雑種からアフガンまでみんな好き!~『ぽち』

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皆さんこんにちは! お元気ですか? 

年明けはインフルエンザが猛威をふるったようで、WOOFOO天国出張所勤務の僕の耳にも、地上の大変な状況が入ってきましたよ。

地上での飼い主だったNさん一家は、夫婦と小学生女子2人の4人暮らし。一応昨年中にみんな予防接種はしたらしい。でも昨シーズンは、予防接種をしても1,2月に次々とみんながインフルエンザに感染したから、今年は例年にも増して予防を徹底する、とNさん鼻息あらかった(笑)。なんでも、冷水摩擦、うがい手洗い、朝イチの歯ブラシ、なぜか毎日テレビ体操(登場する人が「毎日の運動は免疫力を高めます!」と言っていたから)をしているとか。その努力が実ったのか、今のことろ誰もかかっていないそうです。

煙草屋さんの犬と友だちに

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image by Chonlawut / Shutterstock

さてさて、今回ご紹介するのは関西発の楽しいエッセイ『ぽち』(島村洋子著 実業之日本社 1993年)です。作者の島村さんは大阪出身。小さいころから身近に犬がいて、ずっと犬が好きで、22歳からは自分の犬を飼い始めました。

どのくらい小さいころから犬と触れ合っていたかというと…
作者4歳の時。近所の煙草屋さんの犬と友だちになりました。

ぽちが私の顔をなめてくれると、幸福な気持ちになった。そのうちなめられるばかりでは申し訳ない気がして、それこそ申し訳なくて私もお返しにぽちの顔をなめた。同じ回数だけ、なめた。ちゃんと数は数えられた。二十まで。(p17)

この後、その現場を見た大人にこっぴどく叱られるのですが、彼女は犬と自分がどれだけ違うのか、当時はよくわからなかったそうです。

確かに子どもって、動物とも分け隔てなく接するよね。自分は人間、犬は動物、なんて思っていなくて、そこには「ともだち」っていうくくりしかないのかもしれません。きっとぽちも、そんな洋子ちゃんを友だちと思って接していたのではないかな。

美しく、大きな犬を

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image by Grisha Bruev / Flickr

さて、そんな作者は、22歳のときに初めて自分の犬を飼いました。種類はアフガン・ハウンド。そう、あのアフガニスタン原産の優雅な容姿をした大型犬です。美しく、大きな犬を飼いたいと思った作者。そして一緒に暮らし始めた“メスの”アフガンに「凡平(ぼんぺい)」という名前を付けました。子犬のころはそんなに可愛くなかったけれど、「醜いアヒルの子」を思い浮かべながら成長を見守ると、たいへんに美しい成犬になりました。

しかし、幸せな日々は、ある病気によって打ち砕かれます。凡平は入院と治療を余儀なくされました。治療のために美しかった毛は刈られ、ただでさえ細かった体はもっとやせてしまう。美しい犬を飼いたいと、アフガンを飼い始めた著者は反省します。

生きているならどんなにぼろぼろになっても、それが凡平である限り愛します(p34)

と天に誓ったのです。その思いが通じたのか、凡平は回復・退院します。普通のアフガンほど毛も伸びず、毛量もなくなりましたが、生きているだけでいいの、と著者。そうですよね、命あるものは、生きているだけで尊い。病気になると本当にそれを感じるのかもしれません。

著者自身の飼い犬とのエピソードはもちろん多いのですが、先ほどの冒頭の煙草屋の犬のように、島村さんが育っていく過程で出会った犬とのエピソードにも印象深いものがありました。

たとえば「紅ちゃん」。紅ちゃんは大きな白い秋田犬で著者の親戚の家で飼われていました。そしてこの紅ちゃんは、島村さんのことを本当に好いていました。どんなに好きかというと

のしかかっただけでは気が済まず、ぺろぺろなめまくって、それでも気が済まず、私のあごを自分の口の中にぱくっといれてしまったりした。(p60)

こ、これはすごい。秋田犬にのしかかられている女子高生を見たら、だれでも度肝を抜くと思うけれど、著者は犬が大好きだからちっとも怖くなかったそう。

その紅ちゃんは、著者が大学生になったころ、癌になってしまい、片手を切断するのです。島村さんは片手を失った紅ちゃんに会う自信がありませんでした。そうこうしているうちに紅ちゃんは死んでしまいます。そして死後に島村さんは知るのです。どれだけ紅ちゃんが、自分だけを好いてくれていたかを。切ないエピソードです。人でも動物でも、やっぱり生きている間を大事にしなければ、と思わされました。

国際色豊かな内容も

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image by Diego Passadori / unsplash

アフガンに続き、著者が飼ったのはメスのゴールデンレトリバー「こがね丸」。やっぱり大型犬。なぜレトリバーを飼うことにしたかというと、きっかけはイギリスでの出来事でした。

こがね丸は子どもも生み、その子どもたちは著者の知り合いのもとへ巣立っていきましたが、みんな母親に似て、元気で明るいと喜ばれていて、著者は「何も言うことがない」ほどうれしいそうです。孫が褒められている感じなのかな?

イギリスで出会ったレトリバーにほれ込んで、というエピソードがありましたが、この本の中には「犬に学ぶ国民性」という章もあります。いろいろな国とその国原産の犬のことが書かれているのですが、なるほど、そうかも、と思わせられることがたくさん書いてあって面白いです。ドイツ、イギリス、アフガニスタン、ユーゴスラビア、日本。自分が好きになった犬がもともとはどの国で生まれた犬種なのか、を知るのも楽しいのだな、と思いました。

とにかくいろんな方向から犬を語っているエッセイ集。どこかに関西のノリが織り込まれていて、テンポよく読めるのでおすすめです!


ぽち
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