断尾は残酷か〜いろんな尻尾のワンコさんがいるのは普通なの?

生態・行動
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街に出ると、たくさんのワンコさんを見かけます。

大きさも違えば、毛の色や長さ、見た目も全く異なります。同じワンコなのに耳や尻尾の形も違います。同じ犬なのに、それってなんで?どうして丸い尻尾のコと、ムチみたいな尻尾のコがいるの?

そんな疑問に、今日は迫ってみたいと思います。

生物学的に見る尻尾

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© WOOFOO original image by BlueRingMedia / Shutterstock

実は、ワンコとニンゲンには、ほとんど同じ種類の骨があるのです。頭蓋骨、肋骨、肩甲骨などなどは共通です。大きな違いは、犬には鎖骨がなく、人間には尻尾がないというところでしょうか。

尻尾とは、背骨の延長で、骨、筋肉、腱などから成り立っています。しっぽの骨を尾椎(びつい)といい、犬では6〜23個の尾椎があります。ちなみに人間の尾椎は結合して1個の尾骨になっています[1]

犬は尻尾でさまざまな感情を表現します。いろんなことを表現するために、尻尾にはたくさんの筋肉があり、その運動能力を使って細かい表現をするのです。ワンコたちは尻尾を、いかなる方向にも動かすことができて、尻尾の先っぽだけを動かす事だって出来るんですよ。尻尾にはもちろん、神経(尾神経)だって通っています。

犬の断尾とは

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from Advocates for Animals reports

犬の断尾とは、犬の尻尾を根元もしくは中間部から切り落として短くすることで、生後2日から5日の間に行われます。医学的な観点から行われる場合と、美容目的(たとえば犬種基準を満たすため)の断尾があります。

尻尾を切り落とされる、というとひどく恐ろしいことに感じられますが、一方で上記目的のために日常的に行われている行為でもあります。痛みは?といえば、やはりあるようで、切られた時の痛みは短いものですが、最近では痛みの感覚が長く続くのではないかという懸念が持たれているそうです[2]。犬の種類や大きさにもよりますが、犬の尻尾には通常4~7の神経が通っており、それにもかかわらず断尾の手術は麻酔をしないで行われます。

慣習的に断尾が行われてきた犬種は、テリア種、ジャーマン・ポインター、シュナウザー、ミニチュア・シュナウザー、キング・チャールズ・スパニエル、プードルなどなど、様々です。

断尾によって起こる問題とは

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© Robynrg / Shutterstock

尻尾を切られるのだから、もちろん痛いのは大問題。でもそのほかに、どんな問題があるのでしょうか。

・健康上の問題

尻尾の筋肉は骨盤あたりに関係していることから、断尾は直腸や肛門、そして骨盤などの機能に影響を与えるようです。失禁や会陰ヘルニアなどの原因になるとも言われています[2]

・コミュニケーションの問題

尻尾を振るのは、ワンコさんお得意の視覚に訴えるコミュニケーション手法の一つです。たとえば、尻尾を振る時の高さや振り方それぞれに意味があります。たとえば、犬が尻尾を振る事は仲間や他の動物に自分の匂いを放ちそこに自分がいる事を知らせていると言う役目もあるんです。より支配力がある犬は他の犬よりもより尻尾を高く挙げ自分の匂いを放出しようとするのです。断尾は、そうしたコミュニケーション手法を奪うことになってしまいますよね。

・運動能力の問題

尻尾がある事で、バランスをとったり、上手に走ったり泳いだりすることができます。たとえば、泳ぐ時に尻尾を動かすことで、推進力を高めたり、方向性を安定させたりします。走る時にも同様で、方向性や推進力を安定させます[3]。走っていて急ブレーキをかけて止まる時には、尻尾を大きく回すように動かして、体のバランスを取ります。


断尾について考えるなら、それが「その犬っぽいから」といった美容の目的ならば、やめたほうが良いとわたしたちは考えます。犬たちが、本来は受けるべきでない苦痛にさいなまれるだけでなく、本来ならば表現できる感情や意思疎通の機会まで奪ってしまう恐れがあると考えるからです。

一方で、なんらかの事情で断尾という決断をする局面もあるかと思います。ただそれは、犬たちの健康や幸せを考えたうえでの決断であってほしいなと思います。

ナチュラル美人が良いなと、とりわけワンコについては思う次第です。ワンコに幸あれ!

企画・翻訳:Yoko Suto-Murphy


[1] 田中茂男. (2011). 『犬の医学』. 時事通信社. Retrieved from http://www.amazon.co.jp/犬の医学-田中-茂男/dp/4788711605
[2] Food and Rural Affairs
concluded in 2002 that ‘tail docking definitely causes pain in neonatal puppies’.8“Why the tail-docking of dogs should be prohibited” by Advocates for Animals

[3] WANSBROUGH, R. K. (1996). Cosmetic tail docking of dogs. Australian veterinary journal, 74(1), 59-63.

 
Featured image by WOOFOO using image bySoRad via shutterstock

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