犬の中には、見知らぬ人間を極度に恐れるコがいます。見知らぬ人に出くわすと、威嚇し、震え、隠れようとします。
嫌がる犬に無理に挨拶させる必要はありませんが、隠れたり威嚇したりせず、自然に穏やかに通り過ぎることができるようになるに越したことはありません。
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WanByWan 三井 惇(みつい じゅん)CPDT-KA
1997年ボーダー・コリーを迎えてからドッグトレーニングの面白さを知り、ドッグダンスを始めてから、ドッグダンスを広めたいとドッグトレーニングのインストラクターになる。
現在は二頭のボーダー・コリーと共に、一般家庭の愛犬のトレーニングやドッグダンスのレッスンに携わる。本人も競技者としてオビディエンス競技やドッグダンスコンペに出没中。
犬はなぜ見知らぬ人を恐れるのか?
見知らぬ人間を恐れる理由の第一は、社会化の欠如です。虐待の歴史なども考えられますが、Richmond SPCAは「(虐待の影響は)通常当てはまらなない。ほとんどは単に社会化が足りていない」としています。
生後3週齢〜10週齢ごろの感受期(社会化期や臨界期とほぼ同義)に様々なものを見たり経験したりできなかった犬は、新しいものに遭遇することを恐れる傾向にあります。さまざまな環境で多くのものに触れる期間が青年期まで続くと、新しいものを受容する態度がその犬の性格の一部になりますが、新たな人やものからの前向きな経験が不足する犬は、新たな出会いや体験がストレスになってしまうのです。
犬が恐怖を感じているときに飼い主が無理強いさせることは、問題を悪化させます。あくまでも犬のペースに合わせることが必要です。また、叱ったり罰を与えることもNGです。犬はより恐怖を増大させるか、あるいは恐怖を隠そうとしてしまいます。
犬が見知らぬ人にストレスを感じているサイン
愛犬が以下のようなサインをだしているときは、「怖いよぉ、助けて!」と思っているのかもしれません。
- 視線が定まらない(目が前後に動く)
- あくび
- 唇をなめる
- 暑くもないのにパンティング
- 動きがゆっくりになる
- 耳が横か後ろに倒れる
- 心配げな表情(まゆを寄せる)
- 尻尾が隠れる
- 地面の匂いをかぐ
見知らぬ人への恐怖を和らげる
恐怖の感情を克服するのは、とても時間がかかるものです。
何週間かで克服できる犬もいますが、何ヶ月も何年もかかってしまう犬や、まったく克服できない犬もいます。しかし完全には克服できないとしても、恐怖の度合いが軽減される可能性は残されています。
以下は、見知らぬ人への恐怖心を克服する、あるいは恐怖の度合いを緩和するためのヒントです。
・相手から距離をとる
見知らぬ人が近づいてきたとき、犬が不安や恐怖のサインをみせていたら、とにかく相手から距離をとるようにすることです。犬好きさんでナデナデするために近づいてくる場合は、丁寧にお断りさせてもらいましょう。ただすれ違うだけの場合は、立ち止まって愛犬の注意を自分に向けさせ、相手が通り過ぎるのを待ちましょう。愛犬が上手にアイコンタクトできたら(あるいはお座りできたなら)、たくさん褒めてできればオヤツをあげてもいいでしょう。
・ゆっくり紹介する
愛犬にとって初めての人に紹介する際は、その人物が安全であることを犬自身に確認させる時間をとりましょう。人間側は急な動作や犬との直接のアイコンタクトを避け、犬の方から近づいてくるまでゆったり待ちます。オヤツを持ってもらって「安全なイイヒト」であることをアピールしてもらうのも良いでしょう。犬を撫でてもらう場合は犬が自分から近づいたときのみで、必ず顔の下方からゆっくりと手を伸ばし怖がらせないように注意しましょう(頭の上方から手を伸ばしたり、抱きしめたりするのは恐怖心を増大させます)。
家に呼んだゲストを紹介する際も、じっくり時間をかけて行いましょう。すごくシャイな犬の場合は、他の部屋やクレートで待機させつつゲストの存在に慣れさせる段階を加えても良いでしょう。愛犬がゲストの存在に慣れて落ち着いてきたら、扉を開け、犬の方から挨拶するのを待ちましょう。
・無理強いしない
愛犬が恐怖のサインを出しているときは、どんなことであっても無理強いさせてはなりません。見知らぬ人への恐怖が強くなると、唸ったり吠えたり噛んだりと攻撃行動にエスカレートするおそれがあります。
外で会う場合はリードを緩めて、愛犬の逃げ場を作っておいてあげましょう。
恐れる気持ちがエスカレートすると、攻撃的になってしまうことも考えられます。心配なら動物行動の専門家の助けを借りることも検討し、早めに対策することをおすすめします。
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