コアラのフンを追え!オーストラリアで野生動物の保護に奔走する元保護犬のマヤ

お仕事ワンコ
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野生動物の研究や保護領域において、”自然保護活動犬(Conservation Dogs)”と呼ばれる犬たちが活躍していることをご存知でしょうか。生物学者、生態学者、環境保護活動家などと共に、野生動物やその痕跡を追うなどして効率的な探索やデータ収集をサポートするのが、彼らの仕事です。

犬たちには、嗅覚によって対象物を探索・特定してハンドラーに知らせるだけでなく、野生動物や環境を脅かさない”能力”が必要です。このため、ハンドラーにも犬たちにも、十分に知識と訓練を積むことが求められます。

今日ご紹介するのは、ボーダーコリーのマヤ(Maya)。オーストラリアの大学で、野生のコアラを調査・研究するためのデータ収集業務に従事しています。彼女は12か月の訓練期間を経て、プロジェクトチームに加わることになりました。

世界で唯一の「コアラのフン探索犬」

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picture is by Marie Colibri

マヤが所属しているのは、サンシャイン・コースト大学(USC: University of the Sunshine coast)の研究チーム。ハンドラーであり研究者でもあるクリステスク博士(Dr Romane Cristescu)と共に、野生のコアラのフンの場所を特定するのが主なお仕事です。

生態調査において、フンは非常に重要な役割を果たしています。クリステク博士によれば、フンがあれば「動物の所在や食べているもの、さらには遺伝的特徴まで、多くのことを調べることができる」のだそう。例えばこの情報の宝庫から動物の生活圏を特定し、その地域における脅威や影響を調べたうえで保護施策の立案し実行する、なんてことにも繋げられるのです。

だからフンを見つけることはとっても重要。しかし、コアラのフンを見つけることは非常に難易度の高いお仕事です。なぜならコアラのフンはとても小さく、木の枝や葉っぱの下に容易に隠れてしまうため、視覚依存度の高い人間には見つけるのが困難なのだそうです。

そこで登場するのが、探索犬のマヤ。高い能力を持つ彼女は、人間が見落としてしまうような場所からもフンを特定できるそう。対人間比150%という高いパフォーマンスは博士も認めるところで、「人間だけなら、コアラ生息地の30%は見落としていたはず」と語っています。

元保護犬〜救われた犬が救う側に

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picture is by Marie Colibri

生まれながらの探索犬と言っても差し支えないようなマヤですが、もちろん初めから探索犬だったわけではありません。彼女には「その前の犬生」があり、残念ながらそれはあまり幸せなものではありませんでした。

マヤは飼育放棄され、オーストラリアの動物虐待防止協会(RSPCA:RSPCA Australia)に保護されていた、もしかしたら殺処分されていたかもしれない犬でした。飼育放棄された理由について、クリステク博士はマヤの、”ボールに対して偏執狂的ともいえる執着を示す”性質が災いしたのではないかと推測しています。

しかしこの「飼育放棄につながったのかもしれない強迫神経症的なところ」は、特定の目的物を探し出すという仕事にぴったりハマりました。実はマヤがスカウトされたのは、ボールに対してものすごく執着したからなのだとか。人生と同じく、犬生も「捨てる神あれば拾う神あり」なのかもしれません。

棄てられた理由が救われる理由となり、救われた犬が野生動物を救う仕事をする。なんとも皮肉な話ではありますが、そんなことでクサらないのが犬たちのいいところ!マヤは今日も元気にフンを探索しご褒美のボールをもらうのです。

求む!ペットには向かない”才能ある犬”

マヤの素晴らしい活躍を受け、クリステク博士らの”Detection Dogs for Conservation”では、新たな「フン探索犬」を発掘し訓練するプロジェクトを開始するそうです。

自然保護活動に従事する探索犬を育てるのは、時間も労力も、そして資金をも必要とします。そこで、彼らはクラウドファンディングを通じた資金調達を実施することにしました。探索犬を育てることが第一の目的ではありますが、一方でマヤのように「家庭犬には向かない少し偏執狂的な犬」を救い出すことも目的の一つになっているようです。

金銭的な寄付はこちらから。ただ、オーストラリアドルでの寄付ということで少しハードルが高いなと思う方は是非、FacebookやTwitter、Tumblerで拡散するという形でサポートしてください(〜2016/3/1 クラウドファンディングは4/1まで)。『犬たちに家とキャリアを(”Give a dog a home + a career!”)』というキャッチフレーズ、なかなか気が利いていますよね!

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「みなさんの支援が、大きな変化を生み出すのです」というメッセージに応え、どうぞみなさん日本から熱い声援をお送りください!

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Koala Detection Dog | Wild Helpers.com
[2] Help us train more Detection Dogs for Conservation! | Chuffed | Non-profit charity and social enterprise fundraising
[3] University recruiting new koala-poo-sniffing canines after program success – ABC News (Australian Broadcasting Corporation)
[4] World’s only koala poo detection dog scores a hat trick

All photos are by Marie Colibri (offered by Detection Dogs for Conservation / Shutterstock

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