野菜は、犬が生き延びるために必要な食べ物ではありません。しかし、ほとんどの野菜は犬に害を及さず、むしろ栄養の供給源になるものです。

犬の食事に野菜を追加すべきか？

野菜は、犬が絶対に食べなければならないものではありません。ですから、人間の子供に言うように「野菜食べなさ〜い」と言う必要はありません。定められた基準をクリアするドッグフードなら、犬が必要とする栄養素の全てがバランスよく配合されています。

だからといって、野菜を加えるのがダメということもありません。特定の栄養素を含む野菜を加えることで、個別の犬のお悩みを解消することもできます。野菜には、歯や歯茎の健康改善、息をさわやかにする効果、そして免疫システムの改善、被毛をピカピカにする効果があります。また、野菜の追加によって、いつもと異なる味や匂い、そして食感を楽しむことができます。さらに低カロリーで繊維質の多い野菜はダイエットを必要とする犬の強い味方です。

犬は野菜を食べても大丈夫か？

「犬は野菜を食べても大丈夫か？」という質問への答えは、イエスでありノーでもあります。ほとんどの野菜は犬にも安全ですが、野菜の中には玉ねぎのように犬の中毒症状を起こさせるものもあります。また、個体の体質や健康状態によっては、特定の食べ物にアレルギー反応を見せる犬もいます。

犬は肉食性に近い雑食動物（omnivore）で[1]、様々なものを消化し代謝することができる生き物です。このことを肉食動物である猫や、草食動物である牛や馬と比較してみてみましょう。

歯には、動物の食性がよく反映されます。草食動物は平坦な歯が多く、植物を噛んだりすり潰して胃に送り込みます。一方、我らが犬は鋭く隆起した歯をもっており、噛み砕くのが得意ではありません。また唾液には、消化の役にたつ訳ではなく、単に食べ物を胃に送り込む潤滑油のような役割のみを果たします。

胃は食べ物を溶かして液化させる場所です。犬の胃は草食動物に比べて小さく、野菜は十分に溶かされないままに胃を通過します。植物が胃を通過するとき、含まれるセルロース（硬質な細胞壁）が胃のpH値に影響するすることもあります。

犬の腸は、溶けた食物が消化される場所です。しかし、消化は食べ物が溶解しているときに十分に行われるものですから、犬が食べた野菜は消化されずに通過することが多いのです。それでも、犬の腸管は猫より 1.5倍長く、猫に比べれば繊維質の発酵消化ができる余地は大きいようです。

犬は遠い昔からの進化の中で、幅広い代謝能力や合成能力を身につけ雑食化し、野菜も消化し代謝できるようになった生き物です。しかし身体の構造には肉食に近いところもあるのです。そのため、野菜を大量に食べると消化や吸収、代謝が追いつかず、身体に不調が起こるのです。

野菜を食べるメリットとリスク

野菜を食べるメリット

• ダイエット中の犬には、低カロリーで繊維質豊富な野菜トッピングは、とてもおすすめです。少量でも満腹感がありますし、便通改善にも効果があります
• 野菜は、酸性に偏った犬の身体の正常な状態に引き戻す効果があります。より多くの健康効果を目指して野菜を追加しようとするなら、獣医師に相談した上で行いましょう
• ほとんどの野菜は素晴らしい水の供給源です。あまり水を飲まない犬や、暑い時期で脱水しがちならば、野菜の追加は効果ありです
• 最後に、飼い主側に「私が食べるものをシェアできた！」という満足感をもたらしてくれるのも、大きなメリットです

野菜食に潜むリスク

• 犬は植物に含まれるセルロース（硬質の細胞壁）を消化する能力をもっていません。そのため、犬に与えるときはすり潰しや調理済みが望ましいと言われます。窒息の危険を減らす上ではカットは有効ですが、栄養素を取り入れるという観点ではすり潰す方が良いです
• 野菜を急激に大量に追加することは、消化器の問題を引き起こす原因になります。犬の様子を確認しながら、ゆっくりと追加しましょう。また一度に様々な種類の野菜を追加するのではなく、１つの野菜の追加に留めましょう。一度に色々試してしまうと、問題が起きた場合に原因の特定が困難になります
• 野菜に塩やコショウ、その他のスパイスが付加されていると、犬の健康を害する恐れがあります。必ず人間の食事とは別に準備しましょう
• アレルギー反応は、常にどの犬の飼い主も備えなければならないリスクです。他の犬に問題がなくても、うちの犬が反応することはありますし、以前は大丈夫だったからといって今もOKであるとは限りません

犬はベジタリアンになれるのか？

ビーガンなどを推進する人の中には、犬もベジタリアンになることが不可能ではないという人もいます[2]。肉に含まれる栄養素のほとんどが、他の食べ物を通じて得るか、犬の体内で合成できるというのが菜食を可能と言う根拠になっているようです。

菜食主義の犬を育てることは、不可能ではないかもしれませんが、肉を食べさせずに犬の健康を維持する栄養についての正しい知識をもち、厳格な食事管理を行うことが必要なので、現実にはかなり難しいことのようです。また、日常的に専門的な栄養バランスのチェックを行うべきですので、犬の医療費もかなり高額なものになるでしょう。

野菜は犬に必須の食べ物ではありませんが、良い効果が期待できる食べ物です。どの野菜があなたの犬にぴったりかを知ることは、愛犬の生活の質を大きく改善することに繋がります。ぜひワンコと共に、相性抜群の野菜を探してみてください。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] ペット栄養管理学テキストブック（2014）日本ペット栄養学会, アドスリー
[2] Can Dogs Be Vegetarian? | petMD