疾患診断ができる呼気分析装置とイヌの嗅覚の関係とは 〜Optical “Dog’s nose”

生態・行動
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犬が嗅覚を用いて病気を探知するという話は、聞いたことがあるかと思います。

イヌたちは、匂い分子をヒトの数十倍ともいわれる匂い受容体で感知しており、それ故にこうした高い検出感度を誇っているのです[1]

南オーストラリア州にあるアデレード大学(The University of Adelaide)では、分子を捕捉してその内容を弾き出すという、「イヌのような」検査装置の開発がすすんでいます[2]


この検査装置は、特殊なレーザーを用いて気体サンプルに含まれる分子の内容をはじき出すもので、糖尿病、感染症、また将来的には癌各種などの疾患が呼気で検出できるというものです。呼気の分析ですから身体への侵襲がなく、さらに迅速に分析ができるのだといいます。

このシステムは、犬のように様々な匂いをかぎわけるというより、光を当ててサンプルに存在する様々な分子を「検出」する仕組みです。たとえばレントゲンやMRIのように視覚に頼る分析を人間ぽいとすれば、この分子によって情報を得ようとする仕組みが「イヌっぽい」のでしょうか。アデレード大学のプレスリリースでは、「光学的なイヌの鼻(optical “dog’s nose”)などと形容されています。

分子は、体内の代謝過程における副産物で、体に不具合が起きると分子のレベルは変化します。各分子は固有の指紋のようなものをもっていて(異なる周波数で光を吸収する)、この光吸収パターンを装置を使って正確かつ迅速に検出するのです。この方法を使って、「肺がん、食道がん、喘息、糖尿病などの疾患を、その症状が出る前に検出できる。すでにこうした研究結果が世界中で報告されている」と、オーストラリア研究評議会(ARC)のリサーチフェローであるオースティ博士(James Anstie)は説明しています。

一方でワンコさんはといえば、前述のとおり、匂い分子を嗅上皮(olfactory epitherium)という匂い受容体で感知します。イヌの嗅上皮の面積は平均してヒトの数十倍にも達するのだそうで、匂い分子をたくさんキャッチします。これだけでなくイヌは鋤鼻器(じょうびき、vomeronasal organ)という2番目の嗅覚系が備わっていて、これが特殊な嗅覚信号を感知するのだとか。こうした高機能なお鼻をもっているから、分子レベルでの変化が起こったとき「病気みたいだワワワワン!」と知らせてくれることができるのですね。


最新鋭の装置にも負けない高機能なワンコの嗅覚。すごいなあと感心してしまいますが、一方で「なぜキミはウンチやおしっこのニオイを、そんなに近くで嗅げるのだ?」という疑問が、さらに膨らんでしまいます。

臭くないんですか?


[1] 森裕司, 竹内ゆかり, & 内田佳子. (2012). 『動物行動学』. 株式会社インターズー.
[2] Optical ‘dog’s nose’ may hold key to breath analysis

 

Featured image by Yurumi via shutterstock

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