犬は時間がわかるのか

サイエンス・リサーチ
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夕方になると「ねぇねぇ」と前脚でカリカリしてくる犬たち。毎日同じような時間になるとご飯の督促をする犬は、まるで時間がわかっているようです。

犬は時間がわかるのでしょうか。時計を読んだり時間経過を計測できない犬は、どうやって”その時”がきたことを知るのでしょうか。

「時間わかる?」ってなあに?

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時間?わかるに決まってる! image by Nexxt PRESS / Flickr

そもそも”時間”って何でしょう。デジタル大辞泉には、時間の6つの意味が記載されています。

(1)ある時刻と他の時刻との間の長さ
(2)時の流れの中の、ある一点。時刻
(3)時の長さを数える単位
(4)授業や勤務など、ある一定の区切られた長さの時
(5)哲学で、空間とともにあらゆる事象の最も基底的、普遍的な存在形式
(6)現象が経過していく前後関係を明示するための変数

犬と哲学論議を交わしたい人を除いては、「時間の長さがわかるのか」と「時刻がわかるのか」の2点が知りたいポイントですよね。もう一つ付け加えるなら、犬は現在と過去の区別がつけられるのかという点でしょうか。1週間前か2年前かはわからないとしても、我が家に到着した”うちのコ記念日”が過去にあるということを、彼らはわかっているのでしょうか。

犬も長時間と短時間を区別できる

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お留守番、長い… image by scott spaeth / Flickr

まずは「時間の長さがわかるのか」という点ですが、2010年に行われた研究[1]によれば、犬も時間の長短を区別できる可能性があるそうです。

2010年、スウェーデンの研究者グループは、12匹の犬とその飼い主を対象に飼い主が帰宅した時の留守番犬の反応を調査しました。留守番時間はそれぞれ30分、2時間、および4時間で、留守番時や帰宅時の様子が隠しカメラで撮影され、データが分析されました。

結果、実験協力犬の多くは、30分の留守番の時より2時間の留守番をしたときに興奮して飼い主を出迎えることがわかりました。興奮度合いは犬の尻尾の振れ、熱心さ、エネルギー量などにより判断されました。一方、留守番時間が2時間の時と4時間の時では興奮度合いに有意差は観察できなかったということです。

犬は時刻もわかる

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まだお昼かぁ〜 image by Jason Tester Guerrilla Futures / Flickr

お散歩やオヤツ、ディナーの時間を知らせて督促する犬は少なくありません。毎日同じスケジュールでこれらを行う家庭の犬はかなり時間に正確で、数分の遅れも許してくれないこともあるようです。

犬が時刻を”わかって”しまう現象にはいくつかの説明があります。

・体内時計(概日リズム)の働き

ほとんどの生き物と同様、犬は概日リズムから時間感覚を得ています。動物は24時間の明暗の周期に従って、目覚め、食べ、寝るように進化しました。概日リズムは遺伝子によって支配されますが、光や温度、食事などの外界からの刺激によっても修正されます。午前中に朝ごはん、午後3時にオヤツ、午後6時に夜ご飯という生活に慣れていると、犬の体はこの周期で空腹になり、あなたの周りを飛び跳ねることになります。

・環境の合図を読む

犬は環境の合図を読んで、時刻を知るというのが、もう一つの説明です。光の強さや影の長さから、”その時”を知ることができるというものです。

・パターンを読む

犬が社会的手がかりを拾い読みして、人間の行動を読むという説明もあります。あなたも気づいていない冷蔵庫への視線を、あるいはお散歩前にするちょっとした癖を、犬たちは絶対に見逃しません。毎日の出来事と周りの環境、そしてあなたの無意識の癖から推理して、犬は「今がこの時」ということを知るのです。

犬は匂いで時間の経過を知る

バーナード・カレッジに犬の認知についての研究所を立ち上げたホロウィッツ博士は、著書『Being a Dog: Following the Dog Into a World of Smell』の中で、「犬はその素晴らしい鼻によって時間の経過を知覚できる」と主張しています。

例えば、あなたが毎日決まった時間に仕事に出て、決まった時間に帰る生活を送る人なら、犬は時間の経過によってあなたの匂いが減っていくことに気づくでしょう。そして、あなたの匂いが一定のところまで弱まったところで帰ってくるということを学びます。匂いの強さによって、将来を予測できるというわけです。

強い匂いは最近のもの、弱い匂いは過去のもの。犬たちが匂いの濃度によって、時間の経過を知覚し、起こった出来事、さらにはモノや場所を紐付けて認識している可能性を、ホロウィッツ博士は示します。人間の時間の認識は、過去の出来事に関する記憶によって説明されますが、仮に犬に記憶をする力がなかったとしても、彼らはその素晴らしい嗅覚で時間の経過を認識できているのかもしれないのです。

人と同じ力を持っていなくても、あるいは人と同じように世界を見ていないくても、犬はおバカさんではありません。彼らは彼らの能力を使って、彼らなりのやり方で世界を見て理解しいるのです。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Rehn, T., & Keeling, L. J. (2011). The effect of time left alone at home on dog welfare. Applied Animal Behaviour Science, 129(2), 129-135.
[2] Can Dogs Tell Time? – Animal Cognition

Featured image credit Angelbattle bros / Flickr

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