なぜ犬はお腹ナデナデが好きなのか?

生態・行動
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あなたの愛犬は、お腹をナデナデされることが好きですか?

「はい!」という元気な答えが聞こえてきそうです。中にはナデナデ大好きで「いつまでもやめさせてもらえなくて困る」という飼い主さんもいるでしょう。多くの犬は、撫でられることが大好きです。

なぜナデナデはそんなにも犬を魅了するのでしょうか?

犬がお腹ナデナデが大好きな理由

・理由1:自分でナデナデできないから

もっともつまらないけれど、ありそうな理由は、「自分でお腹をナデナデできないから」というもの。背中はゴロリンすることで擦ることができるけれど、お腹はできない…だから「代わりに撫でてください。あー、気持ちいい」と言ったところでしょうか。

・理由2:信頼と満足にあふれているから

犬にとってお腹は、攻撃されると致命的な柔らかで脆弱な部分。ここをオープンにすることで「あなたを信頼していますよ」という気持ちと、「あなたは私を攻撃しないよね」という自信とを表していると考えられます。優しいナデナデは、犬の気持ちを受け入れてあげること。犬たちは優しさと愛に包まれ、真に心地よい時間を過ごしているのかもしれません。

信頼のお腹見せの場合、体全体がゆったりとしなやかで、身体のパーツもリラックスしているでしょう。口はちょい開きで舌がペロリと見えるかもしれません。目はうっとりして開いているときも何も見ていないようです。軽快な、笑い声のようなハーハー音が聞こえるかもしれません。

一方で犬は、いわゆる”服従”のときも相手にお腹をみせます。上記とは対照的に、全体的に緊張し、尻尾はゆらゆら揺れているかもしれませんが付け根に力が入っていたり、隠したりします。

・理由3:本当に気持ちいいから

最後にちょっと科学的な説明を。犬たちがお腹ナデナデが好きなのは、撫でるという接触により脳内の特定のニューロン群が刺激され、特別な感触をもたらすから、という説があります。

根拠とされる研究は、2007年Nature neuroscienceに発表された、実験室のマウスが柔らかなタッチにどう反応について分析したものです。研究者らはこの実験で、MRGPRB4+と呼ばれるニューロンを刺激するのは柔らかなタッチのみだということを発見しました。

ほとんどの感覚ニューロンはさまざまな感覚に反応うるものです。たとえば動物の皮膚をつまんだり突いたりすると、多くの別種類のニューロンが一斉に反応するそうです。しかしMRGPRB4+だけは、広い範囲を優しく穏やかに触れられることによってのみ反応することがわかりました。どうやらこのMRGPRB4+は、マウスの皮膚にある毛包と関連して反応するらしく、毛に覆われた部分を撫でることは気持ち良さを引き出すようなのです。

お腹という繊細な場所を、手のひらで優しく撫でることは、犬たちに特別な気持ち良さを与えるものなのかもしれません。

ナデナデの時に見せる蹴るような動作はなに?

お腹を撫でると「カ・イ・カ・ン」というかのように蹴るような動作をする愛犬。残念ながらその動きは、エクスタシーを感じているからするわけではありません。実際はあの動作は、私たちが膝をコツンと叩かれたときに見せる反射に似たようなもので、「ひっかき反射(scratch reflex)」と呼ばれるものです

ひっかき反射は、犬のお腹や側面のある特定の場所に触られたときに見せる反応です。脚をブンブンと振り回すさまがちょっと愉快でたくさん触りたくなってしまいますが、これは実は犬たちの自己防衛の手段のひとつ。危険な虫や刺激物から自身を守るための無意識な反応なのです。

犬の皮膚の特定の部分の下には、脊髄につながる神経経路の集まりがあります。引っかきやくすぐりによってこれらの神経が活動化されると、神経回路は脊髄にメッセージを素早く送信し、それが犬の脚に蹴るように指示します。蹴ることによって虫や不愉快な刺激物を取り払うことができ、かゆみの原因をやっつけることに繋がるからです。

この反射は厄介な虫をやっつけるためのものであるため、犬は必ずしもその場所を触られるのを喜んでいるわけではありません。もし犬が喜びより戸惑う様子をみせるのであれば、その部分を触るのは避けましょう。

ちなみにこのスクラッチ反射は、医師が健康診断中に膝反射をテストするときのように、ペットが何らかの神経損傷を患っているかどうかを判断するために使用されます。

すべての犬がお腹ナデナデを喜ぶわけではない

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image by Daseeya / Shutterstock

ほとんどの犬はお腹ナデナデが大好きですが、これを好きではない犬もいます。また、いつでも好きなわけではありませんし、無理やりひっくり返されるのはどの犬も好みません。

無理にひっくり返してナデナデしても、犬の信頼は得られませんし、多くの場合不快感しか残しません。

犬の様子をよく観察しましょう。快適さを楽しんでいる犬は、全身がリラックスしています。身体が緊張していたり、脚の間に尻尾を挟んだり、その場を離れようとしているのなら、「不快である!」という合図です。

普段は自分から近づいてきてゴロンしてお腹をみせる犬が、近づいてこようとせず、身体に触れさせもしないなら(さらに唸り声をあげるようなら)、まずは獣医師に相談しましょう。身体の痛みや不快感が行動の変化や攻撃性の原因になっているかもしれません。


多くのワンコはお腹ナデナデが大好きです。それは特別な至福の喜びをもたらすようですので、もし犬が触ることを許してくれるのなら、求められるままにナデナデしてあげましょう。

お腹ナデナデが苦手なコは、もちろんそれで全く問題はありません。犬だって好みは様々。彼らは他のことから得られる快感の方を好んでいるのかもしれません。犬との絆を結ぶ方法は、他にも様々なものがあります。ナデナデは決して強制せず、愛犬が好む方法で信頼関係をつくっていってくださいね。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Why Do Dogs Like Belly Rubs? | petMD
[2] Liu, Q., Vrontou, S., Rice, F. L., Zylka, M. J., Dong, X., & Anderson, D. J. (2007). Molecular genetic visualization of a rare subset of unmyelinated sensory neurons that may detect gentle touch. Nature neuroscience, 10(8), 946.
[3] Why Does My Dog Kick When I Scratch His Belly? | Popular Science

Featured image creditRasulov/ shutterstock

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