犬かき〜ワンコは”漕ぐ”のではなく、水中を”走って”前に進む

サイエンス・リサーチ
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犬の泳ぎ方といえば「犬かき」ですよね!

泳ぎがあまり得意でないコから、水難救助犬としても名高いニューファンドランドまで、犬はみんな四肢をカキカキするスタイルで泳ぎます。

犬は肩関節を回転させることができないため、クロールやバタフライはできないんですね。

「犬かき」とはなんぞや

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image by Gerry Thomasen / Flickr

犬かきとは、「腰をかがめて頭だけ水面から出し、手を交互に掻きながらばた足をすることで前に進む」泳法の一つ(Wikipedia)。英語でもDog paddle(doggy paddle)と呼ばれ、どちらも名前に「犬」がついていますが、犬だけがこの泳法をするわけではありません。四足歩行の哺乳類のほとんどが犬かきで泳ぎます。

ちなみに人間は、動物の様子を観察して、この泳ぎ方を会得したと考えられています。有史以前のエジプトに残された洞窟壁画には、犬かきをする動物の姿が描かれています。

犬はどのように泳ぐのか?

犬がどのように泳ぐのかというテーマは、研究の題材としてそれほど人気はありません。2014年に発表されたFrank Fishによるものが、比較的あたらしく且つまとまったもののようです。

Fishは、犬がどのように水中を漕ぐ(paddle)のかを、水中カメラで撮影し、分析しました(動画参照)。

実験に参加したのは、ヨークシャーテリアからニューファンドランドまでの6犬種、8匹のワンコ。すべて水泳が得意な犬ばかりです。犬たちは、広大で透明な馬用のリハビリプールで水泳を楽しみ、研究者らがこれを毎秒30フレームで撮影し分析したのです。

犬かきはよく、「水中でのトロット」とたとえられます。トロットとは犬の歩き方のひとつで、対角線上にある右前脚と左後脚が前方に移動し、その後に左前脚と右後脚が動くというものです。

しかし、Fishらの分析によれば、水中の犬の脚は厳密にはトロットの動きをしていません。トロットのように対角線上にある脚が緊密に同期するのではなく、より複雑なパターンに従い早く動かしていました。これはトロットというより走りに近い動きでした。

なお、6犬種のすべてが水中では同じ泳ぎ方をしたそうです。陸上では犬は種類や大きさによって走り方が異なりますが、水中ではほとんど変化がみられないことがわかりました。ただし、大型になればなるほど動きは遅くなるという違いはあったそうです。

犬はなぜ”エア犬かき”をするのか?

さて、犬たちの中には水を前にすると”エア犬かき”をしちゃうコがいます。これはなぜなのでしょうか?

残念ながらこの疑問への科学的な答えはありません。あくまでも推測の域は出ませんが、この理由として「反射作用」「パニック」「学習された行動」などが考えられています。

  • 反射作用:犬を水に入れるために抱き上げたとき、脚がブラブラして安定感がないことによる反射的な行動
  • パニック:突然床から持ち上げられてパニックを起こしてしまったため、カキカキがはじまる
  • 学習された行動:犬かきをしたときの人間の反応が肯定的だったため、それを学習し、抱き上げるたびにアンコールに応えてくれる

ちなみに、犬は生まれながらに犬かきができるような気がしてしまいますが、犬の中には泳ぎが不得意なコもいます。また、泳ぎが得意なコでも、過度に疲労をしているときは、どんな犬も溺れるリスクがあります。

水泳を楽しむときは、必ずライフジャケットを着用させるなど安全配慮を忘れずに。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] How dogs do the ‘dog paddle’: An evolutionary look at swimming — ScienceDaily
[2] Dissecting the dog paddle | Science News for Students

Featured image creditWasitt Hemwarapornchai/ shutterstock

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