ビートたけしが笑わせ、泣かせる小説~『ゴンちゃん、またね。』

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皆さんこんにちは! 読書犬、パグのぐりです。地上での暮らしを終えて、昨年3月からこちら、WOOFOO天国出張所に勤務中です。

勤務といっても、大好きな本を読んで、たまにDVDで映画を観て、皆さんに紹介する仕事。仕事だけどすっごく楽しい~ 世の中には犬が出てくる本や映画がたくさんあるのです。読んでも読んでも、見ても見ても、尽きない。これには僕も驚いています。今月も面白い本を見つけたので、ご紹介しますね。

奇才ビートたけしの小説

ゴンちゃん、またね。

ある朝、新聞広告で目にしたのが『ゴンちゃん、またね。』(作・画ビートたけし 文芸春秋 2018年)です。表紙の犬の絵がなんとも印象的で。そしたら、著者が文も絵も描いているというではないですか。これは読んでみなければと、買ってきました。

ビートたけしさんといえば、タレント、映画監督と多才な方。ニュース番組にも出演し、持ち前の毒舌(?)を余すことなく使いながら、でも的を得たコメントをバシッと言う。とにかくすごい才能の持ち主、というのが僕の印象でした。

そこへきて小説です。この人は小説まで書いてしまうのか?! おまけに絵も。びっくりしながらページをめくると…

しがないライターの暮らし

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image by Toshihiro Gamo / Flickr

主人公の則之は一人っ子。両親が亡くなり、小さな一軒家に一人で住んでいます。大学卒業後は、「作家になる」と言って就職しなかったのですが、当時存命だった両親は特にとがめることもなく、一人息子のしたいようにさせていました。

ですが、世の中そんなに甘くありません。実際に小説は書いていましたが、両親が亡くなり自力で食べていくために、則之はライターの仕事も始めるようになりました。知り合いの編集者・田丸が担当している雑誌の、連載記事を書く仕事を主にしています。田丸が作っているのは、いわゆる一般大衆誌。病院の待合室などに置かれています。

則之は必ず取材の段階から田丸と現場に同行するので、会って挨拶し少し話しただけで相手の性格など大体解った。さっき言ったようにこんな本に出たがるのだから皆同じような奴ばかり。さんざん自慢話を聞かされてこちらの将来まで心配されて、一度相談に来いと言われたこともあった。(p13)

テープ起こしをして記事にまとめるのであれば、必ずしも取材に同行しなくてもよい、というケースもある中、則之は実際にいろいろな人に会えることを楽しみにしています。そういえば、地上での飼い主だったNさんは、なんかいろーんな仕事をしている人だったけれど、そのうちの一つが則之と同じ「ライター」でした。それでね、則之と同じで、「人に会って話を聞くのが好き」って言ってた。記事にまとめるのは大変だけどってね。

Nさん曰く、この小説を読んで、ライターのことをよくわかってるなーって思ったんだって。けっこうリアルって。でもね、そこで挙げられている取材対象者の肩書はものすごいです。ネタバレになってしまうのでここには詳しく書けないけれど。

それこそ、というかそこにこそ、ビートたけしさんの世界観が反映されている気がしました。どちらかというと、はちゃめちゃな感じの世界が。本書で確かめてみてくださいね。

ゴンちゃんは柴犬

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image by Toshihiro Gamo / Flickr

さて、ゴンちゃんです。ゴンちゃんは則之が取材で出会った日本犬保存会の人に譲ってもらった柴犬です。則之は自分が子どもの頃に飼っていた犬にいろいろなことをしてやれなかったことを悔やんでいて、その分ゴンちゃんを幸せにと、溺愛しています。

一人暮らしの則之。仕事柄家にこもりがちですが、ゴンちゃんがいることで生活リズムができ、散歩のために外に出て歩くこともできます。

散歩コースは決まっていて、その帰り道には二人(一人と一匹)で楽しい時間を過ごすのが定番です。いろんな意味でおいしい時間といいますか。

さて、溺愛していたゴンちゃんですが、ある日則之の前から姿を消します。必死で探す則之。でも、ゴンちゃんは見つかりません。茫然自失の則之でしたが、仕事をしながら探し続けていたゴンちゃんにひょんなことから再会します。でもある理由から再び一緒に暮らすことはできませんでした。このあたりからの話の展開は、前半のたけし節炸裂の雰囲気から一転して、何か暖かい、人間のぬくもりのようなものを感じさせる筆運びになっています。

後半はほろりとさせられること必須です。なぜ則之はまたゴンちゃんとの暮らしを始められなかったのでしょうか? それはぜひ本で確かめてみてください。一緒には暮らせませんでしたが、でもゴンちゃんの近くにいることはできるのです。

文章の合間あいまにはさまれる、たけしさんが描いた絵も素敵です。才能あふれる筆者の力が余すことなく発揮された作品、ぜひ読んでみてください。


ゴンちゃん、またね。
ゴンちゃん、またね。

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