タバコの煙には様々な有毒物質が含まれており、犬たちがそれを吸い込む(二次喫煙、三次喫煙)ことによって肺がんなどのリスクが高まることは、すでに配信した記事の中でお伝えしました。
今回はタバコの中に含まれる有毒物質、ニコチンについてお話します。ニコチンの摂取は、犬たちの体にどんな影響を及ぼすのでしょうか。
ニコチンは”毒”〜中毒症状が現れる量は?
ニコチンは、ほぼ全ての生物に対して毒性を発揮する[1]ので、殺虫などの用途でも使用されています。当然、犬たちにとっても危険な毒物で、摂取すると中毒症状を起こします。
中毒症状は、体重0.5kgに対してニコチン0.5mg-1mgの摂取で発症というのがおおよその目安です[2]。体重5kgの犬なら5mg-10mg摂取で中毒症状が出るということになります。タバコ1本含まれるニコチン含有量は0.1mgから2.3mgですから[3]2本から4本で中毒症状が現れるという計算です。致死量は20mg-100mg[4]と言われています。
吸い殻や吸いさしの誤食には注意
ニコチンはタバコに含まれるほか、シガー、噛みタバコ、ニコチンガム、ニコチンパッチ、スプレー、電子たばこなど、様々なものにも含まれています。
子犬の場合、少量の摂取でも深刻な症状に見舞われますが、死に至るような深刻なケースは実はあまり多くはないそうです。タバコは子犬たちの口に合わないですし、ニコチンは胃から吸収されにくい上、摂取すると短い時間で嘔吐してしまうため、たくさんの量をお腹に入れることは難しいからだそうです[4]。それでも、タバコの代用品(禁煙サポート商品)など美味しそうな匂いや味をつけた商品には注意が必要です。美味しいやつだと間違えて口にしてしまわないよう、扱いには十分注意してください。
吸い殻や吸いさしにも、ニコチンはたっぷり含まれています。吸いさしには全体の25%程度のニコチンが含まれているそうですから、お散歩時には吸い殻や吸いさしを口にしないよう、目を光らせるようにしましょう。
ゴミ箱あさりが上手なワンコさんがいる家庭なら、タバコを捨てたゴミ箱を放置しないように気をつけて。他のゴミと一緒に吸いさしも食べてしまうかもしれません。
ニコチンを食べてしまったらどうなるの?
ニコチンの中毒症状は、摂取後に15分から45分程度で発症します。ニコチンが中枢神経系を刺激して、興奮、震え、聴覚神経障害、協調運動障害、引き攣れ、痙攣などを引き起こします。大量に摂取した場合、前述の症状に加えて落ち込み、麻痺、神経筋接合部の閉塞などが起こり、最悪の場合は死に至ります。
とても恐ろしい症状をたくさん列挙しましたが、タバコを誤食した場合は大部分を嘔吐してしまうので、一度に大量に摂取をしたのでもなければ大事に至ることは多くないとのこと。ただ、ニコチンが毒であることは確かなので、飲み込んだことがわかったらすぐに獣医師さんに相談しましょう。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] ニコチン – Wikipedia
[2] Nicotine Poisoning in Dogs | Vetinfo
[3] 販売中タバコ銘柄 ニコチン・タール量 一覧
[4] Hackendahl, N., Sereda, C., & Volmer, P. A. (2004). The dangers of nicotine ingestion in dogs. VETERINARY MEDICINE-BONNER SPRINGS THEN EDWARDSVILLE-, 99(3), 218-224.
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電子タバコは犬には危険〜英国では子犬の死亡事故も発生、従来型よりも危険との声 | the WOOF
欧米では利用者が急増している電子タバコ。イギリスでは禁煙治療でも使用が許可されており、最近では 内科医師会が電子タバコの使用を勧める報告書が出した というニュースが報じられました。 喫煙者への影響はまだまだ未知数としながらも、従来のたばこに比べると健康被害は少ないと考えられているようです。ただし、犬にとっては従来のたばこ以上に危険なもののようなのです。