さて、前回に引き続き、犬の受動喫煙のリスクについてお話しします。

受動喫煙が犬たちの健康に悪影響を及ぼすことはは、前回お伝えしたとおり、タバコに含まれる有害物質は犬たちにの体に悪さをし、呼吸器系の障害や嘔吐・下痢などを引き起こします。

そして、恐ろしいのが受動喫煙が肺がんや鼻腔がんを引き起こすこと。がんになった犬たちは、痛みなど様々な症状に苦しめられます。

マズルの短い犬は肺がんになりやすい

コロラド州立大学のReif教授率いるグループは、喫煙家庭で暮らす犬の肺がんリスクが高まるのかを調査しました。喫煙者がいる家庭のペット犬のうち、51匹は肺がんに、83匹は他の癌が見つかったそうです。この調査では、喫煙環境で暮らすペット犬は肺がんリスクが60％程度高いとしています（1.6倍高い）[1]。

興味深いのは、犬の種類によってどの種類のがんに罹りやすいかが異なるという点です。正確には、犬の種類というよりマズルの形です。1998年に行われた研究では、喫煙者がいる家庭で暮らす犬のうち、マズルが短い犬（パグやブルドッグなど）や中程度の長さの犬（ラブラドール・レトリバーなど）には肺がんになる率が高いことが示されました。マズルが短いために、発がん物質が鼻腔に留まる肺まで到達してしまうために、肺がんリスクが高まるのではないかと言われています。

ちなみに、鳥も肺がんや肺炎になるリスクを有しているそうです。彼らは呼吸器系が敏感なため、空気の汚染に過敏に反応してしまうのだそうです。

マズルの長い犬は鼻腔がんになりやすい

それでは発がん性物質を鼻口部で受け止められる、マズルの長い犬たちは安全なのでしょうか。残念ながら受け止めた鼻腔が腫瘍に侵されるリスクが高いそうです。

前出のReif教授のグループが行った481匹の犬を対象とした調査では、喫煙環境で暮らす長いマズルを持つ犬（グレイハウンドやコリーなど）は、非喫煙環境にいる犬に比べて約2倍も鼻腔がんリスクが高いことがわかりました。これは既に述べた通り、鼻口部が異物を絡め取るために発がん性物質が滞留してしまうからだと説明されています。

小型犬はより大きな健康リスクにさらされている

もちろん、犬のサイズも影響します。喫煙者と緊密な時間を過ごす小型犬は、有害物質からの影響を大きく受けるそうです[1]。体の小さな犬たちは、いわば生まれ落ちたばかりの幼児のようなもの。小さな体で有害物質を受け止めてしまうので、病気にもかかりやすいのです。

飼い主である私たちにできること。それは犬たちを、タバコの煙から守ってあげることです。レストランや公園でも、喫煙者のそばから離れるようにしましょう。本気で犬たちの健康寿命を延ばしてあげたい飼い主さんなら、やっぱりタバコはやめた方が良さそうです。ちょっと大変かもしれませんけれどね。

[1] Reif, J. S., Dunn, K., Ogilvie, G. K., & Harris, C. K. (1992). Passive smoking and canine lung cancer risk. American journal of epidemiology, 135(3), 234-239.
[2] Reif, J. S., Bruns, C., & Lower, K. S. (1998). Cancer of the nasal cavity and paranasal sinuses and exposure to environmental tobacco smoke in pet dogs. American journal of epidemiology, 147(5), 488-492.

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