犬の愛し方は人それぞれ~『作家の犬』

本・映画・テレビ
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皆さんこんにちは。読書犬・パグのぐりです。

昨年の3月、とある事情でこちら、天国へ来てからも、犬の本をたーくさん読みながら元気に暮らしています。3月になると、少し暖かい日が増えてくるのかな。寒いさむい冬のうちに、植物は静かに、でも確実に春への準備を始めているはず。4月が待ち遠しいですね!

犬本がたくさんある理由

作家の犬 (コロナ・ブックス)

さてさて、今月は、Nさんが本屋で見つけて、表紙の柴犬にくぎ付けになり思わず手にしたという本をご紹介します。『作家の犬』(平凡社 コロナブックス 2007年)は、そのタイトル通り、往年の作家や映画監督、翻訳家などが愛した犬たちを紹介しています。作家と愛犬の写真がふんだんに使われ、その人に由来のある人物が文章を書いています。表紙の凛々しい柴犬さんは中野孝次さんの愛犬ハラスです。

僕ね、この連載をさせていただくようになってから、そろそろ3年が過ぎると思うんだけど、原稿を書きながら思うことがあるの。どうしてこんなに犬が登場する本ってたくさんあるのだろうって。思いませんか?毎月3冊(時にはDVDも入るけれど)、選びに選んで紹介し続けても、まだまだあるんです。犬が出てくる本が。でも、この『作家の犬』を読んで合点がいきました。だって、こんなに犬を愛する作家が多ければ、それは犬が登場する本も多かろうと。

あの「世界のクロサワ」も愛犬家

2011 3 thewoof

image by Niq Scott / Flickr

志賀直哉、菊池寛、林芙美子、井上靖、檀一雄、黒澤明…。この本に登場する巨匠たちは、日本人であれば誰もが名前を知っているような著名人ばかりです。でも僕、「え!この作家さん、犬好きだったんだ」と初めて知ったことも多くありました。

中でも一番印象的だったのが、映画監督の黒澤明。そう、あの「世界のクロサワ」と呼ばれた名監督です。実は僕、黒沢監督ってサングラスをかけた有名な写真しか見たことがなかったのね。だからこの本の中で、眼鏡をせずに、大きなおおきなセントバーナードの隣で微笑んでいる人が黒澤監督だって、最初はちょっと信じられなかったの。

黒沢監督は昔、アルプスの僧院で飼われているセントバーナードのドキュメンタリーを見て、この大きな犬に魅了されたようで、念願かなって飼うようになってからは、愛犬レオに会うために、撮影から直帰したほどだったそう。どれだけレオのことが好きだったか、長女の和子さんはこう書かれています。

自分の映画が賞を貰っても、さほど興奮もせず、トロフィーは物置の中という人なのだが、ことレオのことになれば興奮収まらずで自慢話に夢中である。(中略)自分が受賞した時のトロフィーを手にした記念写真などはほとんどないが、レオのトロフィーを並べ満面の笑みの記念写真は有るのだから笑ってしまう。(p67)

ほほえましいよね。その貴重な写真が、この本の中で見られます。

犬の愛し方は人それぞれ

2011 2 thewoof

image by MARIO CANNATA / unsplash

もう一人、壇一雄の章も印象的でした。文章は長女のふみさんが書かれています。壇氏は作家の坂口安吾のすすめで、秋田犬を飼ったことで有名ですが、秋田犬だけではなく、壇家には常に犬がいたそうです。ただ、その飼い方はちょっと変わっていました。

犬を連れて帰って子供たちを狂喜させ、水をやったり、エサをやったり、寝かしつけたり……、四、五日ほどねんごろな世話をして、犬が我が家に落ち着き子供たちと犬の関係も悪くなさそうだと見ると、ふらりとどこかへいなくなってしまう。 その繰り返しだったのではないだろうか。(p60)

溺愛するというよりは、犬がいることが普通、といったかんじだったのでしょうか。そう、犬への愛情も人それぞれ。この本はそれがよく伝わるつくりになっていると思います。登場する人たちのプロフィールには、犬について書かれた代表作の記述も。ちょっとした犬本ガイドとしても楽しめる本。ぜひ手に取ってみてくださいね。


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Featured image credit Jae Lee / unsplash

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