黒い犬は見た目で損をしているのか〜”ブラックドッグ・シンドローム”という犬差別

動物愛護・保護
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欧米では”黒い犬”は敬遠される傾向があるそうで、これがまた大型犬だったりすると、保護団体などは引き取り手を見つけるのに苦労することすらあるそうです。その現象には名前までついていて、「ビッグ・ブラックドッグ・シンドローム(BBD)」と呼ばれています。

PetFinderによれば、多くのペット動物が同サイトに掲載される期間(引き取られるまでの期間)は12.5週間。一方、黒い毛、シニア、病気などの引き取り手が見つかりにくい動物たちは、この4倍以上の期間がかかるのだそうです。黒い毛だというだけで!?と、ちょっと驚きです。

黒い犬は悪魔の使い?民俗学における悪魔の犬

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悪魔の使いやあらへんで image by Mila Atkovska / Shutterstock

黒い犬が避けられるという、よろしくない現象はなぜ起こるのでしょうか。

民話などにおける黒い犬の取り上げられ方に、要因のひとつがありそうです[1]。古代エジプト、ギリシア、ローマ、北欧などでは、黒い犬は死や超自然的なものと結びつけて考えられていました。そこから黒い犬は悪魔の使いであるとか、黒い猟犬がこの世界と死後の世界の境界にいるなどの想像が広がっていったようです。

映画やテレビ、小説などの影響もあります。少なくない創作物の中で、黒い犬は残忍で攻撃的、大きな身体で瞳は燃えるように赤く光るといった描かれ方をしています。「魔女の猫」として描かれる黒猫のイメージも悪さをしているのかもしれません。私もそうしたイメージにとりつかれた人間の一人で、もし犬を連れた悪魔の絵を描かなければならないときが来たら、白いポメラニアンではなく、真っ黒なドーベルマンっぽい犬を描くだろうなぁと思います。黒いワンニャン、ごめん。

黒い毛=攻撃的などという科学的根拠は何もなく、そうであれば人間が固定観念(ステレオタイプ)から差別をしているということになりますよね。

科学的根拠やいかに?

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みんな同じラブラドール image by Rosa Jay / Shutterstock

それでは、人間はどの程度「黒い犬」にネガティブな印象をもつのでしょうか。印象に関する研究はこれまでにも複数行われているようですが[2]、ここでは心理学者であり犬に関する著書を多数持つ著述家でもあるスタンレー・コレン博士(Stanley Coren)が行った調査[3]に注目してみます。

調査は、「毛の色によって犬に対する気持ちは異なるか」を確認する目的で、コレン博士が所属するブリティッシュコロンビア大学で実施されました。調査協力者(大学職員および学生の合計60人)に写真を見せ、その印象を回答してもらう内容です。

準備された写真は、ラブラドール・レトリバー(黒、茶、クリーム)の顔および立ち姿の6枚。背景を同じ色に設定し、なるべく同様のポーズを取っているもので、口を閉じているものを選択したそうです。この6枚を他の12種類の写真(ビーグル、コリー、ダルメシアン、イングリッシュ・コッカースパニエル、オーストラリアン・キャトル・ドッグ、コーギー)と混ぜてひとセットにし、協力者に提示。こののち、「見た目が好きか」「フレンドリーか」「ペットに適しているか」「攻撃的か」という4つの質問に1-7のあいだで評定してもらう(数字が大きくなると「そう思う」度合いが強くなる)というのが調査の概要です。

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courtesy of Are Black Dogs Less Lovable? | Psychology Today

結果は上の表のとおり。黒い犬は悪い印象を持たれること、攻撃的という印象を持つ度合いは強いことが
わかります。また逆に、すべての項目でクリームが好まれていることもわかります。残念ながら毛の色が暗くなっていくにつれ、あまり良くない印象が強くなることが証明されてしまいました。

ステレオタイプなんかに負けないで

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リボンつけて可愛くしてみた♡ image by DragoNika / Shutterstock

毛の色だけで差別されてしまう犬がいるというのは、すごく寂しい話ですよね。そう考える人は少なくないようで、「ブラックドッグ・シンドロームに立ち向かおう」という提言があちこちから聞こえてきます。身近なところでいえば、黒い犬のラブリーな写真を撮って投稿するしよう!なんていう呼びかけもあります。明るい色の背景を使ったり、美しい自然光の中で写真を撮ったほうがいいよ!とか、綺麗なバンダナを巻いてあげると引き立つよ、というアドバイスもありました。また、「高等教育が黒い犬を救う」なんていう声もあって、犬たちに高度なトレーニングを受けさせるという方法も提言されています。

差別の根拠が印象なら、別の印象を植え付けて対抗せよ。そんな声が聞こえてきそう。

黒い犬でも白い犬でも、年をとっていても犬種がなんでも、どんなコだって可愛いワンコ。先入観をもってしまうことは避けられないかもしれませんが、根拠なき差別が広まらないようには注意したいものですよね。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] At the Edge archive: Black dogs folklore

[2] Black dog syndrome – Wikipedia, the free encyclopedia
[3] Are Black Dogs Less Lovable? | Psychology Today
[4] Black Dogs Face a Hard Choice at Shelter

image by Juice Team / Shutterstock

これは犬差別?〜ある高級マンションで飼育不許可犬種をあぶり出す規約が定められたというお話(米国) | the WOOF

アッパーウェストサイドの高級マンションの管理組合が行ったDNAテストが、「犬差別」ではないかと物議を醸しているようです。 米オンラインメディアDNAinfoが今年6月に報じたニュースです。 ミックス犬なら血統パーセンテージを示さなければならない…

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