頭を撫でようとすると、身をすくめたり頭を下げたりする犬がいます。「過去に虐待されていたから」という人もいますが、特に邪険に扱われた経験がない犬でも、こうした行動をとることがあります。
[icon name=”comments” class=”” unprefixed_class=””] この記事の監修者
WanByWan 三井 惇(みつい じゅん)CPDT-KA
1997年ボーダー・コリーを迎えてからドッグトレーニングの面白さを知り、ドッグダンスを始めてから、ドッグダンスを広めたいとドッグトレーニングのインストラクターになる。
現在は二頭のボーダー・コリーと共に、一般家庭の愛犬のトレーニングやドッグダンスのレッスンに携わる。本人も競技者としてオビディエンス競技やドッグダンスコンペに出没中。
なぜ頭を撫でようとすると避けようとするの?
人の手で叩かれた経験をもつ犬は、人の手に反応して身をすくめてしまうことがあります。しかし、叩かれた経験などないような犬でも、上から伸びてくる人の手に「嫌だな」というボディランゲージをみせることがあります。愛犬が以下のような行動をしていたら、少し注意が必要です。
- 首をすくめる
- 頭を下げる
- 後ずさりする
- 耳を後ろに倒す
- 唇をなめる
- クジラ目(白目が多く見える状態)になる
首をすくめたり逃げようとする理由としては、以下のようなものが考えられます。
- 触られるのがイヤ:頭の方に手を伸ばしたときに首をすくめる犬は、おそらく頭を触られることを好まない犬なのでしょう。犬によっては、頭の上を触られたりポンポンとされることを嫌います。頭だけでなく、顔や脚や尻尾を触られることを好まない犬もいます。撫でられること自体があまり好きではないのです。
- 過去に叩かれた経験がある:もう一つ考えられる理由は、過去の”頭を叩かれた”経験が人の手と関連づけて記憶されてしまったというものです。人にとっては軽くポンと触ったつもりが、犬には荒っぽく叩かれたように感じられたというのは十分にあり得ること。そのときの不快な気持ちが人間の手と関連づけられて記憶されたために、人が手を伸ばしただけで逃げるようになってしまったのかもしれません。
- 束縛を嫌うタイプの犬である:頭を触られることを嫌う犬は小型犬に多く見られます。人間が手を伸ばすと捕まえられてしまうだろうと予測して逃げようとするのです。小型犬は簡単に抱き上げられてしまうため、抱っこ好きな犬は自分から寄ってきますが、自由を好むタイプの犬はさっと逃げようとします。
- 健康に問題がある:耳ダニがある場合や、頭部に痛みが出るような怪我や病気である場合は、頭を触られることを嫌うことがあります。普段は平気で触られる犬が急に態度を変えた場合は、健康面での問題を疑って獣医師に相談するようにしましょう。
触られ嫌いを克服させる方法
嫌がる犬の頭や身体を無理になでる必要はありませんが、手を伸ばしたときに逃げ回られては、緊急時にリードをつけることなどが不可能になってしまいます。また、「触られること自体が嫌い」なコは、獣医師の診療やグルーミング時に十分なケアが受けられないという恐れもあります。
人が手を伸ばしたときでも、逃げることなく受け入れる犬になってもらうに越したことはありません。
「人の手は嫌なものではない」と教えてあげるためには、「人の手」と「犬にとっていいこと」を関連付けて覚えてもらうとよいでしょう。そのために以下のような小さな工夫を試してみてください。
- 床や椅子に座るなど、犬目線に近いポジションからスタートしましょう。徐々に立ち上がり、「上から手を伸ばされる」ことに慣らしていくのがコツです。愛犬の大好きなオヤツを用意し、一つずつ食べさせているとき、そっと手を伸ばして頭や体を触ってみます。少しでも逃げようとしたら無理をしないで、また時間を空けてからやってみるとよいでしょう。
- 触っているときは、「イイコ」と言った褒め言葉をたくさん使いましょう。
- 正面からではなく横から手を伸ばすところから始めてみるのも良いでしょう。犬の横に座り、顔や首の側面を触ります。前述のようにオヤツを使うことをお忘れなく。
克服させる際の注意点
愛犬が「触られ嫌い」なら、慣れた人以外にはこれを許可しない方が良いでしょう。嫌なことという印象が払しょくされていない状態で触り続けていると、愛犬ががまんの限界を超えてしまい、ストレスから吠えたり噛んだりする可能性もあります。
愛犬が「もっと触って」と寄ってきてくれるようになるまでは、無理をしないようにしましょう。
嫌がる行動に慣れさせるには、とにかく時間が必要です。毎日1~2分でも、継続して練習しましょう。
Featured image creditEric Isselee/ shutterstock