犬にも「ストレスで眠れない日」がある〜”負の体験”が睡眠の深さに影響

サイエンス・リサーチ
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嫌なことがあった日は、鬱々として眠れない…。そうした夜を過ごすのは人間だけではないようです。

ペットの犬もストレスを経験した日は、眠れぬ夜を過ごすという研究が発表されました。

ストレスから逃れるため早く眠りに落ちる

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image by Polina Fatourou / Flickr

研究を行ったのは、ハンガリーの研究機関に所属する研究者たちのチーム。眠っている犬の脳波を記録することにより、起きている時の経験が睡眠に与える影響を明らかにしました。

実験協力犬は、異なる品種の16匹の犬。ゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバー、シープドッグおよびジャックラッセルテリアなどが、3時間の実験に参加をしました。

犬は2つのチームに分けられ、片方は”正の体験(ハッピーな時間)”を、もう片方は”負の体験(悲しい時間)”を過ごし、その後、眠りにつきました。”正の体験”チームは、飼い主と「引っ張りっこ」や「取ってこい」遊びをし、時にはナデナデもされました。一方の”負の体験”チームは、リードでドアに繋がれて飼い主から無視されたり、研究者(見知らぬ人)から目を凝視されました。

その後、犬は睡眠の時間に入りました。全ての犬にEEGセンサー(脳波を検出する無線ヘッドセット)が取り付けられ、その脳波が記録されました。

まず観察されたのが、”負の体験”をした犬は、”生の体験”をした犬に比べて2倍早く(10分以内に)眠りに落ちたということです。これは、「犬は、ストレス感情をできるだけ早く切り放そうとする」ことを示した先行研究を支持する結果でした。

さらに、眠りの質についての発見もありました。実験参加犬に与えられた睡眠時間は3時間でしたが、”負の体験”をした犬は”正の体験”をした犬に比べ、深い睡眠が平均して20分少なくなることがわかりました。ハッピーな時間を過ごした犬は、ノンレム睡眠の時間が1時間だったのに対し、つらい思いをした犬は40〜50分。悲しい思いをした犬が、ぐっすりと眠れなかったことがわかります。

ストレスを経験すると深い眠りが短くなる

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image by claumoho / Flickr

ハンガリー化学アカデミーのKis博士は、「これ(実験でみられたような睡眠の問題)が、ほんのたまに起こることなら問題はありません。しかし、長期間にわたり良い睡眠が得られないなら、犬は物事を記憶したり感情をコントロールすることがうまくできなくなります」と語っています。

「仕事に就いている犬なら、より攻撃的になり、仕事がうまくできなくなるでしょう」

英国獣医師会のRavetz氏は、「この研究は犬の睡眠にポジティブまたはネガティブな経験が影響する可能性を示したもの」だとし「小規模かつ更なる検証は必要だが、ポジティブな相互作用がペットの健康と福祉に置いて大切であることがよくわかるものだ。特にトレーニングにあっては、ポジティブで報酬ベース(望ましい行動に報酬を与え行動を増やす手法)であることは重要だ」とコメントしています。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Kis, A, Galambos. A, Aidai. J, Gombos. F, Bodizs. R, Topal. J (2017) Sleep macrostructure is modulated by positive and negative social experience in adult pet dogs, Proceedings of the Royal Society B,

Featured image credit benjamin.choi / Flickr

犬は睡眠時に学習し、メス犬はオス犬よりもより良く学ぶ | the WOOF イヌメディア

傍で眠る可愛い犬。身体はしっかり休んでいても、脳はその働きを止めてはいないようなのです。 ハンガリーの研究者らは、睡眠中に犬たちが学んでいる可能性があること、そしてその学習においてはメスの方がオスよりも優れている可能性があることを示しました。

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