それでも僕は生きていく~『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』

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皆さんこんにちは! 寒い日が続いていますね~。

11月から12月上旬にかけては「今年は暖冬ってほんとだな」と思うくらいあったかい日も多かったけれど、その後の気温の急降下がすごかった…地上で飼い主だったNさんは1年ぶりくらいに風邪をひいたそうで、「温度差についていけない」と言っていました。皆さんもお気を付けくださいね。

ちょっとめずらしい?スウェーデン映画

マイライフ・アズ・ア・ドッグ [HDマスター] [DVD]

今日ご紹介するのは、DVDです。年初はこたつに入ってゆっくりDVD鑑賞!なんて人も多いのかな。そういう方々にぴったりの作品を見つけましたよ。『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(1985年 スウェーデン 監督:ラッセ・ハルストレム 出演:アントン・グランセリウス メリンダ・キンナマン他)です。

ちょっと珍しいなと思ったのは、この作品がスウェーデン映画ってこと。北欧を舞台にした映画を観たのは、『かもめ食堂』以来だったかな。

主人公のイングマルはまだ少年。兄と母と3人で暮らしています。元写真家の母は、以前は撮影の仕事をしていたようですが、今は体の具合があまりよくなく、ベッドに伏せていることが多い毎日。

母親の具合が悪くなる原因のひとつが、兄弟喧嘩に始まる日々のアクシデントです。たとえば、イングマルが朝食時に牛乳をこぼす。気持ちに余裕があればなんてことないのですが、余裕がないとこんなこと一つでも母親は怒りが爆発してしまう。3人はそんな日常を送っていました。ちなみに父親は一緒に住んでいません。遠い国でバナナを買い付ける仕事をしているって。ほんとかな?

遠い村へ預けられて

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Laika_(Soviet_dog) / wikipedia

父親の兄、つまり兄弟の伯父にあたる人が、彼らの母親が元気になるように、兄弟を親戚に預けることにしました。兄と弟は別々のところへ。イングマルは母親の弟夫婦のもとに送られます。

イングマルはシッカンという犬を飼っていました。最高のパートナーで、つらいことがあっても、シッカンに話かけ、聴いてもらってずいぶん助けられていました。が、親戚のもとへ、犬まではつれていけません。病院に預けることになったのです。つらかっただろうな。この時のイングマルの不安気な表情は忘れられません。イングマルは最愛の母親と、大好きなシッカンと、同時に別れなければならなかったのですから。

そんなつらい経験をしながらも、イングマルはある空想をしていました。「自分はあの〇〇よりはまだましだ」と自分に言い聞かせるのです。その中に頻繁に出てくるのも、また犬でした。ライカ犬です。宇宙空間へ、人間の実験のためだけに打ち上げられ、最後には餓死してしまった犬。その犬の状況と比べたら、自分のおかれているこの現実はまだましなんだと、彼は自分に何度も言い聞かせるのです。

田舎に住む叔父夫婦のもとに送られたイングマルは、そこで新しい友だちを得ながら暮らします。たくさんの子どもたちと、だんだんに打ち解けていく。きっかけの一つはボクシングでした。そこでなぜか男の子の振りをしている女の子・サガと出会います。彼(彼女?)がイングマルにボクシングのコツを教えてくれるのです。

この田舎での日常は淡々としていて、何か大きなことが起こるわけではありません。ですが、イングマルをはじめとした、登場人物のちょっとした表情が丁寧にカメラにとらえられ、美しい背景の自然と一緒に、なんとなく見ている側にじわじわと浸透してくる感じがするのね。大きなことは起こらないといっても、イングマルを囲む村人たちはみんな個性的。ずっと屋根修理をしているおじいさんや、叔父夫妻と同じ家に住んでいる老夫婦。叔父の勤め先のガラス工場の面々。登場時間は少ないのに、なぜか強烈な印象をくれる人たちばかりです。

さて、時は過ぎ、イングマルは一度自宅に戻ってきます。なんだけれども、シッカンにはなかなか会わせてもらえません。その先はどうなった? 本編でご確認を。

自分では選べない状況の中で

子どもというのは、大人と違い、自分の意思ではコントロールできないことがたくさん起こります。まず、生まれてくる国や家庭は選べない。イングマルだってその兄だって、お父さんがいない家に生まれたいと思って生まれたわけではありません。病気になってしまうお母さんのもとを選んできたわけでもない。だけど二人とも、そこで生きていかなくてはならないのです。

大好きな犬と離ればなれにされてしまっても、自分でそれはどうすることもできない。無力感にさいなまされるようでもありますが、この映画では、イングマルが預けられた先の親戚や、叔父の同僚たち、村の子どもたちが近くに遠くにイングマルを見守り、仲間として受け入れていく様子が描かれています。そこに何か救いのようなものを感じるのは僕だけじゃないと思うな。

劇的な事件が起こるわけでもなく、特撮があるわけでもない。ぱっと見は地味な映画かもしれませんが、見た後に何かじんわりとあったかいものが胸に押し寄せる作品でした。ちなみに監督のラッセ・ハルストレムは、この作品の後に、あの、『ギルバート・グレイプ』や『HACHI 約束の犬』を生み出した方ですよ。ぜひご覧くださいね!


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