犬の中には、寒さにつよ〜い犬がいます。
たとえばこちらはサモエドのEnzoさんは、リアル雪だるま状態になっても、顔色ひとつ変えません(毛の色しかわからないけど)。
He only aroos when he misses me or is sad. After leaving for a few hours I knew he’d be missing me. Guess I was right! #howlingdog #samoyed #aroos pic.twitter.com/kiVOOpXnQP
— Enzo the samoyed (@Fluffyface_enzo) 2018年6月14日
飼い主さんの「寒いからおうちに入りなさい」の声も無視。雪につかってお外の寒さを楽しんでいます。
マイナス50度でも平気な北方の犬
原産地が北方の、いわゆる”北方犬種”は、寒い中でも暖かさを維持できるように進化してきました。彼らは厚いスタンド・オフ・コート(立ち上がるように生える毛[1])、小さくて、ぴんと立った耳、そしてずんぐりとしたたくましい体型といった特徴をもちます。犬種でいえば、シベリアン・ハスキー、アラスカン・マラミュート、サモエドなどです。
これらの犬種は、気温計がマイナスを指してもへっちゃらで、犬によってはむしろ落ち着いて幸せに見えるといいます。1973年のイディタロッド(アラスカ州、犬ぞりレースで有名)で気温が華氏マイナス130度を記録しましたが、文句を言ったのはマッシャーだけ。犬からの不平不満はあがらなかったそうです。
寒さに強い犬種の中にも、ものすごく強い犬と、普通に強い犬がいるようです。dogsterによれば、マッシャーは犬を選ぶ際に「一晩雪の中で眠らせること」で、犬の寒さ耐性をお試しするのだそう。朝までに周りの雪を溶かす犬(melter:雪溶かし犬)は、身体からの熱を放射しすぎるために寒さから影響受けやすいとされ、返却されてしまうのだといいます。
”北方犬種”は複数の防寒機能を備えている
犬は、皮膚からの放熱、口や鼻などからの水分の蒸発(気化熱の放射)、空気の対流、接触による熱伝導の4つの機能を使い、体温を調節します。
・ずんぐり体型が熱を逃がさない
寒さに強い犬には、単位体重ごとの表面積が小さいという特徴があります。
身体の熱を保つためには、身体で多くの熱を生み出し、逃げ出す熱を最小限に抑える必要があります。皮膚の面積が大きければ大きいほど熱は逃げてしまいますが、体積が大きくたくさんの熱を生み出すことができれば、体温は維持できるというわけです。
もっとも効率よく熱を保持することができるのは、単位体重あたりの放熱が少ないワンコです。北方で生き残るためには、ずんぐりがっしりとした厚めの体型であることが必要なのです。
・ダブルコートが熱を逃がさない
脂肪も放熱を防ぐ役割を果たしますが、だからといってたくさんの脂肪をまとえば、寒さで死ぬ前に他の肉食動物に食べられてしまうでしょう。
軽くてあったかといえば、やっぱり毛皮。北方犬種は分厚い被毛におおわれています。寒さに強いといわれる犬のほとんどは、太くてしっかりしたオーバーコート(上毛)と、柔らかくて保温・保湿の役割を果たすアンダーコートからなるダブルコートを有しています。
北方犬種の被毛は、熱を逃がさないための仕様がいくつか組み込まれています。上毛には耐水性があって雪が染み込むのを防いでくれますし、下毛は細かく波打って緻密な絶縁層を形成しています。被毛は”stand-off(スタンドオフ)”と呼ばれる立ち上がった毛で、これも放熱を抑えるうえで役立ちます。毛の生える角度は北方犬種で45度。毛が身体に沿うような他の犬種の30度未満とくらべて格段に毛をたてて、放熱を防いでいるのです。
・血液のはたらきで熱を逃がさない
AKCによれば、動脈と静脈が非常に接近していることも、放熱を防ぐうえでおおいに役立っているのだそう。
酸素をたっぷり含んだ暖かな動脈が静脈のすぐ隣を流れることで、暖かい血液が冷たい血液に熱を与え、犬の脚などの露出部分の熱の損失を防ぐうえで役立っているというのです。
犬は寒さを逃さないよう工夫する
犬たちは体温をたもつため、身体を上手に使っています。
たとえば、身体をくるりんぱと丸めて寝るのは、皮膚からの放熱を減らすためであり、尻尾の中に鼻をつっこむのは、湿った鼻を保護し呼吸による暖かい空気を閉じ込めるためだと言われます。
また、呼吸による熱の損失を最小限におさえる工夫もあるようです。舌を出してハァハァすること(パンティング)は、熱損失の原因になりますので、寒い時期は口の開き具合や舌の位置を調整することで熱の損失を制御していることが考えられます。上手に鼻呼吸をすることで、身体の熱を保っているのかもしれません。
北方犬種の被毛は、犬を寒さから守るものですが、実は暑さからも守るものでもあるのです。彼らの被毛は、熱を通さない絶縁体としての役割を果たすので、夏の暑さも犬の身体を守ってくれます。
暑そうだからといって、毛を全部剃ってしまうのは実は大きな間違いなのです。逆に暑さを感じるようになってしまいますので、ご注意を。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] List of Dog Terms
[2] The Samoyed’s Coat Can Handle a Range of Temperatures – American Kennel Club