【犬本紹介】『また、犬と暮らして。』~愛犬との別れと、新たな出会い

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皆さんこんにちは! 東京の読書犬ぐりです。

なんだか急に寒くなってきましたね~(ブルブル)。最近まで暖かかったから、急な寒さが身にしみます。気づけばもう年末もすぐそこ。僕の飼い主のNさんは「なんか、1年の後半って、前半より過ぎるのが早い気がする。どう?」って聞いてきたけど、うーん、僕にはちょっとわかんないや(笑)。人間はみんな忙しそうだよね。空気も乾燥してきたし、皆さん風邪には気を付けてくださいね。

あの、富士丸の飼い主さんが書いた本

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さて、今日ご紹介するのは『また、犬と暮らして。』(穴澤賢著 世界文化社 2016年)です。著者の穴澤さんは、あの有名犬、富士丸の飼い主だった方。富士丸はコリーとハスキーのミックス犬で、里親サイトがきっかけで穴澤さんと出会い、7年半を共に暮らした犬でした。著者のブログ「富士丸な日々」でおなじみの方も多いのでは?

富士丸は大きくて、当時一人暮らしをしていた穴澤さんにとっては、もう一人の人と一緒に暮らしているくらいの存在感のある犬だったんだけど、ある日突然、虹の橋を渡ってしまいます。

『また、犬と暮らして。』はその後の穴澤家のことが書かれた本。突然の富士丸とのお別れは、穴澤さんを奈落の底以上の深い沼に突き落とします。

情けない話だが、愛犬との別れによって、私は一度壊れてしまった。(本書p.10)

とご本人も書いているくらい。それこそ、何もできない、何も食べられないような状態になったのです。でも徐々にまた、普段の生活を始めます。そして2年後。穴澤さんは大吉と出会います。

犬との暮らしを再びはじめる

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タヌ吉こと福助さん(左)と、若干ビビりの大吉さん(右) © 穴澤賢

大吉もミックス犬。白くてふわっふわの、美しい犬(だと僕は思ったよ)。この本の49ページからの「大吉の成長アルバム」と名付けられた写真は、もうとろけるくらいに可愛い。そして、りりしく成長していく大吉を知ることができます。大吉と暮らしながら、「そうそう、犬ってこうだった」という感覚を持ち直したという著者。餌をあげたり、散歩をしたり、そうした犬との暮らしの感覚が心地よかったのだと思います。

もちろん富士丸も自分の中には存在しているけれど、どの犬もそれぞれに個性があって、大事な犬であること。ペットロス(であったのだろう)状態からの犬を迎えるまでどのように過ごしたか、心境の変化が具体的に書かれているのも貴重だと思います。なぜなら、犬と暮らしたことが書かれた本って、わりと1匹の犬の一生が描かれて終わることが多いから。「その後」の情報は貴重だと思うんです。

大吉は小さいころからわりと物わかりのいい犬で、そういうこともあってか著者はなんとなく2頭目を迎えるのもいいなと思い始めます。その頃に出会ったのが福助。薄茶色のこちらもふわふわのミックス犬です。奥さんと、次に迎えるとしたらどんな犬かね、という話をしていた穴澤さん。

それなのにこんなに早く2頭目を迎えたのは、直感的に可愛いと思う犬と出会ってしまったから、という部分が大きい。それも単純な可愛いという感覚ではなく、こいつと一緒に暮らしたら楽しそうだというニュアンスを含んだものだった。(p.57)

という直感に導かれての福助の家族入りだったそうです。福助は、大吉とはまた違った個性の持ち主。僕が本を読んで感じたのは、天真爛漫ってこと。ソファの破壊行為の描写にはびっくりしたけど。

大吉はちょっとやんちゃな弟に、てこずることもあるけれど、広い心で迎え入れました。もちろん多頭飼いをするにあたって、著者は先住犬である大吉を最大限に尊重し、餌やおやつは必ず大吉から、というルールを実行していたということもあるかもしれないけれど、本を読むと、大吉の性格によるところも大きいような気がしました。

「大福コンビ」に癒されて

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なんだかんだいって、なかよし © 穴澤賢

2匹の関係は、表紙の写真を見てもらうと一目瞭然です。優しいまなざしで福助を見ている大吉。そして、そんな大吉に甘えた視線を送る福助。「大福コンビ」の仲の良さをよく表しています。

この2頭のいる日常生活が、そう、本当に「日常」が描かれているのがこの本なのですが、そこには著者の次のような思いが込められているのだと思います。「何気ない日常の中に」(p.122)という章に、富士丸が亡くなった後、ある取材で記者から一番の思い出を問われたとき、穴澤さんはこう答えたそうです。

「いつもの、ふだんの生活の中で、夜にビールを飲んだりしている隣に、富士丸がゴロゴロしていたことですかね」(p.123)

旅行にも行った。遊びにも行った。自然が大好きだった富士丸と一緒にいろんな場所に行ったし、富士丸もとっても喜んでいた。そういう思い出ももちろんあるけれど、一番の、と問われたら、このシーンが浮かんだというのです。

犬と暮らす、ということは、こういう何気ない日常を重ねていくことなのかもしれないね。それは僕たち犬が、飼い主さんと暮らすときも同じように感じていることだよ。

日常を、丁寧に重ねていきたいって思わせてくれる一冊。オススメです!


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みなさんこんにちは~ 東京在住の読書犬、パグのぐりです。今月は、面白そうな本にたくさん出合えて、幸せです。なんで読書ってこんなに楽しいんだろうなぁ? きっと自宅にいながらにして、いろんな世界に瞬時にワープできるからだろうな~。

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