イヌの記憶はこんなに短い?〜短期的に覚えていられるのは2分程度だって
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おすわり、お手、伏せ。
わたしたちが出すコマンドを覚えて、実行できるワンコさん。
イヌたちは記憶力を、どの程度有しているのでしょうか。一つのヒントになる研究が、2014年12月に発表されました[1]。どうやらイヌの記憶力は、わたしたちが考えているよりずっと短いようなのです。
ストックホルム大学の研究者らは、遅延見本合わせ課題※を用いた研究(鳥、哺乳類、蜂を含む25種。データセットは90)についてメタ分析※※を行い、動物の作業記憶(working memory)について調査を行いました。
※ 遅延見本合わせ課題とは、「標準的な手続きは、試行開始時に見本刺激である1つの刺激を提示し、一定の遅延時間後に提示した複数の選択刺激の中から見本刺激と同じものを選択させる」課題をいう[2]。
※※ メタ分析とは、同一の研究課題に関して、独立に行われた研究の結果を統計的手法によって統合する方法[3]である。
研究チームを率いたリンド博士(Johan Lind)によれば、25種が記憶を保持できる時間の平均は、なんと27秒だったのだそうです。イヌについていえばおおよそ2分。他の生き物に比べれば優秀な成績ではありますが、たったの2分!?とちょっとショックを受けてしまいますよね。
でも、あんまりガッカリしないでください。これはあくまでも「作業記憶」についてのお話です。作業記憶とは、短期記憶の概念を発展させたものであり厳密には意味が異なりますが、ここでは短期記憶と同様に扱っても大きく差し支えることはないと思います。短期記憶についてはご存知でしょうか。感覚器(目や耳など)から得た情報で注意を向けられたものは一時的に記憶として貯蔵されるのですが、これは容量および保存期間に限界があるため短い時間しか保持されないのです。これが短期記憶です。人間だって、短期記憶の保持時間は秒単位だということですので、ワンコが特別悪い成績だということはないのです。あんまり責めないであげてください。
とはいえ、たっぷり遊んであげたとしても2分ですべて忘れられてしまうのか!と思うと少し脱力。そういえば、ゴミ捨てのためにちょっと外に出て、すぐに戻ったときでもワンコは熱烈大歓迎。これは犬たちが、飼い主がいつ自分の元を離れたか覚えていることができず、どのくらい時間が過ぎたのか分からなくなっているからなんだそうです。ちょっと納得しちゃいますね。
動物の脳はサバイバル本能が優先に機能する仕組みになっており、人間の脳のように、日々の出来事の詳細を過去に結びつけて記憶するような作りにはなっていないのだそうです[4]。
人間は「誰が」どんな誕生日プレゼントをくれたのか覚えています。しかし犬たちは、新しいボールをもらってとても気に入ったとしても、そのお気に入りのボールを「誰が」くれたかなんていう詳細情報は覚えている必要がない、つまり、どうでもいいことなんですね。
繰り返しますが、これは短期記憶のお話。長期記憶は、ほぼ永続的な記憶であり、彼らもこれを持っていることは間違いないようです。大好きな飼い主さんのこと、繰り返し練習したコマンド、そして何度も行った場所などは、彼らの長期記憶にしっかりと刻まれていますよ。
ということで、ワンコは忘れっぽいんです。
何度も何度もナデナデを要求されたとしても、怒らないであげてくださいね。
[1] Lind, J., Enquist, M., & Ghirlanda, S. (2014). Animal memory: A review of delayed matching-to-sample data. Behavioural processes.
[2] 遅延見本合わせとは – 催奇形性所見用語 Weblio辞書
[3] 中島義明 編(2011)『心理学辞典』有斐閣
[4] Many Animals—Including Your Dog—May Have Horrible Short-Term Memories
Featured image by Javier Brosch via shutterstock