男性のあごひげには、犬よりも多くの有害細菌が存在する(研究)

サイエンス・リサーチ
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「犬は不潔!」という人もいるかもしれませんが、あごひげを生やした男性と比べた場合は犬の方が清潔なのかもしれません。

スイスを拠点とする研究者らは、30匹の犬と18人の毛深い男性を比較し、男性のあごひげには犬の被毛よりも有害な細菌が多く含まれていることを示しました。

平均的な男性のあごひげは、犬の被毛のもっとも汚れた部分よりも病原性細菌でいっぱいだったそうです。

論文は、European Radiologyの2019年2月号に掲載されました。


研究に協力したのは、ひげを生やした男性18人(18〜76歳)と、ボーダー・コリー、ダックスフンド、ジャーマン・シェパードなど30匹の犬(3ヶ月から13歳まで)。研究者は人間と犬のそれぞれから、皮膚などのサンプルを採り分析を行いました。

実はこの研究の目的は、犬と人間が同じMRIスキャナーを使用しても衛生上の問題がないかを確認することにありました。このため’研究者らは、採取したサンプルの分析のほかに、犬と人が共有するMRIスキャナと人間のみが使用するMRIスキャナの細菌汚染の程度も比較したそうです。

研究者らが採取したサンプルは、犬では唾液および肩甲骨の被毛(この場所は皮膚感染が定期的に発生するため、”非衛生的”だと考えられている。特別な細菌収集プレートを擦り付けた)、人間の男性からは唾液とあごひげ。このほか、使用後のMRIスキャナについてそれぞれ3箇所でサンプルを採り、細菌負荷を分析しました。

結果、以下のことがわかりました。

  • あごひげから採取した標本の細菌負荷は有意に高かった。18人からのサンプル全てで高い微生物数を示したのに対し、犬では30匹のうち23匹のみが高い微生物数を示した
  • 犬の被毛よりも男性のあごひげに、ヒト病原性微生物(human-pathogenic microorganism:宿主の体の特定の場所にコロニーを形成するとヒトを病気にする可能性がある細菌)が多くみられた(ただし統計的には有意ではない)
  • 犬の口腔よりも男性の口腔に多くの微生物がみつかった
  • 犬が使用した後に日常的な洗浄が行われたMRIスキャナーからは、人間男性が使ったものより細菌の数が少なかった

この結果について論文の筆頭著者であるAndreas Gutzeit博士は「犬はあごひげを生やした男性と比べて清潔だと考えることができる」とコメントしています。

ただし、この結果をもってしても、あごひげ男性に電気シェーバーを持たせて、髭剃りを強要することはできません。あごひげのない男性や女性らがどんな細菌を持っているかは、この結果では明らかになっておらず、「悪いのはあごひげ」と断ずることはできないからです。

また、犬が使用した後のMRIスキャナーは人間使用後より丁寧に清掃が行われている可能性もあるため、これだけをみて「犬よりも不潔!」と結論づけることはできません。

研究から学ぶべきは、犬が使用した機器でもしっかりと清掃してあれば人間との共用も可能になるということ、そして私たち人間は思っていたより多くの有害細菌を運んでいるらしいということでしょうか。
いずれにせよ、この研究の結論は「犬と同じMRIスキャナを使用しても、人間に危険はない」ということです。もし、あなたより前に犬がスキャナーを利用していたとしても「不潔だ!」と大騒ぎする必要はなさそうですよ。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] “Would it be safe to have a dog in the MRI scanner before your own examination? A multicenter study to establish hygiene facts related to dogs and men” Gutzeit, A., Steffen, F., Gutzeit, J. et al. Eur Radiol (2019) 29: 527. https://doi.org/10.1007/s00330-018-5648-z
[2] Men’s Beards Contain More Harmful Bacteria Than Dogs’ Fur, Small Study Suggests

Featured image creditMarvin Meyer/ unsplash

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