外出から家に戻ると、まさに狂喜乱舞とも言える大歓迎をしてくれるワンコたち。ほんの数分のお出かけでも、その喜びの勢いは止まりません。
ピョンピョン飛び跳ね走り回ったり、体にじゃれつき舐めまくる愛する我が子。一体何が、彼らを舞踊らせるのでしょうか。
野生の名残〜舐めてご挨拶
犬の祖先候補ははっきりとはしていませんが、狼であるという説が現在のところ有力です。犬と狼は、1万から1万5千年前に分化したと言われており、多くの共通点を持っています。
『犬の気持ちを科学する』の筆者である神経科学者、グレゴリー・バーンズ博士(Gregory Berns, M.D./Ph.D.)、狼と犬には似た行動が見られるといいます。狼にとってお互いの顔を舐めあうのは挨拶行動であり、社会儀礼であるそうです。ある行動観察において、顔見知りの狼を数日間引き離してその後に再会させる状況を設定したとき、下位の狼は上位の狼に身体を低くしたり相手の顔を舐めるという挨拶行動を行いました[1]。犬たちはこのコミュニケーション方法を踏襲し、再会した人間についても顔などを舐めて”ご挨拶”しているのかもしれません。
何をしてきたのか知りたい〜舐めて嗅いで大調査
狼がお互いを舐めあうのは、挨拶のためだけではありません。お互いがどんな食べ物を巣に持ち帰ったか確かめる方法でもあるのです。そしてもちろん、私たちの顔を舐め、匂いを嗅ぐことにより、私たちがどこにいたのか、何をしてきたのかを知ることになるのです。美味しい匂いや他の犬のニオイは、彼らの好奇心に火をつけるようですね。
寂しい〜「いない」から「いる」へ
前述のバーンズ博士は「抽象的概念を持つ人間とは異なり、犬はこれを持たない」ことを指摘しています。すなわち、犬にとっては飼い主が「一緒にいる」「一緒にいない」の2つの事実しかなく、その間はないのです。一緒にいれば幸せ、いなければ寂しいということです。ドアを開けたら飼い主さんと一緒に幸せがやってくるのです。狂喜乱舞するのも致し方ありませんよね。
人間が好き〜愛するあなたが戻ってきた!
そして、犬たちがあなたのこと、そして人間を愛しているというのも大きな理由です。
神経学者のバーンズ博士はfMRIを利用して、犬の顔、人間の顔、その他の物体の画像が表示された時に犬の脳がどう反応するのかを調査しました。この結果、人間の顔を見た時に報酬分野とは異なる領域が活性化することがわかりました。また、バーンズ博士が参加したその後の調査では、親しい人間の匂いに対して強く(ポジティブな)反応をすることもわかっています[2]。他の物質の匂いや、他の犬の匂いを嗅がせた時と比較した時でも、親しい人間の匂いに対する反応が強いという結果になったそう。バーンズ博士は「この研究で分かったことは、犬が私たちの近くにいるのは、食べ物のためではなく人間が好きだということ。ただ人間のそばにいることが好きなのです」と述べています[1]。
また、飼い主との再会は”幸せホルモン”と呼ばれるオキシトシンレベルに正の効果をもたらすことが研究により明らかになっています[3]。研究によれば、このオキシトシンレベルの上昇がさらなる接触行動を誘導するということで、物理的に接触するとオキシトシンは持続するしコルチゾール(ストレスや低血糖に反応して分泌される)レベルを下げることができるのだそうです。
犬が感じる幸せは人間の感情と似ているというのは、複数の専門家が主張するところです。飼い主の留守中と帰宅後の犬の行動は、母親不在時の子供の反応とよく似ているという専門家もいます。
不安や好奇心、そして愛情など、多くの感情が入り乱れる犬の歓迎のご挨拶。喜んでくれるのは嬉しいですが、飛んだり跳ねたり過剰に舐めたりすることは、健康問題や問題行動につながりがちです。歓迎の儀式が盛大になりすぎる前に、別の穏やかな歓迎方法を教えてあげることをオススメします。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Why Are Dogs So Insanely Happy to See Us When We Get Home? | io9
[2] Study reveals scientific reason your dog is happy to see you | abc7.com
[3] Rehn, T., Handlin, L., Uvnäs-Moberg, K., & Keeling, L. J. (2014). Dogs’ endocrine and behavioural responses at reunion are affected by how the human initiates contact. Physiology & behavior, 124, 45-53.
Featured image credit Y Nakanishi / Flickr
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