犬はみんなの最良の友!〜アフリカでサイや象を密漁から守る犬たちのお話

動物愛護・保護
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アフリカには、動物たちの命を守る活動をしている犬たちがいます。

彼らが守るのは、ケニア、タンザニア、ジンバブエなどの自然保護区で暮らす象やサイたち。象たちの命を奪う密猟者をパートナーであるレンジャー(森林警備隊員)と共に捕えて地元警察に引き渡すのが、彼らの主な職務です。

人間たちの欲望の犠牲になる象やサイ

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image by Joe Mercier / Shutterstock

2010年以降、アフリカの地で密猟者の手にかかる象は年間約35000頭。1日あたり100頭近くが殺されているという計算です。タンザニアでは過去5年間で国内にいる象の個体数60%以上減少しており[1]、動物保護団体Save the Elephantsは「野生の象は今後1世代のうちに絶滅する恐れがある」と危機感を募らせています。

密猟の目的は、アジアで高い需要を誇る象牙を確保すること。中国などでは、象牙でできた仏像や工芸品が高い人気を誇っており、闇取引も横行しています。またサイの角は漢方薬として珍重されており、ベトナムを中心としたヤミ市場では金の2倍以上の高値がつくこともあるそうです[2]

近年、密猟は組織化がすすみ、手段も巧妙になってきています。保護団体やレンジャーたちの努力もむなしく、殺戮される動物たちは後を絶ちません。そこで密猟者と闘う人々が講じた対抗手段の一つが技術の導入です。密猟者の位置を特定するために、監視カメラを搭載したドローンの利用を開始しました。そしてもう一つの対抗手段が「反密猟犬」の導入で、訓練した犬たちを自然保護区などに送り込み、密猟者を捕獲するという作戦です。

動物のために働く犬たち

ケニア、タンザニア、ジンバブエの自然保護区で働いているのは、英国に本拠地を置くAnimals Saving Animalsで訓練を受けた犬たちです。複数の犬たちの中から身体能力や意欲、探索・攻撃などのスキルなど総合的な評価において合格とみなされた犬が、アフリカの地を踏むことになります。

犬たちは現地で、さらに職務に合わせた訓練を受けることになります。適性によって訓練の種類は異なっており、たとえば危険物探知、攻撃、巡回警備、追跡などのスキルを磨いていきます。この10月に命を落としたバンディット(Bandit)も、こうした厳しい訓練を経て実務に就いた犬の中の1匹でした。

バンディットは「密猟者を追い詰める犬」としてAnimals Saving Animalsで育てられました。意欲が高く飲み込みも早かったバンディットは、巡回犬(ハンドラーと共に歩いて巡回し、密猟者を特定する)に選抜され、さらに技術を磨きます。嗅覚を活かした密猟者の特定や、音もなく接近しての容疑者確保、さらに銃撃のあった場所の特定など、技術を高めて試験も通過し、2014年10月、タンザニアのムコマジ国立公園(Mkomazi National Park)に配属されます。新しいハンドラーと共に訓練に励み、密猟者を確保してきたバンディットですが、訓練時の怪我により死去してしまいます。2歳という若さ、そして1年という短い任務遂行期間でこの世を去ったことに、関係者は大きなショックを受けているようです。団体のブログには、「バンディットは私たちが訓練をした中でも最高のワーキング・ドッグだった」というコメントが綴られています。

幼少期から始まる厳しい訓練

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訓練犬ポラリスの成長 image by Animals Saving Animals/span>

バンディットのような「反密猟犬」の育成には、幼少期からの訓練が必要です。何かがあったら吠えて知らせる、命令を受けたら対象を攻撃するなど、家庭犬とは真逆の行動を取らなければならないので、まだ何もわからないし学習もしていない幼犬をトレーニングする必要があるのだと思います。そして、厳しい訓練は引退するまで続きます。他のワーキング・ドッグと同じように、犬たちには重い肉体的・心理的負担がかかります。

彼らを支えるのが、任務と訓練を共にするハンドラーたちの存在です。訓練の合間には、犬たちはハンドラーとじゃれ合ったり、マッサージをしたり、ゆったりとした時間を過ごせるようです。そのときにみせる犬たちの表情は穏やかで楽しそう。そんな姿を見ていると、ハンドラーと強い絆で結ばれている犬たちはとても幸せに見えます。しかし、バンディット急死のケースからもわかるように、アフリカには多くの危険が潜んでいますし(バンディットの死因は蛇による咬傷)、任務や訓練による肉体や精神を消耗させ、命を縮めることにも繋がるのでしょう。訓練される犬たちは保護犬出身であることも多いため、「反密猟犬」となることで命が救われているのかもしれませんが、密猟が減少し、危険な任に就く犬の必要性も低くなるに越したことはないように思います。

「反密猟犬」を養成するためにかかる訓練費は1万ポンド超(約185万円 1£=185円で計算)。このほかに、設備や飼育施設および訓練場所を確保する費用が必要です。「動物が動物を守る」というユニークな活動に興味を持ったなら、ぜひAnimals Saving Animalsのページをご確認ください。寄付も継続的に受け付けています。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] ゾウの60%が消えたタンザニア、その原因は | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
[2] 「密猟される動物たち」ーNATIONAL GEOGRAPHIC日本版
[3] Elephant’s best friend | Giants Club | Voices | The Independent
[4] Bandit, the dog that protects rhinos and elephants | South Africa

Featured image from Animals Saving Animals

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