犬が足先を過剰に舐めるとき~考えられる5つの原因とその対処

動物愛護・保護
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気がつけば、ワンコが足先をしきりに舐めている。そんなときは、どんな対処をしたらよいのでしょうか?

今回は、アメリカのIntegrative Veterinary Care Journal に掲載された記事『Excessive Paw Licking in Dogs – It May Not Be Allergies(ワンコが過剰に足先を舐める理由―それはアレルギーのためではないかもしれない)』の内容も含めて、ワンコが足先を舐める理由と対処法についてお話しさせていただきます。

どんな時に’過剰に’舐めるのだろう?

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んはぁ〜、ストレス疲れだわ〜 image by Joel Henner / Flickr

ワンコが足先を過剰に舐める原因には、以下のものが考えられます。

1. 足先や肉球、爪の怪我

ワンコは、熱いアスファルトの上を歩いたり、激しく走り回ったりすることで、肉球が擦れてしまったり、火傷を負うことがあります。また、外で遊んだり散歩しているときに肉球や足先に棘などが刺さってしまうこともあります。爪をどこかに引っ掛けて、爪が割れてしまったり、爪の付け根や足先を怪我することも考えられますし、高いところから落下して足先を捻挫したり骨折することもあります。

2. アレルギー性皮膚炎

ワンコのアレルギー性皮膚炎は足先だけに発症するわけではありませんが、足先に痒みが起きることがあります。アレルギー性皮膚炎の原因は、食物アレルギーが最も多く、その他には接触性アレルギー、アトピー性皮膚炎なども考えられます。

3. ストレス

ワンコがストレスを感じたとき、このような行動を示すことがあります。

4. 感染

足先に寄生虫(ノミやダニなど)が感染して、痒くなることがあります。また、アレルギー性皮膚炎のために足先を舐め過ぎて、二次的に細菌感染してしまうこともあります。

5. 頸部や腰部の炎症

あまり知られていませんが、足先を過剰に舐めるワンコは、頸部や腰部に炎症を伴うことがあるようです。これについては、「’過剰に’舐めるなら、頸部や腰部の炎症かもしれない」の項で詳しく説明します。

この他にも、あまりみられることはありませんが、腫瘍(悪性および良性)や自己免疫性疾患などが起因することもあります。

’過剰に’舐めるなら、頸部や腰部の炎症かもしれない

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ジャンプ、得意よ♡ image by laurakrasowska / Flickr

上述した記事『ワンコが過剰に足先を舐める理由―それはアレルギーのためではないかもしれない』の著者である獣医師のPeter Dobiasは、日々の診療で、足先を舐めるワンコの症状を改善すべく、アレルギーなどの治療を行ってきました。しかし、必ずしもすべてのワンコがよくなるわけではありませんでした。そこで、他の理由について考えてみました。

探究の結果、前肢をよく舐めるワンコは、頸部の炎症や不快感を示す傾向があること、前肢の前腕部(肘から手根部まで)を舐めるワンコは、肩甲骨間の炎症や同部位の筋肉に異常を示す傾向があること、後肢の足先を舐めるワンコは、腰椎の挫傷や腰椎周囲の筋肉損傷を示す傾向があることを発見しました。

前肢の足先に分布する神経は、頸椎もしくは胸椎からつながっています。また、後肢の足先に分布する神経は、腰椎からつながっています。頸椎や胸椎、腰椎に炎症や異常があると、周囲の筋肉は緊張するため、神経が圧迫されて、末端部の神経にまで影響を及ぼしているのではないかと考えました。

では、どのようにして頸部や胸部、腰部に負担がかかるのでしょうか?著者が調査を行ったところ、前肢の足先を舐めるワンコは、リードを引っ張る癖があったり、自動巻き取り式伸縮リードを使用している傾向がありました。リードを引っ張ったり、伸縮リードにより急激に引っ張られたりすることにより、首輪も引っ張られ、頸部に負担がかかり炎症が起こるのではないかと考えました。

また、後肢の足先を舐めるワンコは、走るの大好きワンコやジャンプ大好きワンコ、ボール遊び大好きワンコが多かったそうです。このことから、遊びに夢中になりすぎて、腰部に負担がかかっているのではないかと推測しました。

その後、著者は、足先を過剰に舐めるワンコを検査する際には、足先をチェックする他に、頸部や腰部の検査も行い、何らかの異常がみられる場合には、その治療や対処を行うようにしました。その結果、過剰な足先舐め行動を改善することに成功したそうです。

どうすればいいの?〜私たちにできる対処法

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チェックですね!はーい♡ image by Peter J. Wilson / Shutterstock

ワンコが足先をしきりに舐める場合、まずは、外傷やアレルギー性皮膚炎などを疑い、そのための検査と治療が必要です。

病院へ行く前に

病院へ行く前に、足先をチェックしてみましょう。足先や肉球、爪の付け根、指の間が赤くなっていないか、腫れていないか、出血は無いか、痛みはないか、悪臭はしないかなどをチェックします。できれば歩様も確認してみます。そして、いつから舐め始めたのか、どの足を舐めるのか(いつも同じ足を舐めるのか)、足のどの部分を舐めるのか(足先だけか、それよりも上も舐めるのか)、どのくらい頻繁に舐めるのかを観察して、診察を受ける際に獣医師に伝えると診断の助けになることがあります。

症状が改善されない時に

アレルギー性皮膚炎の治療や他の治療を受けても症状が改善されず、前肢の足先を過剰に舐め、リードを引っ張るタイプのワンコは、首輪からハーネスタイプの胴輪に変えてみましょう。また、後肢の足先を過剰に舐め、ジャンプ大好き、走るの大好き、ボール遊び大好きのワンコは、1ヵ月間、遊びをストップしてみましょう。綱引き大好きワンコも、遊びをストップしてみましょう。もし、動物病院で、頸部や腰部の炎症が診断された場合には、理学療法やカイロプラクティック、整骨などの補完・代替療法が効果的かもしれません。


ワンコが時々足先を舐めているだけ、であればあまり気に留めることはないかもしれませんが、いつもよりよく舐めるなと思ったら、足先をチェックして、早目に診察を受けることをおすすめします

何もせずにいたら、いつの間にか足先の毛が抜けていた、毛が抜けて皮膚が盛り上がってきたという状態になってから来院する方も少なくありません。病状が進行してしまうと、治療に時間がかかり、完治が難しくなることもあります。どんな病気でも、早期発見早期治療が一番です

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Excessive Paw Licking in Dogs – It May Not Be Allergies – IVC Journal
[2] Why Do Dogs Chew Their Paws?
[3] Excessive Licking: Dog Paws » Albuquerque VetCo
[4] 加藤嘉太郎,家畜比較解剖図説,養賢堂,1989,562-577
 

Featured image credit ANNA TITOVA / Shutterstock

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