乳頭(papillae)とよばれる、鋭く、後ろ向きの突起で覆われています。この隆起はこれまでは円錐形のような形状だと考えられていましたが、ノエルらの調査によりこの突起が実は中空で、U字型の先端を持つ爪状のフックのような形状であることがわかりました。


image / PNAS

研究者らはこのフックのようなものを便宜上cavo papillae(cavo=空洞、papillae=乳頭)と呼んでいます。解剖学的な名称がまだないからです。

この部分はケラチンでできていて、これが猫の舌のザラザラとした感触を作り出します。空洞は唾液を吸いあげて、これを毛の根元に送り込む役割を果たすそう。実際、研究チームが食用占領を乳頭に垂らしたとき、液体の一部が吸い上げられたということです。

cavo papillaeは、イエネコだけでなく6種のネコ科動物に共通してみられました。そのサイズや形状は、動物の身体のサイズにかかわらず全て同じだったということです。長さは2.3mm程度ですが、どのネコ科動物でも毛の根元に到達するうえでは十分な長さなのだそう。

ノエルはこう述べています。「私達は、トラからボブキャット、ユキヒョウまでのネコ科動物について、被毛を圧縮したときの高さが常に乳頭の長さより低くなることを発見しました」乳頭はどのネコ科動物にも合致していて、常に清潔さを保つことができるようになっているようなのです。

ただし、彼らが調べた中での唯一の例外はペルシャ猫。長くて豊かなことで知られる彼ら被毛を美しく保つためには、乳頭を使ったグルーミングだけでは不十分で、毎日のブラッシングが欠かせないというのです。

優秀な乳頭には、もつれを解く機能も備わっています。高速フィルムを使ってグルーミングする猫を記録したところ、もつれに当たると小さな突起が回転し、これを解くことができるのだそうです。

National Geographicによれば、一日のグルーミングで猫たちは1/5カップの水を身体中に行き渡らせるそう。グルーミングは清潔を保つためだけでなく、唾液の蒸発により身体の温度をあげすぎない効果も望めるのだといいます。

この研究の実用的な用途のひとつの例として、チームは3Dプリンタを使って猫の乳頭の動きを模したグルーミングブラシ(tongue-inspired grooming brush :TIGR)を作り、特許を申請しているそうです。猫のブラッシングに使用できるのはもちろん、薬を皮膚に直接投与するときにも使用できます。あるいは家のカーペットを清潔にして手触りを良くするためにも使用できるかもしれません。


image / PNAS

研究者によればTIGRブラシは、通常のブラシより少ない力でもつれを解消でき、抜け毛を取り除く手間も少なくてすむそう。リアルを模した次世代型”猫の舌ブラシ”なら、カーペットの掃除も楽しくできそうです。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Noel, A. C., & Hu, D. L. (2018). Cats use hollow papillae to wick saliva into fur. Proceedings of the National Academy of Sciences, 115(49), 12377-12382.

Featured image creditkaramysh – Adobe Stock

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