犬と腫瘍〜腫瘍とがんは違うの?発生率が高いのは?

健康管理
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私たち人間同様、シニア世代へと突入したワンコは、いろいろな病気に罹るリスクが高くなります。その中でも、発生率がすこぶる高い腫瘍。今回は、ワンコの腫瘍についてお話ししていきます。

腫瘍=“がん”!?

腫瘍と聞くと、つまりは“がん”?と捉えてしまう方は少なくないでしょう。腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍があり、“がん”は悪性腫瘍のことを指します。では、良性腫瘍と悪性腫瘍ではどんな違いがあるのでしょうか?

悪性腫瘍と良性腫瘍では、病理学的な違いがあります。簡単に分類すると、悪性腫瘍は命に関わる重篤な病気で、他の臓器に転移する可能性が高く、進行が早いという特徴があります。

一方、良性腫瘍は、通常は命に関わることはありませんが、稀に悪性腫瘍へと変化したり、大きくなってワンコのクオリティオブライフ(QOL)を阻害することがあるので、完全に楽観視することはできない病気です。良性腫瘍は、転移することはなく、進行は遅いという特徴があります。

ワンコにはどんな腫瘍ができる?


image by Marcus Wallis / unsplash

ワンコに発生する腫瘍は様々ですが、発生率の高い腫瘍には、どのような種類があるのでしょうか?

2012年から2013年にかけて日本全国の動物病院26軒を対象に行った調査によると、全初診症例19870件中、腫瘍症例は1902件でした(つまり、腫瘍発生率はおよそ9.6%といえます)。そして、全腫瘍症例中、悪性腫瘍“がん”は46.2%、良性腫瘍は53.8%でした。
 
悪性腫瘍では、以下の腫瘍が多くみられています。

・肥満細胞腫(発生率:15.5%)

肥満細胞腫は皮膚に発生することが一番多いのですが、内臓や筋肉に発生することもあります。皮膚にできた肥満細胞腫は、いろいろな外貌を示すため、外見から診断することはできません。治療は手術で腫瘍を取り除き、腫瘍の悪性度に合わせて放射線治療や抗がん剤治療を行います。

・リンパ腫(14.6%)

ワンコでは、複数のリンパ節が腫れる多中心型リンパ腫が最も多く(約80%)、腸や皮膚、胸の中にリンパ腫ができることもあります。主な治療法は抗がん剤治療になります。

・メラノーマ(悪性黒色腫)(7.7%)

ワンコのメラノーマの多くは、口腔内や足先に発生します。口腔内のメラノーマは、黒色やピンク色、足先のメラノーマは黒色を示すことがほとんどです。肺やリンパ節に転移する可能性がとても高いおそろしい病気です。治療は手術でメラノーマを除去したり、必要に応じて放射線治療を行います。

・悪性乳腺腫瘍(6.0%)

乳腺腫瘍には悪性と良性の場合があり、ワンコに発生する乳腺腫瘍のうち悪性腫瘍の確率は約50%といわれています。初回発情がくるまでに不妊手術を受けているワンコでは、乳腺腫瘍の発生率は低くなりますが、不妊手術を受けたワンコでも乳腺腫瘍は起こります。ワンコには左右5対の乳腺があります。乳腺腫瘍は、1つもしくは複数の乳腺付近に赤色や紫色などのしこりができる病気です。通常の治療は罹患した乳腺とその周囲を手術で除去しますが、腫瘍の悪性度がとても高い場合には、手術不適応になることもあります。必要に応じて、抗がん剤治療や放射線治療を行うこともあります。

また、良性腫瘍では、以下の腫瘍が多くみられています。

・良性乳腺腫瘍(19.7%)

乳腺腫瘍には悪性と良性がありますが、それを確実に判断するためには、切除した腫瘍の組織学的検査が必要になります。良性乳腺腫瘍は悪性化する可能性もあるため、良性乳腺腫瘍と推測されても、通常は手術で切除することがすすめられています。

・脂肪腫(14.8%)

脂肪腫は、胸部や腹部、わきの下などの皮下にできることが多い脂肪細胞の良性腫瘍です。腫瘍は軟らかく、大きさは様々です。小さい腫瘍では、通常、経過観察を行い、腫瘍が大きくなり、ワンコの動きや生活に支障を及ぼすようになった場合には、手術で腫瘍を摘出します。

腫瘍が罹りやすい犬種


image by Patrick Tomasso / unsplash

どんなワンコでも腫瘍に罹る可能性はありますが、これまでの研究によると、特定の犬種では腫瘍の発生率が若干もしくはかなり高いことが明らかにされています。

日本で腫瘍発生率が比較的高いといわれる犬種

  • ミニチュア・ダックスフント
  • ラブラドール・レトリバー
  • ゴールデン・レトリバー
  • ウエルシュ・コーギー
  • ミニチュア・シュナウザー
  • シー・ズー
  • トイプードル
  • パグ
  • チワワ

※ 注意:人気犬種は飼育頭数が多いため、必然的に腫瘍発生率が高くなる傾向があります

腫瘍の早期発見


image by nomao saeki / unsplash

人同様、ワンコの腫瘍も早期発見・早期治療することで、元気に長く生きることが可能になるかもしれません。では、どのように腫瘍を早期発見することができるのでしょうか?

ワンコにみられる腫瘍は体表に発生することが多いため、まず、日頃から体表をくまなくチェックしましょう。そして、しこりやふくらみを見つけたら、早急に動物病院で検査を受けましょう。

では、内臓などに発生する腫瘍に関しては?最近では、多くの腫瘍マーカーが確認されています。腫瘍マーカーで確定診断はできませんが、悪性腫瘍の早期発見には役立つと思われます。シニア世代に突入したら、定期的に検診を受けることをおすすめします。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Benign and Malignant Tumors in Dogs: Understanding the Difference
[2] 入江充洋, 来田千晶, & 石田卓夫. (2016). 国内 1 次診療動物病院 26 施設における犬と猫の腫瘍発生状況調査. 日本獣医師会雑誌, 69(8), 468-473.
[3] 島村麻子, 島村麻子, 新井敏郎 (2011) 日本獣医皮膚科学会学術大会・14th 号 Vol.1 402-403
[4] Melanoma in Dogs | The Veterinary Cancer Center
[5] Cancer in Dogs | The Veterinary Cancer Center
[6] Rates of Cancer by Dog Breed | EMBRACE Pet Insurance
[7] Types of Cancer | National Veterinary Cancer Registry

Featured image credit Sharon McCutcheon / unsplash

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