犬の過剰なナメナメは胃腸の不調が原因かもしれない(研究)

サイエンス・リサーチ
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あまりにも頻繁に同じ行動を繰り返す犬は、一般的には行動の問題が疑われ、行動療法や薬物療法が試みられます。しかしこの問題は、常に心の問題が引き起こす訳ではないようです。

2012年に発表された研究は、過度に舐め行動の原因が胃腸疾患にある可能性を示しました。

原因は心か、あるいは身体か?

何かを執拗に舐めたり、自分の尻尾を追いかけたり、光を追いかけたり、執拗といえるほどに奇妙な反復行動を繰り返す犬がいます。これは強迫性障害によって引き起こされると言われており、その根底には葛藤や欲求不満、あるいは動揺や興奮があると見られます。少し乱暴な言い方をすると、奇妙な行動は”心の問題”によって引き起こされると判断されることがよくあるのです。

このため、強迫性障害の治療は主に、行動療法や薬物療法(あるいはこれらの組み合わせ)が行われます。心(あるいは神経系)と行動を健康な状態に持っていこうとする方法です。しかし、”心の治療”に取り掛かる前にまずは健康チェックをおこなうのは、賢い選択かもしれません。胃腸疾患を患う犬も、過剰な反復行動を見せる可能性があることが、研究により示されたのです。

舐めることと胃腸疾患の関係

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image by Christina Hart / Flickr

研究を行ったのは、カナダのthe University of Montréal Veterinary Teaching Hospitalの研究ら。過度の表面舐め行動(Excessive licking of surfaces:ELS)がみられる19匹の犬について、行動や身体、神経について評価が行われました。

ここで、過度の表面舐め行動(ELS)とは、床やカーペット、壁、家具、飼い主の手や足、自分の唇まで執拗に舐め続けることを指しており、かゆみや皮膚の炎症によって引き起こされる自分舐めは、ここでは含まれません。これらの行動がみられる19匹は、とりわけ消化器系について徹底的に調査され、評価・分析が行われました。

結果、19匹のうち14匹(74%)が胃腸疾患を患っていることがわかりました。同定された障害には、好酸球性胃腸炎やリンパ形質細胞の浸潤、胃内容排泄遅延、過敏性腸症候群、慢性膵炎、胃の中の異物、ジアルジア症があり、この後治療を開始して90日間モニターしました。

モニター期間において研究者らは、17匹中10匹(59%)の犬で過度の舐め行動の改善を確認しました。また17匹のうちの9匹(53%)は、過度の舐め行動が完全になくなったことが確認されました。

この結果を受け研究者らは、過度の舐め行動を示す犬では消化器疾患が考慮させるべきと結論づけています。

行動の異常は動物病院に相談を

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image by laurakrasowska / Flickr

表面を執拗に舐め続ける行為は、自傷を伴う過度の舐め行動ほどには問題視されない傾向があります。壁や床を舐めるのはヘンだけど、犬の身体には無害に思えるからです。

しかし実際には、何かを舐め続ける行為は犬の身体に悪影響を及ぼすことが多くあります。カーペットや髪の毛を舐め続けることで、犬のお腹に毛髪や繊維がたまり腸閉塞を引き起こすこともあるのです。

「犬に変な行動が現れたら病気の兆候と考えよう」というのは、今回ご紹介した過度の表面舐め行動にも適用される鉄則です。異常とも呼べる反復行動はストレスなどが引き起こす行動の問題かもしれませんが、もしかしたら胃腸疾患のような健康問題で、投薬や食事の変更によって治るものかもしれません。

犬も心の病気を患うことはありますが、同じような行動変化は身体の健康問題によっても起こります。まずは動物病院で、犬の身体を徹底的に調べてみることから始めましょう。

h/t to Abnormal Behaviors Aren’t Always Psychological | Psychology Today

Featured image creditSam Hetterich/ unsplash

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