犬は19のジェスチャーを使ってあなたに命令している(研究)

サイエンス・リサーチ
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犬は人間の言うことを、私たちが思う以上にわかってくれています。

よく使う単語は覚えられるし、声のトーンや顔の表情から、私たちが意図するところを”読んで”くれます。私たちは言葉やジェスチャーを使って、犬に「あれをして」「これはしないで」という意思を伝えます。

一方の犬たちはどうでしょう?困ったときに、私たちに何かを訴えているようにみえることはありませんか?

どうやら犬たちも自らの希望を、ジェスチャーを使って伝えようとしているようなのです。科学者は犬の動きを分析し、人に動いて欲しいと期待する時の19のジェスチャーを特定しました。

犬はあなたを働かせようとしているのか?

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image by Scott 97006 / Flickr

研究は、イギリスのサルフォード大学(the University of Salford)のHannah K. WorsleyとSean J. O’Haraによって行われました。

研究の目的は、犬が行う身ジェスチャーが”referential gestures(参照ジェスチャー)”として機能しているかを確認することにありました。論文によれば参照ジェスチャーとは、「受け手」の注意を特定のモノ、個人、出来事に引きつけるために「送り手」が使う動作パターン。類人猿ではよく研究されていますが、それ以外ではあまり研究されていないそうです。

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その身振りが「参照ジェスチャーである」と判断されるためには、次の5つが満たされていなければならないそうです。

  • それが特定のモノ(または「受け手」の身体の特定の場所)に向けられていること
  • それが機械的に意味のない動作であること
  • それが別の個人に向けられていること
  • それが「受け手」の自発的な応答をもたらすものであること
  • それが意図をもっていること

研究者らは、事前に定められたプロトコルを使用して、37匹(オス21匹、メス16匹)の犬の映像データを収集しました。37匹はすべて家庭犬で、研究が始まるまで少なくとも5ヶ月間、人間と暮らしていました。

映像には様々な”日常的な行為”が記録されており(1,136件)いました。研究者はこれらのデータを、行動の対象、使用頻度、相互作用の結果(目標が達成されたかどうか)に応じてコード化し分析しました。そして参照ジェスチャーとなりうる行動が47に絞り込まれたあと、最終的に19のジェスチャーが特定されました。

19のジェスチャーは、犬の飼い主にとってはお馴染みのものばかり。ジェスチャーの数が19に対して犬が伝えたいメッセージは、「ナデナデ、カキカキして!」「食べもの/飲み物をチョウダイ!」「ドアを開けて」「オモチャを取って!」の4つです。単一のゴールを達成するために、複数の異なるジェスチャーを使っていることがわかります。

一つのジェスチャーで目的が達成できないときは、別のジェスチャーに切り替えて、何度もチャレンジしているようです。

また、複数の人と一緒に暮らしている犬は、より多くのジェスチャーのレパートリーを使用する傾向があったそうです。それぞれの人に合わせた、カスタマイズされた方法をもっているのではないかと研究者は考えているようです。

以下に、分類された19のジェスチャーを載せておきます。上述のとおり、ジェスチャーと意味とは一対一にはなっていないため、「このジェスチャーの意味は何?」という疑問に答えるものにはなっていません。

ぜひみなさんがご自身で、愛犬が何を伝えようとしているのかを観察、分類してみてください。犬はきっと自分なりのルールをもって、あなたにメッセージを伝えようとしているはずです。愛犬からのお達しの意味がすぐに理解できる日も、そう遠くはないでしょう。

特定された19のジェスチャー

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image by Darron Birgenheier / Flickr

  1. 転がる(Roll over):「カキカキ、ナデナデして!」
  2. 頭を下げる(Head under):「オモチャを取って!」
  3. 頭を前に出す(Head forward、頭を前方または上に動かし、人間の手などを自分の身体の特定の場所に向ける):「ナデナデ、カキカキして!」「食べもの/飲み物をチョウダイ!」「ドアを開けて」
  4. 後脚で立つ(Hind leg stand):あなたの犬があなたに語っているもの:「食べもの/飲み物をチョウダイ!」「ドアを開けて」「オモチャを取って!」
  5. 頭をターンさせる(Head turn、たとえば左から右へ向ける):「ナデナデ、カキカキして!」「食べもの/飲み物をチョウダイ!」「ドアを開けて」「オモチャを取って!」
  6. 身体を引き摺る(Shuffle、身体を地面に擦り付けゴロゴロしながら移動する):「ナデナデ、カキカキして!」
  7. 横たわっているときに後脚を片方上げる(Back leg up):「ナデナデ、カキカキして!」
  8. お座りのときにひとつの脚を上げる(Paw hover):「食べもの/飲み物をチョウダイ!」「ナデナデ、カキカキして!」
  9. 人の手やモノの下に身体を移動させる(Crawl under):「オモチャを取って!」
  10. オモチャを口にして人の方に投げる(Flick toy):「食べもの/飲み物をチョウダイ!」
  11. ジャンプ(Jump):「食べもの/飲み物をチョウダイ!」「ドアを開けて」
  12. 片脚または両脚をモノの下に入れて、関心のあるモノを取り出す(Paw reach):「オモチャを取って!」
  13. 鼻または顔をモノまたは人をに押し付ける(Nose):「ナデナデ、カキカキして!」「食べもの/飲み物をチョウダイ!」「ドアを開けて」「オモチャを取って!」
  14. モノまたは人を繰り返し舐める(Lick):「ナデナデ、カキカキして!」「食べもの/飲み物をチョウダイ!」「ドアを開けて」
  15. 両前脚を持ち上げ、モノまたは人の上に置く(Front paws on):「ナデナデ、カキカキして!」「食べもの/飲み物をチョウダイ!」「ドアを開けて」「オモチャを取って!」
  16. 片方の前脚を持ち上げ、モノまたは人の上に置く(Paw rest):「ナデナデ、カキカキして!」「ドアを開けて」
  17. 頭をモノや人に擦り付ける(Head rub):「ナデナデ、カキカキして!」
  18. 口を開き人の腕を繰り返し軽く噛む(Chomp):「ナデナデ、カキカキして!」
  19. 片方の前脚を持ち上げ、モノまたは人に短時間触れる(Paw):「ナデナデ、カキカキして!」「食べもの/飲み物をチョウダイ!」「ドアを開けて」「オモチャを取って!」

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Worsley, H. K., & O’Hara, S. J. (2018). Cross-species referential signalling events in domestic dogs (Canis familiaris). Animal cognition, 1-9.
[2] Get Help! Pony is in Trouble! – The Science Dog
[3] Dogs Use Various Gestures to Get What They Want From Us | Psychology Today

Featured image creditKaren Walker/ shutterstock

言葉じゃなくて体で話して!〜犬はジェスチャーによるコマンドにより良く従う(研究) | the WOOF イヌメディア

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