犬の発達ステージ〜子犬はどのように成長し成熟期を迎えるのか

幼犬・子犬
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犬の成長は早いもの。階段も怖くて降りられなかったコが、次の日には3段飛ばしでジャンプ!なんてことも珍しくはありません。

子犬はどのように成長していくのでしょう?子犬から大人になるのは、一体いつのことなのでしょう?

子犬から成犬へ

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image by Xalion Malik / Flickr

犬の成長の道筋を知ることは、健康で心の強い元気な犬を育てるうえでとても大切です。

犬は、次のような発達ステージを経て一生を終えます。

  1. 出生前期
  2. 新生子期
  3. 移行期
  4. 社会化期(感受期)
  5. 若年期
  6. 成熟期から高齢期

誕生から性成熟に達するまでの発達ステージの概念は、米国のジャクソン研究所で行われたイヌの行動発達に関する研究[1]により示された新生子期、移行期、社会化期、若年期の4分類が一般的に使われます。かつては、犬の行動や発達を考察するうえでは、誕生から成熟までが重要とされていましたが、最近では行動発達には出生前の時期が重要であることや成熟期を迎えても行動や好みに修正が加えられることがわかってきたことから、出生前や高齢期も重要だと考えられるようになっています。

そこでここでは犬の一生を、6ステージと分類しています。ただし、以下の説明においては出生前期は省き、新生子期、移行期、社会化期(感受期)、若年期、成熟期から高齢期のみ記述しています。

新生児期

生まれてからの約2週間を、新生子期(neonatal period)といいます。この時期の子犬は無力で、母親に完全に頼っており、睡眠と食事にほとんどの時間を費やします。目や耳は閉じたままで、視覚や聴覚は未発達ですが、触覚、体温感覚、味覚、嗅覚は働いており、刺激にも反応します。

ゆっくりと這うことはできますが、立って自分の体重を支えることはできません。しかし頭を持ち上げ、左右に揺らし母犬の乳首を探すことはできます。

この最初の2週間での経験は、その後の行動(成長後のストレス抵抗性や情動の安定性、学習能力)に影響を与えると言われています。

10-14日齢で目や外耳道が開きます。ただし、移行期までは視覚・聴覚刺激への反応はあまりありません。

移行期

生後2〜3週間までの期間を、移行期(transition period)といいます。18〜20日になると、視覚・聴覚刺激への反応をみせはじめます。母犬による刺激がなくても、自力での排泄が可能になるのもこの時期です。行動的にも、尻尾を振ったり兄弟犬と遊び始めるなど子犬らしさを見せ始めるようになります。

社会化期(感受期)

移行期に続く生後3〜12週間くらいまでの時期を、社会化期(socialization period)といいます。子犬の社会化にとって非常に重要で、行動学の分野では非常に強い関心を寄せられてきた時期です。

現在も社会化への注目度や関心度は変わりませんが、呼び方は社会化期に代わり感受期(sensitive period)が使われることも多くなってきています。

社会化期が定義された背景には、社会化には限られた重要な時期(臨界期)があり、犬はこの期間にさらされた刺激によって長期にわたり不可逆的な影響を受けるとする考え方がありました(すなわち、この期間に適切なトレーニングをしないと取り返しがつかないと考えられていた)。

しかしその後の研究から、この考え方が必ずしも正しいわけではないことがわかってきました。たとえばかつては、「社会化期とは6〜8週齢のころ」などのように時期が明言されていましたが、現在は犬種や個体によって差があるという見解が一般的です。発達において重要な時期が存在することは間違いありませんが、時間的な区切りをつけることが難しいというのです。また、この期間に得た行動パターンや選好も、かつては不可逆とされてきましたが、現在では後に修正できることもわかってきました。このように「後になっても行動の修正はできる」と考える研究者などは、感受期を積極的に使う傾向にあるようです。

名称の問題はさておき、犬の社会化が重要なことや、3〜12週間の時期が心と身体の発達をみる上で重要な時期であることには変わりありません。この時期には感覚機能や運動機能が著しく発達します。大きな音に驚くような反応を見せたり、立って歩き始めたりします。吠え声をあげるようになるのも、この時期です。可愛い歯も生え始めます。

6〜8週間で離乳をし、1日に4〜5回の食事を楽しむようになります。12週くらいまでに、食事の回数を1日3回に減らすことができます。

社会的スキルも大きく発達します。兄弟姉妹と前脚を使ったり噛んだりの遊びの中で、愛着関係が形成されます。愛着の対象は自分の種に限らず、モノや人間にも広がりますので、多くの人や物、場所や状況に出会えるような機会を作ることが不可欠です。予防接種のために初めて動物病院を訪れるのも、この期間です。

若年期

離乳から性成熟までの期間を、若年期(juvenile period)といいます。犬種や個体による違いはありますが、犬はだいたい6〜12ヶ月齢までに性成熟に到ります。この時期は、すべての感覚器官が完全に発達し、成長率は遅くなります。歯の生え変わりがあるのはこの時期で、だいたい7ヶ月齢で大人の歯が乳歯に取ってかわります。

この時期に大切なことは、社会化期と同様の熱意を持って、子犬を多くの人や物、そして環境に触れさせてあげることです。また、元気な体を作るため、運動能力を磨くため、正常な行動発達を促すために、犬同士の遊びの機会を持つことは重要です。子犬たちは遊びを通じて、社会相互関係を築きそこで過ごす上でのルールや、安全に遊ぶこと(噛む強さの抑制)を学びます。

性成熟により、子犬は身体の変化と行動の変化を経験します。メスではヒートの始まりがあったり、オスでは他の犬に異常な関心を持ったり攻撃的になったりで飼い主を手こずらせる時期です。飼い主にとっては、去勢や避妊についての考えを固めるのに良い時期でもあります。

成熟期から高齢期

性成熟を迎えてから高齢期そして死に至るまでの期間です[1]

犬はだいたい1歳を迎える頃までには性成熟を迎えますが、これ以降も身体や心の成長は続きます。身体の成長が止まり、気質にも落ち着きを見せるようになる時期は、犬種によっても大きく異なります。概ね1〜2歳の間であると考えて良いでしょう。

栄養の観点からはこの時期は、寿命の半分の年を境に”維持期(成犬期)”と”老齢期(老犬期)”に分けて考えられることが多いです。この区切りは犬種や個体により異なるもので、「いつ」とは言いづらいものですが、よくも悪くも落ち着きを見せるようになったと感じたら、食事を含めた生活全般を見直すと良いでしょう。

かつては、成犬や老犬は行動の修正や新しいことを覚えることはできないと言われていましたが、今は犬のシニアも元気です。時間はかかるかもしれませんが、苦手や恐怖を克服することも、新しいトリックを覚えることも不可能ではありません。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] 獣医学教育モデル・コア・カリキュラム準拠 動物行動学(2012)、森 裕司, 武内ゆかり, 内田佳子, インターズー
[2] Stages Of Puppy Development – Dogtime
[3] Literature Review on the Welfare Implications of Socialization of Puppies & Kittens (2015), AVMA

Featured image creditsunun/ shutterstock

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