お座りの姿勢で前進したり、カーペットにお尻を擦り付たりする愛犬。家の中なら良いけれど、外でするのはやめて欲しい、ちょっとお恥ずかしい行動です。
彼らはなぜ、この擦りつけ行動をするのでしょう。心配すべきはどんなときで、どのようなお世話をすべきなのでしょう。
なぜ肛門を擦り付けるのか
第一に疑うべきは肛門嚢の問題です。可愛い愛犬の肛門付近には、左右2つの小さな袋状の器官(肛門嚢)があり、肛門腺からの分泌物を貯蔵しています。
肛門嚢はかつて、排泄物に独特な香りをつける役割を果たしていたという専門家がいます。また、分泌液が潤滑液となり排便をしやすくしていたという説もあります。家畜化前のワンコたちにとっては、重要な役割を果たしていた可能性があると言われています。今はかつてに比べると、それほど大きな役割は果たしていないようです。
肛門嚢は、肛門の周りに時計の刻み目の4時と8時のところ(内肛門括約筋と外肛門括約筋の間)に位置しています。左右の肛門嚢は、短く狭いダクトを介して体の外と繋がっています。大型犬の中には、分泌物を排便と一緒に絞り出せるコもいますが、小型・中型犬などはこれを溜め込んでしまうことが多いのです。分泌物が溜まりダクトが閉塞すると犬は不快を覚え、肛門擦り付ける行動や舐めたり噛んだりをするのです。
また、肛門周りの異物を取り除こうとするというのが、第二の理由です。肛門周りの異物といえば、ほとんどがウンチでしょうね。清潔好きなワンコさんなら、自分の身体の綺麗にするために、カーペットを犠牲にする可能性があります。
このほかに怪我、アレルギー、腫瘍、寄生虫などの存在が、擦り付けの理由として考えられます。かゆみや不快感を解消するために、お尻を擦りつけるという訳です。稀に肛門腺が直腸内の深い場所に位置していることから分泌物ができず、問題を起こすワンコもいるそうです。この場合は矯正手術を受けなければなりません。
肛門擦りつけは普通か?病気か?
あなたの愛犬が、ウンチを擦りつけようとしているのなら、擦り付けてハイ終わり。問題はないでしょう。ちょっとした怪我の場合も、治ってしまえば終わりです。しかしこれ以外の場合には、ちょっと気をつけて観察し、お世話をした方が良さそうです。
分泌物を排出するダクトの詰まりは、(1)自分で分泌物を排出できないこと、(2)嚢や管の炎症を引き起こすアレルギー、(3)遺伝的な身体特徴、により起こります。単に分泌物が溜まっている場合は、腫れはするものの痛みはありません。この段階で絞り出してしまえば解決です。しかし、溜まった状態が長く続くと感染を起こすことがあり、腫れに加えて痛みを感じるようになります。放置すれば肛門嚢は膿瘍と破裂を起こし、肛門周囲の組織と大腿の背中まで感染が広がることもあります。
直腸または肛門嚢に腫瘍またはポリープが出来ている可能性も考えなければなりません。
愛犬が1日に何度も擦りつけ行動をするとき、排便の際にうめき声などをあげるとき、排便に長い時間をかけるとき、便をしない(便秘)ときは、動物病院に向かうことを検討するときです。単なる不快感の表明ではなく、病気の兆候を示していると考えた方が良いでしょう。
擦りつけワンコのお世話
擦りつけ行動を見たら、尻尾を持ち上げて肛門周りの状態をチェックしましょう。腫れやただれ、なんらかの異常を見つけたら、動物病院に連れて行きましょう。
家庭での肛門腺絞りは、推奨されるものではありません。お尻周りは敏感で、触られたり押されたりを断固拒否する犬もいるからです。敏感すぎるワンコなら、噛む恐れすらあります。また、完全に絞り出す事は難しいため家庭でこれを行うと中途半端に終わる恐れがあり、これが逆に問題を大きくする恐れもあるのです。
とはいえ、肛門腺絞りは難しいものではないものですから、自分で絞りたいという飼い主さんもいらっしゃるでしょう。尻尾を持ち上げ肛門の4時と8時の1を指でつまみ、強めに絞り込むだけで、分泌物を(場合によっては簡単に)絞り出すことができます。ただし家庭で行う場合は、必ずかかりつけの獣医師に教えてもらって行うようにしましょう。問診や触診で懸念材料を減らすことができますし、犬種の特徴や個体の状態を見た上での適切なアドバイスも受けられます。
アレルギーが原因の場合は、食事の調節やサプリメントにより改善する場合もあります。この場合も、獣医師らと相談して治療内容を検討する必要があるでしょう。
犬の12%が肛門嚢の問題を抱えているという説もあるとのことですが、肛門嚢の研究はあまり多くなく、詳しいことはわかっていないそうです。ちょっと愉快にも見える肛門擦りつけ行動ですが、頻繁に起こる場合はやっぱり注意。いつもより丁寧にお尻を観察してみてください。
Featured image credit Gregory Wild-Smith / Flickr
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