ハーディングとは「動物の群れを集める、追いやる、移動させる」という意味のherdを名詞化した言葉。犬の中にはこの能力に長けたものがあり、これらはハーディング・グループとして分類されます。
ハーディングの方法は犬種によって様々で、そっと近づいて睨みをきかせるものもあれば、吠えたり噛み付いたりしながら移動させるものもあります。得意な分野も犬種によって異なり、家畜を一箇所に集める能力に長けている犬もいれば、追い立てる能力が秀でている犬もいます。
牧畜が身近ではない人にとっては、イメージをもつのが難しい羊追いですが、広大な敷地を持つ巨大牧羊場にとっては、ものすごく難儀で重要なお仕事なのです。まずは巨大な牧羊場がどんなものであるかを、ニュージーランドで撮影された動画をみて確認してみましょう。
ドローンで上空から撮影された映像には、もはや何匹いるかわからない羊の群れと、彼らを移動させるために忙しく動き回るハーディング・ドッグの様子が収められています。魚の群れにも見える羊さんたちは、時に隊列を乱すこともありますが、追い立てる犬に従って、集まったり離れたりしながら一つ所に集合します。
この離れ業をやってのけるのが、ハーディング・グループの犬たちです。非常に活発で知性が高く、高度な訓練が可能なこの犬たちは、何百年も前から家畜の群れを制御し移動させる能力を伸ばしてきました。JKCで牧羊犬・牧畜犬として分類される犬は29種。日本でも人気のウェルシュ・コーギー・ペンブロークやシェットランド・シープドッグ、ジャーマン・シェパードもこのグループのお仲間です。もっとも有名な牧畜犬は、やっぱりボーダー・コリーでしょうか。聡明で好奇心に溢れたこの犬は、各地で行われるシープドッグの競技会でも常に上位をキープする”デキる犬”です。
自分より体の大きな動物の動きを制御する能力を備えたハーディング・ドッグたち。彼らはもちろん訓練を経て一人前の牧畜・牧羊犬となりますが、追いかけたり噛みついたりする傾向は、脈々と先祖から引き継がれた性質なのです。もし犬が都会生まれで、家畜を目にしたことがないとしても、犬たちは彼らの先祖が情熱を燃やた”仕事”を好む傾向があります。そうした”仕事”がない場合は、彼らの欲求は満たされることがなく、ときには腐って問題行動を起こしてしまうこともあります。単にお散歩をしたり走ったりするのではなく、知的好奇心を満たすようなドッグ・スポーツや作業などにチャレンジするようにしなければなりません。
さて、伝統の仕事に就けた犬たちは、その能力を日々の仕事の中で磨いていきます。中には磨かれすぎて、こんな人間のアソビにも付き合ってあげる犬と羊もいます。
イギリス、ウェールズ地方の牧場を使って撮影したこの動画は、2009年に配信され、現在までの再生回数は2000万回。羊を、巨大羊に見えるように集めたり、LEDライトのベストを着せて70年代の卓上ゲームを再現したりしています。
思わず目を奪われるこの映像、全てが”リアル”ではありません。羊たちは実際にLEDベストを着用し、犬たちの誘導に従って移動しましたし、犬たちも類稀なる能力を使って羊たちをコントロールしました。
しかし、ポストプロダクションでいくばくかの加工は加えられているそうで、”リアル”ではない所もあるのだそうです。ただ羊に関しては、コピペされた個体はおらず、全てが本物だということです。
心配された夜の撮影でも、犬も羊も恐れを抱くことはなく、自由に自然に動き回っていたのだとか。
どこまでが本当で、どこからが加工かはわかりませんが、羊の群れを作るという性質と、犬たちの群れをコントロールする性質は本物です。これだけの能力を備えて生まれてくる犬たちですから、お気楽気分で飼い始めると、犬たちに逆に”飼われて”しまいそうですよね。
Featured image creditSheltieBoy/ Flickr
世界で最もイケてない牧羊犬〜羊の群れに追いかけられてグダグダに | the WOOF イヌメディア
牧羊犬、あるいは牧畜犬とは、放牧している家畜(主に羊)の群れの誘導し、群れの安全を守るように訓練されたワーキングドッグです。 犬種だとボーダー・コリーが有名ですが、名前にシープドッグとつく犬種(オールドイングランド・シープドッグなど)は牧羊犬として生み出された犬が殆どです。