黒ラブ・ハリーのドタバタ事件簿~『犬がいるから』

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皆さんこんにちは~。僕は読書犬パグのぐりです。今はWOOFOO天国出張所に勤務していてね、日々、本を探したり、読んだりして過ごしていますよ。

地上での飼い主だったNさんからは時々メッセージが届くんだけど、この前はこんなのがきたよ。「ぐり元気? 職場の梅の木に花が咲き始めたよ。やっぱり梅の花の香はいいねー」。地上はまだまだ寒いみたいだけれども、確実に春が近づいているんだね。植物はすごいなあ。こんな寒さの中でも、ちゃんと次の季節への準備をしているんだから。

黒ラブ大好きな翻訳家

犬(きみ)がいるから

さて今回は、黒ラブさんが主人公のエッセイ本を紹介しますね。『犬(きみ)がいるから』(村井理子著 亜紀書房 2018年)は、翻訳家でエッセイストの著者の家にやってきたハリーくんと家族の暮らしをつづった1冊です。

村井家は琵琶湖のほとりに住んでいる、夫婦と双子男児小学生の4人家族。そこにある日、生後3か月の黒ラブくんがやってきます。まるでぬいぐるみのように愛らしいこの子犬に、「ハリー」と名前をつけて、一緒に暮らし始めました。

子犬とはいっても大型犬。けっこうなパワーを秘めていて、ハリーはさまざまなものを破壊します。ウッドデッキをかじるなんて序の口で、ある時などは「息子の矯正用マウスピースを食べたのでは事件」まで勃発。なんとか大事に至らずに済んだのですが、とにかく犬と人との知恵比べで、危険なものはすべてハリーの届かないところに置いているはずなのに、多くの事件が起こったのでした。そのあたりは「ハリーの事件簿」として納められていますのでご一読ください。

ほかにも大型犬を飼うことの大変さがいろいろ伝わってくるんだけど、そんなドタバタの文章の後に、村井さんはこう書いています。

毎日のハリーとの生活の大変さから、色々と愚痴めいたものを書いた。でも、ひとつだけ言えるのは、ここまで手がかかっても、生活をがらりと変えられても、やはりハリーはかわいい。とんでもなくかわいい。んぐぁぁ、かわいいっ! 大きな顔でじっと見つめられると、すべてを許してしまう。(p51)

ここにもいらっしゃいました。犬バカさんが!「んぐぁぁ、かわいいっ!」のところにその重症度がよく表れているよね(笑)。でもきっと、犬を飼っている多くの方々が、村井さんと同じように思うのではないかなあ。共感度高い本だと思います。

大変だったエピソードはたくさん出てくるのですが、その中でも僕が一番印象的だったのは、「天使が浜に舞い降りた」のところです。普段通りの散歩途中、ある事件が起こり(とにかくハリーとの暮らしは事件だらけなのです)、リードがはずれてしまいます。おまけにそれが、湖の中に…。体は大きくてもまだ心は子どものハリーのリードがはずれたらどうなるか。そう、爆走です。

そこに登場したのが釣り人さん。釣り人めがけて爆走をスタートさせるハリーに、村井さんが飛びついて。いやーものすごい光景だったんだろうなあと。果たして、湖に放たれてしまったリードはどうなったのか? 村井さんとハリー、そして釣り人の運命は? さあ、ページをめくってご確認を(p72あたりです)。

家族との関係

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image by scott1346 / Flickr

こうして、物理的(?)なもろもろの大変さがあるのはある程度想像がつくのですが、もう一つ、犬を飼うと発生するのが心理的な問題です。村井さんの息子、小学生双子男児とハリーの関係は、それぞれの成長によって変化していきました。

子犬のころは自分たちよりも小さいし、可愛いしでじゃれあって遊んでいたけれど、そのうちにハリーのほうが大きく力強くなり、ある時から双子は少しハリーを怖がるようになります。そして距離を置くように。でもハリーはそんなことはわからないから、今まで通りにじゃれつこうとする。そんな攻防を繰り返しながら、だんだんと育ちあっていく様子が描かれています。

嘘がつけない。大人のように取り繕うことができない。それが子どもというものだし、それが犬というものだと私は思う。そんな正直な生き方を、少しうらやましくさえ思う時がある。(p94-95)

確かに、大人になると正直に生きるというのは難しい局面もいろいろ出てくるんだろうね。だからこそ、子どもや犬たちの生き方が、大人に与える影響っていうのも大きいんだろうなと思います。

3か月の入院生活

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image by Sharon McCutcheon / unsplash

さて、ドタバタしながらも村井家の毎日は進んでいくのですが、ある時思わぬ出来事が起こります。著者である理子さんが心臓病になり、入院、手術で家を3か月間あけることになったのです。お母さんがいなくなることで、夫や子どもの生活にも変化が出ますが、ハリーの暮らしもそうでした。特に今まで、日中家で仕事をすることが多い理子さんと一緒に暮らしていたハリーは、環境が一変してしまいます。

この難局を家族がどう乗り越えたのか。それはそれは大変だったろうと思います。理子さん自身、家族やハリーのことを思うと、病床で涙が出る状況でした。

それでもなんとかその3か月をそれぞれが過ごし、理子さんは退院。自宅に戻ります。そのときのハリーの反応は? そしてその後見せた、理子さんに対するハリーの行動にはグッときました。犬の気持ちがよく描写されていて、ちょっとほろりとしてしまったよ、僕。

「あとがき」にも、この病気の時のことが書かれています。ハリーを育て、家族の一員として世話をしていた理子さんが急に家からいなくなり、大きな手術をして家に戻ってきた。それからのハリーは、まるでセラピー犬のように、理子さんの気持ちに寄り添い、回復の助けになったのです。

ラブラドルレトリバーは、盲導犬になる子も多い犬種。きっと犬の中でも、より、人間の気持ちに寄り添い、力になることができる子たちなのかなと思わされました。

多発する大型犬事件にハラハラし、その時々の家族の対応にクスっとし、そしてお母さんの病気という難局を乗り越えていくストーリーに感動する。読み応えのある1冊。おすすめです!


犬(きみ)がいるから
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村井 理子
亜紀書房
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Featured image credit Sergio Rodriguez/ unsplash

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