犬の睡眠障害〜愛犬もゆっくり眠れないことに悩んでいるかも

健康管理
この記事をシェアする

「夢遊病の犬、ジャンプに失敗」などのタイトルがついた動画を見たことはありませんか?眠っている犬が突然走り始め、ジャンプして壁にぶつかるといった内容です。

見ている分には面白い動画かもしれません。そして、もしかしたら犬は走り回る夢を見ていたのかもしれません。でも、もしかしたらこのワンコは、睡眠障害の兆候としてこうした行動を示したのかもしれないのです。

犬の睡眠障害

2077 1 thewoof

image by mgbutterfly / Flickr

睡眠障害とは、睡眠になんらかの問題がある状態のこと。犬だと例えば、夜間に鳴いたり吠えたり、頻繁に目を覚ましたり、日中の動作が鈍くなったり、いつもは簡単にできるタスクができなくなったりします。

睡眠障害の原因は、加齢や精神的または身体的な病気など様々なものが考えられます。

また、この影響は多岐にわたって出現します。睡眠不足はストレスホルモンの蓄積の原因となる可能性があるため、攻撃的になったり、行動上の問題を引き起こすことがあります。また睡眠不足により犬の免疫系を弱まり、感染のリスクが高まる可能性もあります。

ここでは、犬に発生する可能性がある4つの睡眠障害をご紹介します。

ナルコレプシーとカタプレキシー

ナルコレプシー(narcolepsy)とは、「日中の過度の眠気、情動脱力発作(カタプレキシー:cataplexy)ならびにレム睡眠関連障害を主徴とする慢性の睡眠疾患[1]」のこと。食事や遊びなどの興奮時にカタプレキシーを呈し、睡眠時間の短縮や分断化などの症状が現れるものです。

ナルコレプシーのある犬では、突然筋肉が弛緩し、全ての動作が一時的に止まって急速な眼球運動がみられます。発作は数秒から30分続くことがあり、大きな音やナデナデなどの外部刺激に応答して通常の状態に戻ってきます。原因は、神経ペプチドであるヒポクレチン/オレキシンの神経伝達障害であることが近年の研究で明らかになっています。ドーベルマン、プードル、ラブラドール・レトリバーは遺伝的に発生すると言われます。

ナルコレプシーは生命を脅かすものでも痛いものでもありませんが、生涯にわたり症状が続くものです。薬物療法と日常のケアにより、犬の生活の質の向上をはかることができます。

不眠症

不眠症(insomnia)は犬ではまれで、何日も眠ることができない犬は、別の健康問題を抱えている可能性があると考えた方が良いでしょう。

関節炎による痛みやノミ・ダニによるかゆみ、腎臓疾患や糖尿病による頻尿は、犬の不眠を引き起こす原因となり得ます。身体的な問題のほか、不安やストレスなどの心の状態も、不眠につながる可能性があります。高齢の犬では、脳の変質(認知機能障害など)が正常な睡眠パターンを崩壊させ、不眠症を引き起こす恐れもあります。

犬に不眠の症状がみられたら、獣医師と共に根本的な問題を特定しましょう。薬物療法のほか、適切な食事やサプリメントの追加も、睡眠サイクルを正常に戻す上で効果があります。運動機能に問題がないのであれば、昼間の活動を増やしたり、就寝前に遊び時間をつくるのも良いでしょう。ベッドを新しいものに変えるなど、環境の整備によっても改善することがあります。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症(Sleep apnea syndrome:SAS)とは寝ている間に何回も呼吸が止まる病気です。一般的に犬ではまれですが、肥満の犬やブルドッグ、ボストンテリア、パグのような”鼻ぺちゃ犬”ではよく見られます。呼吸の中断は10〜20秒続くことがあり、頻繁に起こると犬は慢性の睡眠不足に陥り、日中ぼんやりしたり他の健康上の問題を引き起こす可能性もあります。

犬の睡眠時無呼吸症候群の症状には、大きないびきの他、呼吸と呼吸の間に長い休止がみられたり、睡眠途中に目を覚ましたときの息切れなどがあります。一晩に100回ほど呼吸が止まることもあり、あまり頻繁に起こる場合は、血中酸素濃度が低下し犬の身体にも悪影響を及ぼす恐れがあります。治療をしないままの状態は、生命を脅かす恐れもあります。犬が大きないびきをかいているいるときは、できるだけ早く獣医師の治療を受けてください。

※ 動画は獣医師に睡眠時無呼吸症と診断されたワンコ

レム睡眠行動障害

寝ている愛犬が走るような動作をしたり、吠えたりするなら、レム睡眠行動障害(REM Behavior Disorder)の可能性があります。多くの犬では、睡眠中の鳴き声や咆哮、軽い痙攣、あるいは犬かきなどが一般的ですが、一部には激しい震えや暴走、あるいは何かに攻撃を仕掛けるなど暴力的なものになることもあります。

レム睡眠行動障害による行動は、発作とは異なり介入により中断することができます。犬は、混乱することなく自然に覚醒します。薬物(クロナゼパム、チロキシンまたはメラトニンなど)によって睡眠中の身体活動を減少させることができます。

原因は現時点では不明ですが、先天性の神経学的状態と関連して起こる可能性があると言われています。発作や行動障害のある犬は、他の病気が原因になって症状がみられることもあれば、睡眠障害から他の病気に発展する可能性もあるため、できるだけ早く獣医師に診断を依頼しましょう。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] 戸野倉雅美, 田熊大祐, 島田雅美, 馬場亮, 井原麻里子, 杉本洋太, … & 藤田桂一. (2007). イヌ・ナルコレプシーにおける各種抗カタプレキシー薬による治療効果. 動物臨床医学, 16(3), 71-76.

犬の睡眠時間〜眠りには何が影響するの?よく寝るのはどの犬種? | the WOOF イヌメディア

日本人の平均睡眠時間は7.7時間。これに対し健康な成犬は12〜14時間眠ります。

the WOOF イヌメディア > すべての記事 > イヌを育てる > 健康管理 > 犬の睡眠障害〜愛犬もゆっくり眠れないことに悩んでいるかも

暮らしに役立つイヌ情報が満載の「theWOOFニュースレター」を今すぐ無料購読しよう!

もっと見る
ページトップへ