犬の夜鳴きや夜中の遠吠え〜その原因と対策

生態・行動
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あなたが犬をどんなに愛していても、毎晩鳴き声をあげられたら、ちょっと参ってしまいますよね。

犬の吠え声は、世界各地の多くの都市で問題になっています。とりわけ夜間の吠え声を苦痛に感じる人は多く、2014年に発表されたニュージーランドで行われた研究によれば、有効回答727のうちの545(75%)が夜の吠え声に悩まされていると回答。他のすべての騒音よりも迷惑に感じられるということが示されました[1]

夜間の吠え声と早起きは、子犬や若い犬だけでなく、老齢犬にいたるまでのすべての犬に共通する問題です。自身のためだけでなく地域のためにも、なるべく早期に解決したいものです。

[icon name=”comments” class=”” unprefixed_class=””] この記事の監修者

WanByWan 三井 惇(みつい じゅん)CPDT-KA

1997年ボーダー・コリーを迎えてからドッグトレーニングの面白さを知り、ドッグダンスを始めてから、ドッグダンスを広めたいとドッグトレーニングのインストラクターになる。
現在は二頭のボーダー・コリーと共に、一般家庭の愛犬のトレーニングやドッグダンスのレッスンに携わる。本人も競技者としてオビディエンス競技やドッグダンスコンペに出没中。

この記事には、こんなことが書いてあるよ!

なぜ犬は夜に吠えるのか?

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image by Seregraff / Shutterstock

ほかの問題行動と同様に、犬が夜に吠える理由も実に多岐にわたります。

  • 排泄(オシッコ)がしたい
  • 孤独・寂しさ
  • 不審な音・侵入者の認識
  • 病気/痛み
  • 老年/認知症
  • 退屈
  • 不安、分離不安
  • 夜通し眠ることに慣れていない(幼犬)

問題の解決方法は原因によって異なります。

もし、愛犬がお迎えしたばかりの幼い犬である場合は、寂しさや不安に加えて夜通し眠ることに慣れていないのかもしれません。「お迎えしたばかりの子犬の夜鳴きを止める(内部リンク)」をお読みください。

もし、愛犬がお迎えして日が経っているか、成犬・老犬の場合は、「夜鳴きを止めるための3つのステップ(内部リンク)」を読んでください。最初に子犬を見てみましょう。

お迎えしたばかりの子犬の夜鳴きを止める

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image by Sigma_S / Shutterstock

お迎えしたばかりの子犬は特別な存在です。幼い彼らの膀胱は未発達で、頻繁にオシッコをする必要があります。また、お迎えしたばかりの最初の数日は”ホームシック”や新しい環境への不安があるでしょう。

お迎えしたばかりの子犬が夜じゅう鳴きわめいているのを聞くのは、とても苦しいものです。とくに犬の飼育がはじめての場合は、この夜鳴き地獄が永遠に続くように思えて絶望的な気持ちになるかもしれません。さらに、彼らがただ注意をひきたくて鳴いているのか、本当に苦しくて鳴いているのかの判断は難しく、よく言われる「無視する」というアドバイスに従って良いかどうかも迷ってしまうと思います。

オススメしたい最初のステップは、獣医師に相談することです。尿路感染症や疼痛などの体の問題や、分離不安などの心の問題を抱えているなら、「無視する」のではなく治療が必要です。また、愛犬の年齢ではオシッコをどのくらい我慢できるのか、一晩オシッコを我慢できるほどに膀胱の機能が発達するのはいつ頃になるのかを確認するのも良いでしょう。

一方、健康上の問題がなければ、鳴き声をあげても良いことは起こらない、夜はまとまった時間寝るものであることを覚えてもらわなければなりません。

  • 鳴き声がしても無視して反応しないようにしましょう
  • 寝る場所を快適で心が落ち着く場所にしましょう。柔らかなベッドや暖かい毛布、飼い主さんの匂いのついたものを入れるなど、工夫をしてみましょう
  • 静かで落ち着ける場所に寝床を用意しましょう
  • アナログ時計をハウスのそばに置いてみましょう
三井さんコメント

アナログ時計は、「カチカチとリズムを刻む音が親犬の心音のように聞こえて、犬を安心させられる」と言われることがあります。タオルなどにくるんで、ベッドの横などに置いてみると良いかもしれません。

夜鳴きを止めるための3つのステップ

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image by Nikolai Tsvetkov / Shutterstock

普段は大人しく寝ている犬が、突然ワンワンと吠えたのならば、とにかくはじめは家と家族の安全を確認しましょう。賢くて警戒心の強い愛犬が、天災や泥棒や火事などを警告してくれているのかもしれません。

