犬の飼い主さんなら、人間用シャンプーを犬に使用してはならないことはご存知だと思います。「肌のpHが異なるから」という理由もきっとご存知でしょう。
でも思いませんか？「一回だけなら大丈夫なんじゃない？」って。
その辺、本当のところは、どうなのでしょうか？「犬は犬用」は本当なのでしょうか？
皮膚とうるおい
皮膚は表皮（外層）、真皮（内層）からなり、表皮は外側から角層、顆粒層（かりゅうそう）、有棘層（ゆうきょくそう）、基底層の4つの層からなります。肌のうるおいは角質の保湿因子によって保たれていますが、このうち肌表面のうるおいに関係するのが皮脂膜です。
皮脂膜は、肌表面からの過剰な水分の蒸散を防ぐとともに、ウィルスや細菌などの環境汚染物質から角質層を保護します。このため皮脂膜が適度にある肌はしっとりと潤っていますが、これが過剰になると脂っぽくベタついた感じになり、少なすぎるとカサカサします。
健康な皮脂膜は、pH値のバランスとして定義されます。pH値とは酸性とアルカリ性の度合いを0〜14までの数字で示したもので、中間のpH7を中性、それより大きい値をアルカリ性、小さい値を酸性といいます。
健康な肌の状態を保っている人のpH値を確認すると、その数値は犬のそれとは異なります。人の場合、通常と呼べる範囲は4.5〜6で酸性に傾いています。このため人間用のケア製品は、皮脂膜をこの範囲内に維持するよう処方されています。皮膚が自力で皮脂膜を補充するまでの間、ケア製品に配合されたモイスチャライザーでpHバランスを保つためです。シャンプーなどで角質層が剥離した状態のままだと、乾燥によるフケ、かゆみの原因になりますし、真菌・細菌からの攻撃を受けやすくなるからです。
人間用は犬の肌を守らず破壊する
さて、犬のpHバランスはどうでしょうか。AKCによれば、犬のpHバランスは6.2〜7.4とされています。調査対象となる犬種が異なる場合などでばらつきはありますが、一般的に犬のpHは人間よりアルカリ性に向かっています。つまり、ケア製品でバランスさせる場合、人間のそれとは逆の方向に寄せる必要があるということです。
犬に人間用のシャンプーを使用すると、皮脂膜の代わりをするどころか皮脂膜そのものを破壊してしまいます。その結果、犬の皮膚は乾燥して傷を作りやすくなり、細菌や寄生虫、ウイルスにも脆弱となります。
犬のお肌は薄くて敏感
犬のお肌は、実は私たちの肌より敏感です。私たちは10〜15層の皮膚細胞を有していますが、イヌ科動物の皮膚細胞は3〜5と言われています。人間用のケア製品は、犬の敏感な皮膚を刺激し、被毛および皮膚の油分を奪ってしまいます。また、人間用製品には化学物質が含まれるものも多く、これらも犬の肌に悪さをします。
どのシャンプーがいいのか？
愛犬は泥だらけでシャンプーは必須。しかし現在時刻は午後7時。もうすでに近隣ペットショップは閉まっている…。
という緊急時に人間用シャンプーを使用したら犬を危険な状態に陥らせるのか!?…といえば、必ずしもそうではありません。犬のpHの平均は6後半から7といったところですが、実際にはバラツキは大きく、他の犬より酸性寄りの皮膚を持つコもいます。また、最近の人間用のシャンプーは天然由来の成分で作られていることが多く、犬への刺激もそう大きくないかもしれません。
成分ラベルを読んで天然成分であることを確認できたら、1回くらいの使用は問題ないでしょう。ただし、いつも以上に時間をかけて、完璧にすすぎをするよう心がけましょう。
人間用で代替するのは「絶対にどうしようもない場合」に限定した方が安全です。犬用シャンプーを切らさないよう心がけることで、愛犬の皮脂腺を健康な状態に保つことができると心得ましょう。
犬のお風呂やシャンプーは、（犬種や活動レベルにも依りますが）1ヶ月に1回程度で問題ありません。ここはケチらず、高品質のシャンプーを手に入れましょう。皮膚トラブルは犬にとっても大きなストレス。ケア製品でカバーできるなら、結構お安いものですよ。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Can You Use Human Shampoo on Dogs? – American Kennel Club
[2] Can You Use Human Shampoo on Dogs? | petMD
[3] 皮膚の解剖生理と基本的スキンケア：[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
[4] 花王株式会社 スキンケアナビ 肌の営み うるおいを保つしくみ
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