皆さんこんにちは！ 読書犬パグのぐりです。
雄で、今年で12歳。地上での生活は9歳で終えて、その時からこちら、天国に越してきて、WOOFOO天国出張所で働いているよ。犬が登場する本を紹介し始めてから数年経つんだけれど、探してみると、まだまだ読んでいない犬本がいっぱいあってびっくりしちゃう。それだけ人にとって犬が身近な存在であり、僕たちのことを好きでいてくれる証拠かなあって思います。
日本犬で警察犬
いろんなテーマの本がある中から、今日は柴犬初の警察犬になった「二葉」の物語をご紹介します。『「二葉」物語 はじめての柴犬警察犬』（文 秋山みつ子、写真 秋元良平 2012 メディアファクトリー）は、タイトル通り、日本で初めて柴犬警察犬となった二葉の物語です。
トリマーの専門学校に通っていた久戸瀬邦子さんは、卒業間近になって、自分のしたい仕事はトリマーではないような気がしていました。その時に出会ったのが訓練士の桧尾里美さん。桧尾さんは家庭犬のしつけ教室や、警察嘱託犬の訓練などを行っており、久戸瀬さんは桧尾さんの訓練所に通い始めます。当初、正式に弟子入りしたわけではなかったのですが、久戸瀬さんの熱心な姿勢に桧尾さんが折れ、見習い訓練士として受け入れられます。
そこでいろいろな犬と出会い、世話や訓練の経験を重ねた久戸瀬さんは7年後、独立。その後、ある友人から「柴犬が飼いたい」という相談を受けて、知り合いの元へ子犬を見に行きます。結果的にそこで出会ったのが、のちに警察犬となる二葉の母親犬「二歩」でした。
天真爛漫に育てて
二歩は5年後に子どもの「二葉」を出産します。その後、久戸瀬さんは警察嘱託犬の協会員が集まる勉強会などに出席しながら、岡山県警が警察嘱託犬に対して「地域捜索」作業を導入したことを知ります。そして時期を同じくして、救助犬訓練に参加し、生き生きと働く犬を目にした久戸瀬さんは、二葉も働く犬に、そう、地域捜索の嘱託犬に育てたいと考えます。
彼女がそれまでに嘱託犬として育てたのは、ジャーマン・シェパードのクロ。警察犬といえば、こうしたシェパードのような洋犬を思い浮かべる人が多いと思います。では和犬ではなれないのか？ そんなことはなさそう。でも、洋犬と和犬は性質が異なり、たとえば久戸瀬さんは以下のようにその違いを分析しています。
ゴールデンやラブラドール、シェパードといった洋犬は、怒られた直後はしゅんとなるが、すぐに立ち直り、ケロッとしてまた嬉しそうに寄ってくることが多い。
しかし、二歩は違った。「臨機応変」に学習できないのだ。（ｐ42）
二歩は、たとえばゴミ箱のにおいをかいで一度叱られると、次は何のにおいをかぐときでもコソコソとなる。つまり「においをかぐ＝叱られる」と学習してしまったのです。しつけを重ねるうちに、久戸瀬さんの顔色をうかがう機会が増えてしまった二歩を見て、このやり方はよくない、と思ったそう。そして二歩の娘である二葉には違ったアプローチをするようになります。他の犬や人に危害が及ぶようなケース以外はなるべく叱らないようにしたところ、二葉は天真爛漫な女の子に育っていきました。
人の役に立つことに喜びを感じて働く犬たちを見てきた久戸瀬さんは、二葉を地域捜索の警察嘱託犬に育てることに決め、訓練を開始します。そして試験を受け、何度目かで合格。僕が感動したのは、不合格になったときの試験中の久戸瀬さんの対応です。二葉の様子を見て、それ以上試験を続けたら、二葉のためにならない、と判断すれば不合格になってしまう可能性が高くてもいさぎよくそこでストップする。そういうことってなかなかできることではないと思うのね。でもすべて“犬ファースト”で考える久戸瀬さんには迷いがない。すごいなと思ったよ。
初出動はいかに!?
合格後しばらくして、最初の捜索依頼が舞い込みます。初出動の二葉は、行方不明の人を見つけることができたのでしょうか？ それは本書でご確認くださいね。
この本には、たくさんの写真も収められているのですが、その犬たちの表情がどれもとっても穏やか。そして時にうれしそう。みんな実に幸せそうなのです。特に久戸瀬さんに抱っこしてもらったり、彼女の顔に自分の顔を近づけている二歩や二葉は本当に明るい顔をしています。もともとが美しい顔立ちのワンコさんたちなんだと思うけれど、そこに、人に信頼されて、パートナーとして受け入れられているという自信と安心感が加わって、こういう表情になっているのではないかな、と本文を読んで思わされました。
秋山さんの文章は大人にも子どもにもわかりやすく書かれているのに、まったく物足りなさを感じません。さすがだなと思います。ぜひぜひ、読んでみてくださいね。
メディアファクトリー
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Featured image creditChibifish/ Flickr