家や家族に問題がなく、「なんでかわからないけど夜中に鳴く」という状態が続くなら、ステップ1は子犬と同じく「健康であることを確認する」というものです。

・ステップ1:獣医師に相談

これまで問題なく寝ていられた犬が夜鳴きをはじめた場合、心配すべきは「体調が悪くないか?」ということです。

尿路感染や老化によって、頻繁にトイレに行く必要が出てきたのかもしれません。老齢の場合は認知症の兆候である可能性も考えられます。2009年に発表された研究によれば、飼い主に対して行われた調査回答(957)の分析からは、平均11〜12歳の犬の14.2%に認知機能低下の兆候がみられることが示されました[2]

夜鳴きの原因が健康問題にある場合は、治療によって解決することが往往にしてあります

・ステップ2:考えられる原因を見つけ出す

愛犬が健康だということが確認できたら、それ以外の夜鳴きの原因を探らなければなりません。

夜中にネズミが活動しはじめるのかもしれませんし、隣人が夜のシフトに入ったのが気に食わないのかもしれません。隣人のスケジュールを変えるのは不可能ですが、害獣を駆除したり、寝床の場所を変えたりするのは可能です。夜鳴きが始まった頃に何か変化がなかったか、丁寧に振り返ってみましょう。ヒントが見つかるかもしれません。

・ステップ3:運動やトレーニングを増やす

ステップ2の「考えられる原因を見つけ出す」ことは、根本的な解決につながる重要なものですが、多くの問題は原因を特定するのは難しく、犬は特別な原因なく鳴いているということもあるから厄介です。

この場合、原因を探し続けるのと並行して、運動や訓練を増やして心地よく疲労させ、夜は眠るように導くことを試してみるのもオススメです。頭や体を使うことで夜はゆっくり休みたいと思うかもしれませんし、退屈や不安が解消されて長時間休めるようになるかもしれません。

”夜鳴きストップ”に挑む場合の注意事項

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image by Derek Arguello / unsplash

・夜中に犬を構わない

夜鳴き対策は、日中に行うようにしましょう。夜中にワンワン吠える犬に「どうしたの?痛いの?」「怖かったねぇ」などと声をかけたり、ベッドに連れていったりすれば、犬は夜中にワンワン仕事にやりがいをみいだしてしまいます。どこにも異変はなく、犬も健康であることが確認できたら、犬のことは無視してベッドに戻りましょう。

・吠えても犬を叱らない・罰しない

叱ったり叩いたり、犬を罰することは、根本的な解決にはつながりません。問題となっている行動が引っ込む可能性はありますが、不安や恐怖から別の問題を引き起こすことがあることは、いくつかの研究によりわかっています。絶対に叱ったり罰したりすることはやめましょう。

・「分離不安だ」と決めつけない

分離不安とは、「愛着のある人物から離れることへの不安により引き起こされる反応のこと」ですが、夜中だけに起こるということはありません。日中は問題なく過ごしているのに、夜だけクンクン鳴くのであれば、分離不安ではなくほかの問題がこれを引き起こしていると思われます。「分離不安だ」と決めつけて、ほかの問題(特に健康問題)を無視しないように気をつけましょう。

・安易に他の犬を迎え入れない

「犬が鳴くのは寂しいから」と考えるのは間違っていませんが、「兄弟姉妹がいれば解決するはず」と考えるのは誤りかもしれません。実際、複数の犬を飼っている世帯の方が、吠えの問題が多いと言われています。

・ご近所さんを放置しない

「夜中に鳴く犬に反応しない」という方法を選ぶ場合は、ご近所に与える影響も考慮し、先んじて挨拶をしておきましょう。


犬の行動を変えていくのは、とにかく時間と忍耐を必要とするものです。ワンワンと鳴かれると焦ってしまうかもしれませんが、できるだけ焦ることなく、取り組んでみてください。難しいな、辛いなと思ったときは、ぜひ専門家に相談を。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Flint, E. L., Minot, E. O., Perry, P. E., & Stafford, K. J. (2014). A survey of public attitudes towards barking dogs in New Zealand. New Zealand veterinary journal, 62(6), 321-327.
[2] Salvin, H. E., McGreevy, P. D., Sachdev, P. S., & Valenzuela, M. J. (2010). Under diagnosis of canine cognitive dysfunction: a cross-sectional survey of older companion dogs. The Veterinary Journal, 184(3), 277-281.

Featured image creditPixHound/ shutterstock

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