犬のアンチエイジング〜”寿命を延ばす薬”は犬の老化を食い止めるのか?(米研究)
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家族である愛犬の最期を看取るのはつらいもの。犬の寿命がもっと長くなればいいのに、というのは愛犬家の切実な願いですよね。
米国で、投薬により犬の老化を遅くするか否かを測る研究が行われました。数週間にわたりラパマイシンという薬を犬たちに投与し、その経過を観察する内容です。その結果、ラパマイシンの投薬が寿命延長に一定の効果を発揮するのではないかとする結果が得られたということです。
わずか数週間で犬の体に変化が現れた
研究を行ったのは、ワシントン大学の生物学者Matt Kaeberlein氏と同僚のDaniel Promislow氏。40人の犬の飼い主が週3回、飼い犬にラパマイシンのタブレットを飲ませるという実験です。研究者たちは10週間に亘って心エコー図(echocardiogram)をとり、薬が心機能に及ぼす効果を検証しました。
ラパマイシンとは免疫抑制剤の一つで、免疫抑制作用、がん治療作用、平滑筋増殖抑制作用のほか、寿命延長作用があるとされる薬です。Wikipediaには、「ラパマイシンを与えられたマウスは与えられる前に比べて寿命が28-38%伸長し、最大寿命が全体で9-14%伸長した[1]」とあり、成熟した個体でも寿命を伸張させる可能性があるということも記述されています。
研究者たちは最初に、大型の成犬に少ない量のラパマイシンを投与して経過を観察。病歴や体調などを勘案して選定した24匹に対し10週間の投薬を行いました。その結果、ラパマイシンを飲んでいた犬たちの心臓機能に改善の兆しが見られるか、または変化なし(悪化しない)であることがわかりました。また、もともと心機能が弱っていた犬に関しては、改善が見られたということです。
十分ではないが、期待の持てる結果
今年3月に終了しているこの研究は予備調査としての位置付けであり、対象も24匹と少数です。だから、この結果でラパマイシンを”寿命を延ばす奇跡の薬”であるとするのは早計に過ぎるというもの。しかし、マウスを対象とした研究結果も併せると、犬たちの健康寿命を伸長させる効果を期待するは出来そうです。2009年に行われた老年マウスを対象にした研究では、9-14%の寿命伸長が確認されており、これに続く中年マウスを対象にした研究では寿命伸長が30%にものぼることが確認されています[2]。
ラパマイシンの寿命延長作用は人間にも効果があるとみられています。問題は副作用があるのか、あるのならどのようなもので、どの程度あるのかという点です。「重大な副作用が起きない量の服用で、老化を遅くすることができるのか、というのが疑問だ」とKaeberlein氏は語っています。
自らも愛犬家であるKaeberlein氏とPromislow氏。今後も研究を続ける計画で、次のフェーズでは、10,000匹の飼い犬を対象とした実験が行われるということです。1年程度の観察の中で、犬種の違いや生育環境の違いの影響など、もっと詳しい影響が明らかになるかもしれません。十分な資金が投入できるかという点がクリアになれば、5年以内に犬の健康寿命を2年から5年延ばすことができるというのは研究者たちのコメント[3]。ちょっと、期待してしまいますね。
研究の詳細は、Dog Aging Projectで確認できます。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] 元論文は→Harrison, D. E., Strong, R., Sharp, Z. D., Nelson, J. F., Astle, C. M., Flurkey, K., … & Pahor, M. (2009). Rapamycin fed late in life extends lifespan in genetically heterogeneous mice. nature, 460(7253), 392-395.
[2] This scientist wants your dog to live forever | Fusion
[3] New research aims to slow aging in dogs | WSB-TV
Featured image by Anna Fox / Flickr
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