白黒“ブチ”の犬〜斑点、ティッキング、ハルクイン

犬のカラダ
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白と黒、2色の毛色をあわせもつパターンは、黒がちな場合もあれば白が多い場合もあり、黒毛のブチの大きさや形もさまざまです。

白と黒のコンビネーションがどうやってつくられているのか、その遺伝背景から大きく3つのグループに分けることができます。①白斑を持つグループ、②白斑とティッキングを持つグループ、③グレート・デーンのハルクインです。

白斑を持つグループ

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白黒二種類の毛色を持つ犬は、広く、「バイカラー」と呼ばれます。このグループに属する犬は、白い斑点がどのくらい体の割合を占めているかで見え方が異なります。

白ブチの面積が一番小さいタイプはアイリッシュ・スポッティングと呼ばれるパターンです。マズルや首回り、胸や足先などに白斑があらわれます。黒&白のボーダー・コリーがまさにその代表選手です。黒が優勢のため、黒の斑点があるという感じではなく、一般的には黒い毛の中に白い部分があるという印象を持つと思います。ボストン・テリアのボストンカラー、グレート・デーンのマントルもこのタイプになります。

もう少し白ブチが大きくなってくると、白の地毛に黒いブチがあるように見えてきます。パイボールドやパイド、パーティカラーなどと呼ばれるパターンになります。乳牛のホルスタイン柄のような感じといえばピンとくるでしょうか。白&黒斑のブリタニー・スパニエルやイングリッシュ・コッカー・スパニエル、ランドシーアと呼ばれる毛色のニューファンドランドなどがこのタイプになります。

さらに白ブチが大きくなると、全身のほとんどが白毛で覆われるようになり、頭部や銅の一部にのみ黒い毛があらわれます。黒斑を持つ狆やパピヨン、ジャック・ラッセル・テリア、ボルゾイなどにみられるパターンです。白い部分が多いと「白地に黒いブチがある」と言いたくなりますが、遺伝的にはブチはあくまでも白で、「白ブチが大きな面積を占めている」と考えます。

白斑とティッキングを持つグループ

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白斑の部分に「ティッキング」といわれる小さな黒ブチが入るパターンがあります。イングリッシュ・ポインター、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルなど鳥猟犬種によくみられます。

ティッキングは、マズルや足先にあらわれることが多いのですが個体差があり、元となる白斑の大きさにティッキングの見え方は依存します。ラージ・ミュンスターレンダーのように胴体部分全体にティッキングの小さな斑点を持つような犬種も存在しています。イングリッシュ・セターのブルーベルトンと呼ばれる毛色もこのグループなのですが、毛足が長いため全体的にみるとあまり黒ブチの印象を持たないでしょう。ただし、毛の短い顔の部分には小さな斑点がよくみられます。

イングリッシュ・コッカー・スパニエルでは斑点の入らない白&黒の場合(パイボールド)もあれば、白斑部分に小さな黒ブチが入るティッキングパターンの白&黒の両方があります。

そして、このグループに入ってくるのが、ブチ犬の代名詞ともいえるダルメシアンです。ダルメシアンの水玉模様のような斑点はスポットと呼ばれ、ほかの犬種にはない独特なコートパターンを持つことで有名です。スポットは、白斑とティッキングの遺伝子にくわえ、ダルメシアンだけが持つ何らかの遺伝子変異により作られていると考えられています。頭部や胴体にスポットよりも大きな斑点がある場合がありますが、それらはスポットと区別してパッチと呼ばれます。

グレート・デーンのハルクイン


グレート・デーンのハルクイン image by Mary Swift / Shutterstock

黒ブチ最後はグレート・デーンだけが持つコートパターンの「ハルクイン」です。ダルメシアンの丸いスポットとは対照的で、紙を手でちぎったような不規則なギザギザとした斑点で、大きさもさまざまです。

ハルクインの毛色になるには、大理石模様のようなマールと呼ばれる毛色になる遺伝子変異を持つことが必要とされます。この変異に別の遺伝子変異が重なることで、ハルクインは作られます。マールになる遺伝子だけを持つ場合にはグレーの地色に黒ブチが入るのですが、そこにハルクインとなるタイプの遺伝子を持つことで、地色のグレー部分が白毛になり、黒の斑点が強調される形で残ると考えられているのです。

ブチ柄と健康問題


グレート・デーンのマール image by velora / Shutterstock

ハルクインというパターンは犬界で唯一無二のもの。しかし、いろいろな面で考えさせられる毛色でもあります。まず、ハルクインとなるためにはマール遺伝子を持つ必要がありますが、マールはグレート・デーンのスタンダードの毛色として認められていません。また、マール遺伝子を両親から受けつぐと、視覚や聴覚に異常をもって生まれる可能性がぐんと高まります。

ハルクインを作りだす遺伝子はさまざまな生物種に広く存在し、生命維持に欠かせない働きを持ちます。そのような遺伝子に変異が起これば正常な働きができなくなることがあり、そうなると当然のごとく健康面に影響が出てきやすくなります。実際にハルクインとなる遺伝子を両親から受けつぐと胎生致死となる、致死遺伝子であることも分かっています。それほどまでに、健康に生きていくためには正常な働きをすることが必要とされる遺伝子なのです。マール、ハルクインのいずれも健康に影響を及ぼす可能性の高い毛色のため、グレート・デーンは慎重に繁殖を行う必要のある犬種のひとつといえます。

このグループの中で健康に留意すべきとされる犬にダルメシアンがあります。尿酸を代謝できない唯一の犬種として知られるダルメシアンは、尿路結石ができやすかったり、関節に結晶が析出すると痛風になりやすいなどの健康リスクを抱えています。なぜダルメシアンが尿酸を代謝できなくなったのかは明らかにされていませんが、少なくとも水玉模様のようなスポットを持つように選択繁殖されてきたことと関係があるのではないかと推測されています。さらにダルメシアンは先天的な聴覚異常が多くみられる犬種でもあります。


見た目の美しさを優先した選択的繁殖により健康に問題を抱える犬が生まれた可能性があるということは、ぜひ覚えておいていただきたいです。ブチ柄は個体それぞれに違うことが大きな魅力といえるでしょう。しかし、そのような犬たちの中には健康面で苦悩を抱えている場合もあるのだということを頭の片隅に入れておいてくださいね。

さて、次回は、マールとベルトン、ローンのお話です。「え?それなあに?」と思った方、「もちろん知ってるよ」という方、どちらの方もぜひ読んでくださいね。

Featured image creditClaire Plumridge/ shutterstock

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